2018年11月25日日曜日

辻源兵衛の通算記録


 辻源兵衛の通算記録はネット上では「83打数」となっています。

 一方、「日本プロ野球記録大全集」では「82打数」となっており、当ブログがスコアカードから手作業で集計した記録でも「82打数」となっていますので、「82打数」が正解であると考えられます。

 辻源兵衛の通算記録は20安打、18四球なので、通算打率は2割4分4厘、通算出塁率は3割8分となります。ネット上では通算打率が2割4分1厘、通算出塁率が3割7分6厘とされているようですが、多分間違いでしょうね。NPBの公式記録が間違っていることに起因しているのでしょう。よくある話です(笑)。

 

19年 阪神vs朝日 5回戦


7月10日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 4 1 5 阪神 15勝3敗2分 0.833 辻源兵衛 若林忠志
2 0 0 0 1 0 0 0 0 3 朝日   6勝13敗1分 0.316 内藤幸三

勝利投手 若林忠志 12勝2敗
敗戦投手 内藤幸三   5勝6敗

二塁打 (神)武智、呉昌征 (朝)内藤

勝利打点 武智修 2


武智修が決勝二塁打

 阪神は初回、二死後御園生崇男が四球を選ぶと二盗に成功、藤村冨美男も四球を選んで二死一二塁、ここで御園生が三盗を決め、続いて藤村も二盗に成功。これは重盗ではない。後ほど解説しましょう。ということで二死二三塁、本堂保次は左飛に倒れて無得点。

 朝日は1回裏、先頭の酒沢政夫がストレートの四球で出塁、田中豊一は三塁へのヒットで無死一二塁、坪内道則の送りバントをピッチャー辻源兵衛が三塁に送球して酒沢は三封、金光彬夫が四球を選んで一死満塁、菊矢吉男が中前にタイムリーを放って1点を先制、二走坪内も三塁を回りかけ、ライト呉昌征からのバックホームをキャッチャー中野道義が三塁に送球するがこれが悪送球、坪内も生還してこの回2点を先制する。阪神ベンチはここで先発の辻を下げて若林忠志監督がマウンドに上がる。

 朝日は5回、先頭の酒沢の当りは遊ゴロ、ショート武智修が一塁に送球するがファースト金田正泰が落球して無死一塁、田中の遊ゴロでランナーが入れ替わり、田中が二盗に成功、坪内が四球を選んで一死一二塁、金光の遊ゴロで坪内が二封されて二死一三塁、菊矢が中前にタイムリーを放ち3-0と突き放す。
 朝日先発の内藤幸三は7回まで阪神打線を2安打に抑え込んで無失点、しかし8回に波乱が起こる。


 阪神は8回、一死後呉昌征が四球を選んで出塁、御園生の初球がボールとなったところで朝日ベンチはライトの田中をベンチに下げて仁木安を入れて内藤を落ち着かせようと試みる。御園生の記録は「1-6-3」で二塁セーフの一塁アウト、これは二通り考えられ、ピッチャー内藤を強襲した当りをショート酒沢がバックアップして御園生を一塁に刺したか、ピッチャーゴロで内藤がゲッツーを狙って二塁に送球するが一走呉がスタートを切っていて二塁はセーフ、二塁ベースカバーの酒沢が一塁に送球して御園生を刺したか、いずれにせよ二死二塁、ワイルドピッチで呉は三進、藤村が右前にタイムリーを放ち1-3、本堂が四球を選んで二死一二塁、金田の一塁へのヒットで二死満塁、若林の三ゴロをサード田端義夫がエラーする間に三走藤村が生還して2-3、ここで朝日ベンチはレフトの坪内とセンターの大島渡を入れ替える布陣を敷いて何とか内藤を立ち直らせようとするが、武智がライト線に逆転の2点タイムリー二塁打を放って4-3とリードする。

 阪神は9回、先頭の塚本が四球を選んで出塁、呉昌征の左中間二塁打で無死二三塁、ここでキャッチャー吉田弘からの三塁牽制に三走塚本がタッチアウト、しかし呉が三盗を決めて一死三塁、御園生は三振に倒れるが、藤村のピッチャー強襲ヒットで呉が還り5-3とリードを広げる。

 若林忠志は8回3分の2のロングリリーフで5安打2四球2三振1失点、12勝目をあげる。

 朝日ベンチは内藤しか頼れるピッチャーがいないのであの手この手で内藤を引っ張ったが効を奏さなかった。

 阪神は辻源兵衛がプロ入り初先発。海草中学時代にピッチャーをやっていた実績を買っての起用でしょう。辻はプロ野球に1年在籍して戦死することとなる。本職の打撃では規定打席にこそ達していないものの打率2割4分4厘をマーク、出塁率は3割8分を記録している。

