2010年11月29日月曜日

12年秋 最高殊勲選手

 12月1日からの日本選手権争奪戦を前に、日本職業野球聯盟から最高殊勲選手にバッキー・ハリスが選出されたと発表された。当時のMVPは最高殊勲選手と称され、1963年から最優秀選手と改称されたようですが、12月1日付け読売新聞には、見出しには「最高殊勲選手・ハリス」となっていますが、解説文中には「今シーズン全選手のNo1として表彰する最優秀選手は・・・イーグルスのハリス捕手と決定」と記述されており、当時から「最優秀選手」の呼称も使用されていたようです。

 第一次候補者はバッキー・ハリス、苅田久徳、西村幸生、水原茂の四人で、ハリス以外の落選理由は、水原は「守備に完璧さを欠いた」(読売)、「48試合12失策を記録した」(大和球士著「真説 日本野球史」)こと、西村は「投手としては春の澤村に比すべくもなく」(読売)、「春の澤村と比較して劣るとされ」(大和)たこと、苅田は「守備に於いては断然リーグの第一人者と認められながら打撃不振のため」(読売)、「今季は打率2割2分5厘の低率のため不満足とされ」たためである。

 ハリスの選出理由は「打撃において強打者の多いイーグルス軍をリードすると共にリーグ随一の名捕手ぶりを遺憾なく発揮して畑福、中河両主戦投手を巧妙にリードし、春の最下位から一躍秋は第二位巨人軍と紙一重の差にまで迫るイーグルスの戦勝に抜群の働きを見せた」(読売)、「打率3割1分で、ベストテンの第五位を占め、畑福、中河両投手の持ち味を充分に引き出し、正確強肩の各塁送球力を高く買われ」(大和)たものである。

 また、最優秀打者には首位打者の景浦将が選出されましたが、読売新聞には「景浦の打数について審議した結果、打数120に四死球45を加えた165の打席を適当と認めて今秋のリーディングヒッターとすることに決定した」と書かれています。タイガースの試合数は49試合であり、現行ルールのとおり試合数×3.1を規定打席とすると151打席となり、165打席の景浦が規定打席に達していることは議論の余地はないはずですが、この記述からすると当時はまだ明確な規定打席の基準が設けられていなかったことがうかがわれます。Wikipediaによると昭和12年秋の規定打席は打席数ではなく「100打数」であるとなっています。Wikipediaの記載が正しいとしても景浦の打数は120であり議論の余地はないはずです。

 なお、10月27日のジャイアンツVSセネタース3回戦は平山菊二が故意に苅田久徳の送球に当たったのではないと裁定され、再試合を行うこととなったことも同時に発表されました。結局、選手権の日程上再試合は行われず、無効試合となります。この結果ジャイアンツとセネタースの昭和12年秋季リーグ戦の試合数は他球団より1試合少ない48試合となりました。また、この試合の負け投手であった澤村の負け数も一つ減じられ、澤村の昭和12年秋季リーグ戦の公式記録は9勝5敗となりました。
 
 

 

2010年11月28日日曜日

12年秋 11月 月間MVP

量と質


 11月の月間MVPを発表させていただきます。今月のテーマは「量と質」となっております。




投手部門


 ジャイアンツ 澤村栄治 


 澤村は春季リーグ戦第一期、第四期に次いで通算三度目の受賞となった。


 本来であればライオンの菊矢吉男投手が受賞するべきであると思います。菊矢は今月、8試合に登板して6勝1敗、64回3分の2を投げて防御率1.95、WHIP1.31、奪三振率4.36であった。
 また、イーグルスの中河美芳は今月、8試合に登板して6勝2敗、69回3分の1を投げて防御率2.08、WHIP1.37、奪三振率3.78であった。


 これに対して澤村は今月、4試合に登板して4勝0敗、31回を投げて防御率0.29、WHIP0.68、奪三振率8.71です。


 まず、昭和12年秋季リーグ戦において澤村が月間MVPを受賞するということに違和感を覚える方が数多くいらっしゃると思います。一般的には澤村の全盛期は24勝4敗の成績をあげた昭和12年春季リーグ戦であると言われており、秋季リーグ戦では7月の徴兵検査に甲種合格したことによる精神的ダメージ、優子さんとの恋愛問題、性病説等から調子を崩したのだ言われています。


 当ブログの見解を申し述べますと、春の投げ過ぎによる反動であったと考えています。澤村は春季リーグ戦では3月28日から7月11日までに30回登板しています。そのうち先発が24回あり、3ヶ月半で244回を投げています。これは中二日~三日で約3カ月投げとおしたことを意味します。年間に換算すると400回以上を投げたこととなりますが、戦後でも権藤博や稲尾が400回を投げています。戦後のピッチャーで最も澤村に近いと言われる権藤博は新人から35勝、30勝の二年間がピークでした。稲尾の場合は頭脳的ピッチングで八年持たせましたが投げ過ぎによる故障と言われています。


 前置きが長くなりましたが、昭和12年春季リーグ戦において澤村と同等の投球回数を投げたピッチャーは野口明(257回)、古谷倉之助(256回)、畑福俊英(240回)ですが、澤村とはピッチングスタイルが異なります。
 
 野口明は速球派ではありましたが逸早く技巧派に転向しており、実際に残されている読売新聞の記述にも「横手からの速球」などという記述も見られます。畑福もかつては剛球のイメージがありましたが完全に技巧派に転向していることは実況中継の中でも述べているとおりです(これは肩を痛めながらも投げ続けた苦肉の策です。)。古谷は当ブログで「のらりくらり投法」と名付けさせていただいた(実際は下柳のぱくりですが)とおりチェンジ・オブ・ペースを武器にします(但し、八王子で投げていた若かりし頃は速球派で鳴らしたであろうことは容易に想像がつきます。)。


 本日はここまでが前置きとなりますのでもう少しお付き合いください。
 
 澤村は秋季リーグ戦に入って9月(8月29日~9月25日)は8回登板、10月(10月2日~10月30日)は9回登板し、春とは違って結構打ちこまれています。藤本監督も思うところがあったのでしょうか、11月最初の登板(11月4日)はライオン戦でのリリーフで3回を1安打に抑えて6勝目をあげます。


 次は11月10日の金鯱戦、自責点1で完投して7勝目、その次は11月17日の阪急戦で、延長10回3安打12三振で完封。今年最後の登板は11月26日のイーグルス戦で先輩・畑福俊英と投げ合って3安打11三振自責点0で完投。


 と言うことで、11月は最初の登板が中四日のリリーフ、中五日で完投、中六日で完封、中八日で完投(但しこの間に11月20日、東西対抗で完封しており、23日にも3回途中まで投げています。)、結局11月の成績は、31回を投げて4勝0敗、防御率0.29、WHIP0.68、奪三振率8.71です。

 これってひょっとして澤村は衰えていた訳でもなく調子を落としていた訳でもなく、ましてや性病でもなく、単に疲れていただけなのではないでしょうか。中五日や中六日ということは、2010年現在におけるNPBでも行われているローテーションであり、常識的なローテーションで投げれば澤村は防御率0.29のピッチングができるピッチャーであったというだけのことではなかったのでしょうか。

 ここで澤村のピッチングスタイルを想起してみましょう。澤村が古谷のようなのらりくらり投法ではなく、野口明や畑福のように技巧派に転身できた訳ではないことは皆様ご存知のとおりです。

 すなわち、力投派のピッチャーにとって、疲れを残さないことがいいピッチングをする絶対条件であり、澤村の昭和12年11月のローテーションが全てを証明しているということです。



打撃部門

 タイガース 景浦将

 11月の月間MVP打撃部門は圧倒的強さを誇るタイガース打線から選びます。問題は、誰を選ぶかということです。

 タイガースの強さは、ジャイアンツや阪急のような一発頼みではない打戦のつながりにあります。これは、両翼110メートルを超す甲子園球場と両翼78メートルの後楽園球場を主戦場とする違いに起因しています。タイガースは11月の13戦中、甲子園で7試合、西宮で3試合、後楽園で3試合を行っています。一方ジャイアンツは、11月の12戦中、後楽園球場で7試合、洲崎球場で3試合、甲子園で2試合を行っています。

 昭和12年秋季リーグ戦では公式試合は195試合(無効試合1を除いています)行われ、108本のホームランが生まれましたが、その内甲子園では3本(中村信一、景浦将、宮武三郎)、西宮で14本、洲崎で5本、後楽園で86本が飛び出しています。後楽園に80%が集中するという超いびつな形でペナントレースが行われ、今後も続いていくこととなります。「記録」を整理されている方は、この点を十分理解しながら整理されることをお薦めいたします。


   前置きが長くなりましたので本題に入ります。

 藤村富美男 13試合、67打席、打率 0.397、OPS 0.973
 山口政信   13試合、65打席、打率 0.212、OPS 0.600
 景浦将    13試合、57打席、打率 0.350、OPS 1.144
 藤井勇    13試合、63打席、打率 0.259、OPS 0.628
 伊賀上良平 13試合、57打席、打率 0.163、OPS 0.505
 岡田宗芳   13試合、55打席、打率 0.269、OPS 0.578