*阪神初回の攻撃。二死後御園生崇男が四球から二盗に成功、藤村冨美男も四球を選ぶと御園生が三盗、続いて藤村が二盗、これは重盗ではありません。御園生の三盗は「’’」で、藤村の二盗は「’」となっています。本堂の2球目が「’’」、3球目が「’」となっており、御園生の三盗は本堂の2球目に、藤村の二盗は本堂の3球目に行われていますので重盗ではありません。ちょっとした「慶應式スコアカード」のお勉強の時間でした(笑)。








2018年11月18日日曜日

19年 近畿vs産業 6回戦


7月10日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 2 0 0 2 0 0 0 6 近畿 5勝14敗1分 0.263 清水秀雄
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 産業 7勝12敗1分 0.368 森井茂

勝利投手 清水秀雄 3勝6敗
敗戦投手 森井茂     5勝9敗

二塁打 (近)岡村、丸山
本塁打 (近)八木 1号

勝利打点 八木進 1


八木進、生涯唯一の本塁打

 近畿は2回、一死後八木進がレフトスタンドに先制ホームラン、続く木下勇の遊ゴロをショート金山次郎が一塁に悪送球、丸山二三雄の右前打で一死一三塁、松川博爾の右前タイムリーで2-0とする。

 近畿は3回、一死後堀井数男が三塁にヒット、清水の右前打で一走堀井が三塁に走り、ライト野口正明が三塁に送球するがこれが悪送球、堀井がホームに還って3-0、三塁カバーに入ったピッチャー森井茂の本塁送球も悪送球となって打者走者の清水は三塁に進み、岡村俊昭は二ゴロに倒れて二死三塁、八木がレフト線にタイムリーを放って4-0とする。

 近畿は6回、先頭の丸山が右中間に二塁打、松川の中前打で無死一三塁、トップに返り加藤喜作がスクイズバントを決めて5-0、吉川義次は三ゴロに倒れて二死三塁、堀井の三塁へのタイムリーで6-0としてダメ押す。

 近畿先発の清水秀雄は5四球1死球を出しながら産業打線を3安打に抑えて今季2度目の完封、3勝目をあげる。 

 カロリン諸島ポナペ島出身の八木進が決勝本塁打を放った。八木は今期フル出場を果たすが応召し、戦死することとなる。八木にとって、プロ野球公式戦での唯一のホームランであった。

 

2018年11月4日日曜日

3連覇


 「3連覇」と言えば昭和31~33年の西鉄ライオンズが代表格でしょうか。

 慶大野球部は今期、1971年秋~72年秋以来の「3連覇」にあと1勝までいきましたが早大に連敗してチャンスを逃しました。

 つい先日も白井健三が世界体操で得意の「床」3連覇を逃したばかりです。広島東洋カープもリーグ3連覇は達成しましたが日本シリーズでは勝てません。

 そんな中、伊藤美誠がやってくれました。

 ついさっき、スウェーデンオープン準々決勝で劉詩文、準決勝で丁寧、そして決勝で朱雨玲と、中国のトップスリーを「3連覇」して優勝したニュースが飛び込んできました。

 卓球ネタで恐縮ですが、私の父親はインターハイ団体優勝、国体出場のカットマンで、真間小学校時代はいつも相手をさせられていて「市川の愛ちゃん」と呼ばれていたものです(笑)。

 ということで、卓球は荘則棟の時代からよく知っています。

 美誠パンチが炸裂したようです。Tリーグを無視して海外武者修行を続ける根性を評価するべきですね。「西鉄3連覇」以来の快挙、日本卓球史におけるエポックメーキングであると断言させていただきます。私は中国の世代交代では丁寧がネックになると見ていますので、東京五輪は行けますよ!!


*西鉄3連覇を伝える西日本新聞。当時の熱狂的西鉄ファンが残してくれた「スクラップブック」は、私が引き継いでいます!



 

2018年11月3日土曜日

51年ぶり


 シリーズMVPは甲斐拓也。

 6個の盗塁阻止で阻止率100%が評価されました。

 古田や阿部は打撃も評価されたもので、守備を評価された捕手のMVPは1967年の森昌彦以来、51年ぶりとなります。


*シリーズMVPに輝いた森。「攻守に健闘」とありますがこのシリーズでは22打数5安打。堀内を立ち直らせた好リードが評価されたものでした。(日本スポーツ出版社「日本シリーズ50年」より)

 

19年 巨人vs阪神 4回戦


7月9日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 1 0 0 1 2 0 1  0   2   0   7 巨人 13勝4敗2分 0.765 藤本英雄
0 0 3 1 0 0 0 1 0  0   2   0   7 阪神 14勝3敗2分 0.824 若林忠志