 藤村富美男、景浦将の対決であることは一目了然です。藤村は二番セカンドに定着して今月無安打は1試合のみという安定味を見せています。景浦の強みは今月14安打で四球も17を数えていることです。藤村は25安打で四死球が4個、四球はわずか2個です。積極的に打っていくプレースタイルと、後ろに山口政信、景浦将が控えているだけに歩かせる訳にはいかないという投手側の事情にもよるでしょう。

 結局のところ、14打点をあげた景浦将という結論に達しました。








 

 



 


 

2010年11月27日土曜日

12年秋 第13節 週間MVP

 最終節は、タイガースが2勝1敗、ライオンと金鯱が3勝2敗1分、セネタースが3勝2敗、名古屋とイーグルスが2勝2敗、ジャイアンツが1勝2敗、阪急が1勝4敗であった。


週間MVP

 ライオン 菊矢吉男 2

 今節3勝0敗、名古屋7回戦では8四球を与えながらも1安打ピッチング。


 金鯱 スリム平川喜代美 1

 今節19打数6安打4得点4打点、本塁打2本。今節のホームランは全体で平川の2本だけであった。


殊勲賞

 名古屋 大沢清 1

 今節4試合で16打数4安打7打点。


敢闘賞

 名古屋 桝嘉一 1
 
 今節11打数5安打6四球1死球、出塁率6割6分7厘を記録する。


技能賞 

 ライオン 鬼頭数雄 1

 今節18打数6安打4盗塁5四球2死球、三塁打3本が光る。

12年秋 名古屋vsイーグルス 7回戦

11月30日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 0 0 0 0 0 5 7 名古屋    13勝33敗3分 0.283 松尾幸造 繁里栄
0 1 0 0 0 0 0 2 1 4 イーグルス 28勝19敗2分 0.596 中河美芳


勝利投手 松尾幸造    4勝6敗
敗戦投手 中河美芳 13勝6敗


二塁打 (名)桝、大沢 (イ)寺内2、中河


名古屋、有終の美を飾る


 いよいよ昭和12年秋季リーグ戦の最終戦を迎えることとなった。

 名古屋は初回、一死後三浦敏一左前打、桝嘉一左中間二塁打、大沢清が珍しく引っ張って左翼線に二塁打を放ち2点を先制する。

 イーグルスは2回、先頭のサム高橋吉雄が三塁内野安打で出塁、小島利男の遊ゴロで高橋が二塁に進み、中河美芳の右前タイムリーで1-2とする。

 その後は松尾幸造、中河美芳両左腕投手の投げ合いが続き一進一退の展開。イーグルスは8回、先頭の寺内一隆内野安打、杉田屋守の三ゴロでランナーが入れ替わり代走に村澤秀雄を起用、バッキー・ハリス左前打で一死一二塁、高橋は左飛に倒れ二死一二塁、小島利男の三ゴロをサード田中実がトンネル、村澤が還り2-2の同点、レフト石田政良からのバックホームが高く逸れる暴投となる間にハリスもホームに突入、イーグルスが3-2と逆転に成功する。

 名古屋は9回、先頭の田中実が四球で出塁、イーグルスはセカンド高橋をサードに、サード野村実をセカンドに入れ替える。石田の送りバントは内野安打となり一二塁、小坂三郎の送りバントも内野安打となって無死満塁、松尾に代わる代打小島茂男の遊ゴロをショート辻がエラーして同点、石丸藤吉の三ゴロで三走石田は本封、三浦は捕邪飛に倒れて二死満塁、ここで桝嘉一が左前に本日4安打目となる2点タイムリーを放ち5-3と逆転、更に大沢清の中前打で二走石丸に続いて一走桝嘉一も一気にホームに還り7-3とする。本日4安打の桝は走塁でも西武辻もびっくりの好走塁を見せる。大沢には一二塁からのシングルヒットで2打点が記録されている。

 松尾に代打が送られたため9回裏は繁里栄が登板、イーグルスは先頭の中河が左翼線に巧打して二塁打、辻に代わる代打斎藤正寿の遊ゴロをショート小坂がエラーして無死一三塁、斎藤に代えて代走に筒井良武を起用、しかし筒井は二盗に失敗、トップに返り寺内が右翼線に二塁打を放って4-7、しかし最後は太田健一がサードフライに倒れてゲームセット。ここに昭和12年度ペナントレースが終了する。

 桝嘉一が4打数4安打2打点、大沢清が5打数2安打4打点の活躍であった。名古屋打線は三浦敏一が5打数2安打、白木一二が5打数2安打、途中出場の石田政良が2打数2安打、小坂三郎が4打数2安打と、ヒットを打った6人全員がマルチヒットを記録する。