二塁打 (巨)藤本 (神)若林、呉昌征

勝利打点 なし

猛打賞 (巨)呉新亨(4安打) 2、藤本 1


三重盗と三重殺

 巨人は初回、二死後藤本英雄がピッチャー強襲ヒット、しかし中村政美は中飛に倒れて無得点。

 巨人は2回、先頭の近藤貞雄がピッチャー強襲ヒット、しかし川畑博は中飛、佐藤武夫はサードライナー、宮下信明は左飛に倒れて無得点。

 阪神は1回、2回と無安打で無得点。

 巨人は3回、二死後呉新亨が二塁にヒット、呉が二盗を決め、藤本は四球を選んで二死一二塁、中村のカウントがワンボールワンストライクとなったところで阪神ベンチは門前真佐人から中野道義に交代、阪神の先発は若林忠志監督であるが、誰がどういう経緯でキャッチャーを代えたのか理由は不明。ここで中村が左前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 阪神は3回裏、先頭の若林が巨人先発の藤本英雄から四球を選んで出塁、武智修が送りバントを決めて一死二塁、トップに返り塚本博睦は四球、呉昌征も四球を選んで一死満塁、御園生崇男が三前にタイムリーバントヒットを決めて1-1の同点、藤村冨美男は浅い右飛に倒れて二死満塁、本堂保次が押出し四球を選んで2-1と逆転、なお続く二死満塁から金田正泰の打席で3走者がスタート、三重盗が決まって3-1とする。

 阪神は4回、一死後若林がレフト線に二塁打、武智が右前にタイムリーを放って4-1とする。

 巨人は6回、先頭の藤本が左中間に二塁打、中村の二ゴロの間に藤本は三進、近藤は浅い中飛に倒れるが、川畑が三塁にタイムリーを放って2-4と追い上げる。

 巨人は7回、一死後杉江繁雄が四球を選んで出塁、トップに返り黒沢俊夫も四球、呉新亨の中前打で一死満塁、藤本のカウントがツーボールノーストライクとなったところで阪神ベンチは二番手キャッチャーの中野をベンチに下げてセカンドの本堂がマスクを被る。これはどうも、マウンドの若林監督の采配のようです。余程サインが合わなかったのでしょう。しかし若林は藤本に2つボールを続けて押出し四球で3-4、続く中村の同点右犠飛で4-4と追い付く。

 阪神は8回裏、先頭の御園生が四球から二盗に成功、藤村の一二塁間へのヒットがタイムリーとなって5-4と勝ち越す。

 巨人は9回表、二死後呉新亨がレフト線にヒットを放つと二盗に成功、ここで藤本が左前に同点タイムリー、5-5と追い付く。

 阪神は9回裏、一死後武智が四球を選んで出塁、トップに返り塚本の当りはライトライナー、一走武智がスタートを切っており、ライト近藤からファースト佐藤に送球されてダブルプレー、試合は延長戦に突入する。

 巨人の10回表は三者凡退。

 阪神は10回裏、先頭の呉昌征が左中間に二塁打、御園生の送りバントをピッチャー藤本は三塁に送球するがセーフ、犠打と野選が記録されて無死一三塁とサヨナラのチャンス、藤村はスリーボールワンストライクから四球を選んで無死満塁、ここは藤本が塁を詰めたか。無死満塁となって、本堂の当りはショートへの内野飛球、インフィールドフライが宣告されて本堂はアウト、この打球をショート杉江繁雄が落球、この場合はインプレーなので三走呉昌征がホームに突っ込むが白球を拾いあげた杉江からの本塁送球にタッチアウト、この時、二走御園生は二三塁間、一走藤村は一二塁間に立っており、キャッチャー川畑が御園生を追いかけてタッチアウト、トリプルプレーが成立する。御園生と藤村がルールを勘違いしていたようだ。

 巨人は11回表、先頭の宮下が三遊間にヒット、杉江が送りバントを決めて一死二塁、トップに返り黒沢がストレートの四球を選んで一死一二塁、呉新亨の中前打で一死満塁、中村の遊ゴロでゲッツーかと思われたが、ショート武智からの二塁送球をセカンド小林英一が後逸する間に三走宮下に続いて二走黒沢も生還して7-5とリードする。

 阪神は11回裏、先頭の金田正泰がストレートの四球、小林に代わる代打辻源兵衛の三塁内野安打で無死一二塁、若林監督が中前にタイムリーを放ち6-7と1点差、武智の送りバントをピッチャー藤本は三塁に送球するがセーフ、10回に続いて犠打と野選が記録されて無死満塁、トップに返り塚本の左犠飛で7-7の同点に追い付く。

 結局、12回を戦って7-7の同点、球史に残る激闘は引分け。

 若林と藤本が投げ合ったこの試合で、三重盗と三重殺が記録された。


*「三重殺」の場面を説明する「雑記」欄。「インフィールドフライを落球し呉本塁を得んとしてアウトとなり、御園生、藤村判断をあやまり、二~三、一、二塁間にありしを川畑二塁近くまで追って御園生を刺す。」と書かれています。