 明日12月1日から春季優勝のジャイアンツと秋季優勝のタイガースとの間で日本選手権争奪試合が7回戦で行われます。この試合のスコアブックも残されていますので、実況中継を続けます。

12年秋 金鯱vsセネタース 7回戦

11月30日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
4 0 0 0 0 0 0 0 2 6 金鯱     23勝25敗1分 0.479 中山正嘉
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 セネタース 20勝27敗1分 0.426 浅岡三郎


勝利投手 中山正嘉 7勝9敗
敗戦投手 浅岡三郎 4勝8敗


二塁打 (金)平川
三塁打 (金)中山


金鯱、四位を確保


 金鯱は初回、一死後江口行男が遊失に生き、矢野槇雄左前打、小林茂太死球で満塁、黒澤俊夫の右犠飛で1点を先制してなお二死一三塁、小林茂が二盗を決めると相原輝夫が右前に2点タイムリーを放ち3-0、絶好調スリム平川喜代美が左中間を破るタイムリー二塁打を放って4-0と鮮やかな先制攻撃で主導権を握る。

 セネタースは2回、中村民雄、野口明の連打とキャッチャー相原のエラーで1点を返すがその後は中山正嘉を打てず、3回の今岡謙次郎の右前打以降はノーヒットに抑えられる。

 金鯱は9回、四球に歩いた平川を中山の三塁打で還し、島秀之助の右犠飛で6-1として最終ダブルヘッダーに連勝し、四位を決定する。

 中山正嘉は今季最終戦を3安打3四球4三振の完投で7勝目。島秀之助は現役最後の試合を5打数無安打で終えることとなったが、最後の打席はライトへの犠牲フライでであった。昭和12年当時は犠牲フライは記録されず飛球として記録されているため5打数無安打となるが、現行ルールであれば4打数無安打であった。

12年秋 セネタースvs金鯱 6回戦

11月30日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 セネタース 20勝26敗1分 0.435 野口明 浅岡三郎
0 0 1 1 0 0 1 0 X 3 金鯱          22勝25敗1分 0.468 古谷倉之助


勝利投手 古谷倉之助 7勝4敗
敗戦投手 野口明      14勝15敗


二塁打 (セ)野口明
三塁打 (金)黒澤
本塁打 (金)平川 2号


野口明、最多勝はならず


 いよいよ昭和12年秋季リーグ戦最終日を迎えた。この時点では10月27日のセネタースvsジャイアンツ3回戦は提訴中であり、セネタースの勝利としてカウントされているため、両チーム21勝25敗1分の同率四位で迎える最終日のダブルヘッダーとなった。実際には上記10月27日の試合は無効試合となって取り消されましたのでセネタースの通算成績からは除いてお伝えしております。

 セネタースの先発はスタルヒン、西村幸生に並ぶ15勝目を狙う野口明、金鯱の先発は病気療養からようやく復調してきた古谷倉之助。タイガース、ジャイアンツ投手陣以外では職業野球黎明期を代表するエース同士の対決となった。

 セネタースは初回、先頭の苅田久徳が左前打、これをレフト黒澤俊夫がはじいて苅田は三塁に進み、横沢七郎の中犠飛で1点を先制する。

 金鯱は初回、先頭の島秀之助が四球で出塁するが江口行男の遊ゴロは6-4-3のセネタース併殺網にかかりゲッツー、2回は小林茂太が二失に生き、黒澤俊夫の投前バントが野選を誘い小林茂を三塁に進めるがスクイズ失敗、黒澤を二塁において古谷倉之助が中前打を放つが8-4-2の中継に黒澤が刺されて得点ならず。

 しかし金鯱は3回、スリム平川喜代美の第2号ホームランで1-1の同点とし、4回、黒澤が左中間に三塁打、相原の投直に黒澤が飛び出しかけるが野口明からの送球をサード横沢七がエラーして黒澤が還り2-1と逆転。野口明は4回で降板し、浅岡三郎がリリーフに登場する。金鯱は7回、先頭の黒澤が右前打で出塁、パスボールと相原の送りバントで三塁に進み、古谷の二ゴロの間に生還して3-1とする。

 約1カ月の病気療養があった古谷倉之助は今季最終登板を4安打2四球8三振の完投で飾り7勝目。金鯱は五番黒澤俊夫が攻撃の起点となり四位決定戦第一試合に快勝。一番島秀之助と五番黒澤をツートップとして攻撃の起点としてきたが島は今年で現役を引退し来年から審判に転身することとなる。島秀之助は第二試合は5打数無安打で終わるので、2回に放った右前打が現役最後のヒットとなった。


 ここに野口明の最多勝の夢は潰えたのである。しかしながら、これまで見てきたとおり、昭和12年度ペナントレースにおける投手部門において、野口明は澤村栄治に優るとも劣らない印象を残したのである。

2010年11月26日金曜日

12年秋 名古屋vsタイガース 7回戦

11月29日 (月) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 2 0 0 0 0 0 0 4 名古屋   12勝33敗3分 0.267 森井茂
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 タイガース 39勝9敗1分  0.813 青木正一


勝利投手 森井茂   5勝11敗
敗戦投手 青木正一 0勝1敗


二塁打 (名)大沢、白木、小坂 (タ)青木
三塁打 (名)石丸


消化試合


 名古屋は初回、一死後石田が左前打、桝嘉一死球、大沢清が中越えに二塁打を放って二者を迎え入れて2点を先制する。更に3回、石田が三塁に内野安打、桝の左翼線安打とレフト藤井勇のエラーで無死二三塁、大沢の中犠飛で3-0、白木一二が中越えに二塁打を放って4-0とする。

 タイガースは5回、広田修三に代わる代打景浦将が中前打で出塁して代走に加藤信夫を起用、青木正一が左中間を破り加藤が還って1-4とする。

 森井茂は7安打2四球5安打の完投で5勝目、森井は開幕戦を完封で飾り、最終戦を完投で締めることとなった。青木正一も9回を投げ抜き11安打4四球1死球0三振というピッチング。タイガースはジャイアンツとの日本選手権争奪戦を控えての調整試合であり、典型的な消化試合であった。


 最終戦に残された興味はライオン鬼頭数雄とタイガース景浦将の首位打者争いである。昨日のライオンは阪急とのダブルヘッダー、この試合の前まで鬼頭は181打数58安打、打率3割2分4毛であり、景浦は119打数39安打、打率3割2分7厘7毛であった。鬼頭は第一試合の第四打席で右翼線に三塁打を放ち4打席3打数2安打1四球となりこの時点で184打数60安打、打率3割2分6厘1毛と景浦に1厘6毛差まで迫った。第四打席は遊ゴロに倒れて結局この試合は4打数2安打で185打数60安打、打率3割2分4厘3毛で第二試合に賭けることとなった。第一打席でヒットが出れば186打数61安打、打率3割2分8厘0毛となり景浦を抜いて首位打者に躍り出ることとなるが結果は三ゴロ、第二打席は死球、運命の第三打席は二ゴロに倒れて187打数60安打打率3割2分9毛となりその裏の守備から煤孫伝と交代した。景浦は最終戦で2打数無安打以上であれば首位打者が確定するところであり、代打で登場して中前打を放ち120打数40安打打率3割3分3厘で首位打者を確定したものである。

 鬼頭数雄は昭和15年に首位打者となる。この年の川上哲治との首位打者争いは有名であるが、昭和12年秋季リーグ戦においても、景浦将と最終日にまでもつれ込む首位打者争いを繰り広げたのである。

2010年11月25日木曜日

12年秋 ライオンvs阪急 7回戦

11月29日 (月) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 1 0 0 0 0 2 ライオン 19勝29敗1分 0.396 近藤久 大友一明
0 0 5 2 0 1 1 0 X 9 阪急    17勝29敗3分 0.370 山田勝三郎 丸尾千年次


勝利投手 山田勝三郎 1勝0敗
敗戦投手 近藤久    3勝11敗
セーブ   丸尾千年次 1


二塁打 (ラ)坪内 (阪)堀尾
三塁打 (阪)山下好


ジミー堀尾文人、3本のタイムリーで5打点


 ダブルヘッダーの第二試合。ライオンは初回、先頭の坪内道則が左前打から盗塁、キャッチャー沖克己の送球が高く逸れて坪内は三塁に進み、第一試合の3安打で二番に上がった中野隆雄が右犠飛を打ち上げて1点を先制。

 阪急は3回、先頭の山田勝三郎が四球で出塁、3回表の守備から沖に代わってマスクを被る島本義文が送って、黒田健吾の中前タイムリーで1-1の同点、二番ライト石田光彦が右翼線安打、山下好一四球で一死満塁、四番に入ったジミー堀尾文人が左前に2点タイムリーを放って3-1と逆転、宇野錦次は中飛に倒れるが久々出場の上田藤夫が左前にヒットを放ち山下好一が還り、レフト鬼頭数雄のエラーの間に堀尾も還って5-1とする。

 阪急は4回、先頭の大原が四球、黒田の右前打で無死一二塁、ライオンはここで近藤久から大友一明にスイッチ、石田が送って山下好一四球で一死満塁、ここで堀尾が又も右前に2点タイムリーを放って7-1とリードを広げる。

 ライオンは5回、大友、原一朗、坪内の三連打で1点を返すが、阪急は6回、山下好一の三塁打から堀尾のこの日5打点目となるタイムリー二塁打で1点、7回にもヒットで出塁した上田を島本のタイムリーで還して9-2として快勝、第一試合の雪辱を果たす。

 山田勝三郎は今季最終戦で初勝利。6回からリリーフの丸尾千年次は4イニングを1安打1四球4三振で無得点に抑える好リリーフを見せる。ジミー堀尾文人は3本のタイムリーで5打点をあげて四番の重責を果たす。

2010年11月24日水曜日

12年秋 ライオンvs阪急 6回戦

11月29日 (月) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 4 0 1 0 5 10 ライオン 19勝28敗1分 0.404 菊矢吉男
0 1 0 0 0 0 0 2 0  3  阪急    16勝29敗3分 0.356 中田武夫


勝利投手 菊矢吉男 13勝10敗
敗戦投手 中田武夫  3勝9敗


二塁打 (ラ)中野 (阪)堀尾、山下好
三塁打 鬼頭


中野隆雄、猛打賞


 六位ライオンを1ゲーム差で追う阪急は本日のダブルヘッダーに連勝すれば六位に浮上する。
 阪急は2回、一死後宇野錦次が三失に生き、二死後島本義文の右前打で一三塁、島本盗塁後、キャッチャー原一朗の捕逸で宇野が還り1点を先制する。

 初回の一死満塁のチャンスを逸したライオンは5回、先頭の中野隆雄四球、柳澤騰市左前打、原一朗も左前打で続き無死満塁、坪内道則の三ゴロで中野は本封、大友一明が中前に2点タイムリーを放って2-1と逆転。鬼頭数雄四球で再度一死満塁、水谷則一の二ゴロで鬼頭が二封される間に坪内が還って3-1、キャッチャー島本の二塁牽制が悪送球となり大友が還って4-1とする。

 ライオンは7回、鬼頭の右翼線三塁打で1点追加して5-1。阪急は8回、ジミー堀尾文人右中間二塁打、黒田健吾左前打、山下好一右翼線二塁打で2-5、キヨ野上清光の右犠飛で3-5と反撃を開始。しかしライオンは9回、5安打に敵失を絡めて5点を追加して試合を決める。

 菊矢吉男は6安打3四球6三振の完投でハーラー四位タイとなる13勝目をマークする。ライオンは当面のライバル阪急に快勝して六位を確定させる。中野隆雄が4打数3安打の猛打賞、中野は終盤に来て固め打ちを見せており、18日の名古屋戦でも5打数4安打であった。

2010年11月23日火曜日

12年秋 タイガースvs阪急 7回戦

11月28日 (日) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12  13   計
0 0 2 0 0 1 0 0 0  0   0   0    9   12  タイガース  39勝8敗1分   0.830 御園生崇男
0 0 0 0 0 3 0 0 0  0   0   0    0    3    阪急          16勝28敗3分 0.364 重松通雄


勝利投手 御園生崇男 11勝0敗
敗戦投手 重松通雄       1勝2敗


二塁打 (タ)田中
三塁打 (タ)藤村、松木


延長13回に9得点


 タイガースは3回、先頭の御園生崇男が中前打、一死後松木謙治郎右前打で一二塁、藤村富美男中前タイムリー、山口政信も中前タイムリーで2-0と先制する。更に6回、左翼線二塁打のカイザー田中義雄を御園生の右前タイムリーで還して3-0とする。

 阪急は6回裏、先頭の重松通雄が左前打で出塁、トップに返り西村正夫四球、黒田健吾の送りバントが野選を誘い無死満塁、山下実の右前タイムリーで2-3としてなお一三塁、山下好一の遊ゴロの間に黒田が還って3-3の同点に追い付く。

 重松は7回以降毎回走者を許すがタイガースに得点を許さず、御園生は7回以降2安打、特に9回以降は無安打ピッチングで延長13回に突入する。因みにこの試合は本日の第三試合ですので日没までやります。

 タイガースは13回表、この回先頭の御園生が中前打で出塁、岡田宗芳死球、松木の投前送りバントが重松の野選とエラーを誘い御園生が還って4-3としてなお無死二三塁、藤村死球、山口押出し四球を選んで5-3、景浦将の二ゴロで山口が二封される間に松木が還って6-3、景浦二盗後、藤井勇が四球を選んで一死満塁、伊賀上良平の右前タイムリーで7-3、田中の中前2点タイムリーで9-3、御園生の左前打で再度満塁、岡田の遊ゴロで御園生が二封される間に伊賀上が還り10-3、松木が右中間に止めの三塁打を放って、延長13回にして一挙9点をあげて試合を決める。
 御園生崇男は延長13回を8安打2四球2死球6三振の完投で無傷の11連勝、今季最終登板であることは確実で、勝率10割を達成する。タイガースは阪急に7戦全勝。

 タイガース13回の攻撃は、12月1日からスタートする春季優勝ジャイアンツとの日本選手権に向けての強烈なメッセージであると同時に、ジャイアンツは11月26日に全日程を終了させているのに対してタイガースは明日29日にも最終戦が組まれており、ジャイアンツ優先のスケジュールを組む聯盟に対しての無言の抗議でもある。

12年秋 金鯱vsライオン 7回戦

11月28日 (日) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 3 0 0 0 0 0 0 0 3 金鯱    21勝25敗1分 0.457 鈴木鶴雄 古谷倉之助
0 0 0 0 0 0 3 0 0 3 ライオン 18勝28敗1分 0.391 桜井七之助 近藤久


二塁打 (ラ)桜井
三塁打 (ラ)鬼頭


盗塁王島秀之助、現役最後のホームスチール


 ライオンの先発は四番ピッチャー桜井七之助。坪内道則著「風雪の中の野球半世記」によると「桜井の球は145キロ前後はあったと思える快速球ではあったが、軽くて、単調だった。」とのこと。この記述は「澤村の球速は?」議論の一助になるかもしれない。澤村の球速については「160キロ説」から「せいぜい135キロ程度」までさまざまであるが、どの説をとる人でも桜井よりは速かった考えるであろう。坪内道則は職業野球創設期(芝浦協会、宝塚協会、天勝野球団を除く)から戦後は西鉄コーチ時代の稲尾、ロッテ二軍監督時代の村田、中日寮長時代の小松を間近で見ており、「桜井の145キロ」は信ぴょう性が高いと判断できる。となれば、澤村のスピードは少なくとも150キロは超えていたとみて良いのではないか。

 金鯱は2回、一死後瀬井清が中前打で出塁、鈴木鶴雄の右翼線ヒットで一死一三塁、トップに返り島秀之助が左翼線に先制タイムリーを放ち1-0、江口行男の二ゴロで二死二三塁、パスボールで鈴木が還り2-0として島秀之助も三塁に進み、黒澤の打席で島が単独ホームスチールを決めて3-0とする。左打者である黒澤の打席での単独ホームスチールは、島秀之助がいかに優秀な走者であったかを物語っている。因みに早慶戦におけるピッチャー水原の時の三原のホームスチールも左打者弘世の打席であった。更に因みに弘世は草創期の日本生命社長一族であり、当時の野球エリートのスケールを物語っている。

 金鯱先発の鈴木鶴雄に6回まで散発の4安打に抑えらていたライオンは7回、先頭の中野隆雄四球、安藤之制(ゆきのり)左前打、一死後原一朗の左前タイムリーで1-3、坪内が右前にタイムリーで続き2-3、藤浪光雄の当りはサードゴロ、サード矢野槇雄からセカンド江口に渡って坪内は二封、江口は一塁に転送するがこれが暴投となる間に安藤が還って遂に3-3の同点となる。金鯱ベンチは鈴木から古谷倉之助にスイッチ、古谷は続く鬼頭数雄に四球を与えるが本日2安打の四番ピッチャー桜井七之助を遊ゴロに仕留めてチェンジ。古谷倉之助も金鯱のエースにして昨年の打点、ホームランの二冠王にして打率二位の準三冠王であり体調さえ戻れば通常は五番、時に四番を打つ両刀使いであり、桜井には負けられないところ。

 ライオンは8回からリリーフに出た近藤久が最後まで締め、古谷も得点を許さず、この試合は第二試合であるため9回引分けとなった。来季から審判に転ずることとなる島秀之助にとって、2回は現役最後のタイムリーヒット、更に現役最後の盗塁がホームスチールであり今季22個目の盗塁となり、鬼頭数雄と盗塁王を分け合うこととなる。本日最後の因みに、島がホームスチールを決めた時打席に立っていた黒澤俊夫は通算10個のホームスチールを記録した本盗の名人である。

12年秋 セネタースvs名古屋 7回戦

11月28日 (日) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 セネタース 20勝25敗1分 0.444 金子裕 野口明
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 名古屋   11勝33敗3分 0.250 繁里栄 森井茂


勝利投手 野口明 14勝14敗
敗戦投手 繁里栄  0勝8敗


二塁打 (セ)家村、横沢
三塁打 (セ)尾茂田


野口明、ハーラートップに迫る14勝目


 セネタース先発の金子裕は3回まで毎回走者を背負いながら何とか踏ん張る。4回は三者凡退で切り抜けたが5回、一死後石丸藤吉に三遊間を破られたところで野口明と交代する。この継投策は予定通りであろう。11月11日にスタルヒンが15勝目をあげた時点で野口明は11勝、ところがそこからスタルヒンがよもやの4連敗でシーズンを終え、昨日西村幸生が15勝目をあげてスタルヒンに並んだが西村はこれが最終登板であろう。あと一試合を残すイーグルス勢は中河美芳が13勝、畑福俊英が12勝であり、昨日菊矢吉男が12勝目をあげたライオンはあと3試合を残すが本日の第二試合と明日のダブルヘッダーに3連勝するのは至難の業である。そうこうするうちに野口明は13勝まで星を伸ばしてきており、この試合を含めてセネタースは残り3試合であり、今日14勝目をあげれば最終30日の金鯱とのダブルヘッダーで15勝、野口ならば連投して16勝の可能性を残すだけにセネタースとしては今日は野口明に勝星をプレゼントしたいところ。

 一方、開幕から勝星に恵まれずここまで0勝7敗の繁里栄は今季最高の出来で7回までセネタース打線を4安打無得点に抑える好投を続ける。繁里に何とか初勝利をと燃える名古屋は7回裏、先頭バッターは女房役の三浦敏一、三浦の当りはファーストゴロ、しかしファースト綿貫惣司は三浦の気迫に押されたかこれをエラー、続く繁里が送って一死二塁とすると名古屋ベンチは小坂三郎に代えて小島茂男を代打に送る。小島は期待に応えて右前に運び三浦が還って遂に1点を先行する。

 セネタースは8回、先頭の横沢七郎が左中間に二塁打、尾茂田叶死球で無死一二塁、名古屋ベンチは繁里限界と見て森井茂をリリーフに送る。しかし中村民雄の一塁線送りバントが内野安打となり無死満塁、先ほど手痛いエラーを犯した綿貫が押出し四球を選んで1-1の同点、この瞬間又も繁里の初勝利はお預け、更に家村相太郎が中犠飛を打ち上げて2-1と逆転。野口明が最後を締めてセネタースが2対1で逆転勝利をおさめる。

 野口明は最多勝に夢をつなぐ14勝目、初勝利のチャンスだった繁里栄は一転今季勝星なしの8敗目を喫す。

12年秋 タイガースvs阪急 6回戦

11月27日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 タイガース 38勝8敗1分    0.826 西村幸生
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急      16勝27敗3分 0.372 中田武夫


勝利投手 西村幸生 15勝3敗
敗戦投手 中田武夫  3勝8敗


三塁打 (タ)松木


西村幸生、ハーラートップに並ぶ


 タイガースは初回、先頭の松木謙治郎が右中間に三塁打、一死後山口政信四球、景浦将の三ゴロをサードキヨ野上清光が失して松木が還り1点を先制してなお一死一二塁、藤井勇の右飛で山口は三塁に進み、中田武夫がボークを犯して山口が還り2-0とする。

 西村幸生は元気のない阪急打線を5安打に抑えて3四球7三振の完封で15勝目をあげハーラートップのスタルヒンに並ぶ。

 中田武夫も2回以降タイガース打線を封じて4安打5四球2死球3三振2失点自責点0の好投を見せる。中田は好調時のバロメーターである死球を2個与え、外角カーブと内角シュートでタイガース打線を翻弄、景浦は三打席連続三ゴロに倒れる。



2010年11月22日月曜日

12年秋 名古屋vsライオン 7回戦

11月27日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 1 0 0 0 2 名古屋  11勝32敗3分 0.256 松尾幸造 森井茂
1 0 0 0 2 1 0 1 X 5 ライオン 18勝28敗    0.391 菊矢吉男


勝利投手 菊矢吉男 12勝10敗
敗戦投手 松尾幸造  3勝6敗


二塁打 (ラ)大友


菊矢吉男、1安打ピッチング


 ライオンは初回、先頭の坪内道則が三前にセーフティバントを決めて出塁すると二盗を決める。大友一明四球、鬼頭数雄の遊ゴロで大友二封となり一死一三塁、鬼頭二盗後水谷則一が中犠飛を打ち上げて1点を先制する。

 名古屋は4回、先頭の桝嘉一が四球で出塁、大沢清の二ゴロをセカンド大友が失して無死一三塁、田中実は三ゴロに倒れ一死二三塁、ここで菊矢吉男がワイルドピッチを犯してノーヒットで1-1の同点。

 ライオンは5回、中野隆雄四球、柳澤騰市の投ゴロでランナーが入れ替わり柳澤二盗、原一朗四球、トップに返り坪内の二ゴロで二死二三塁、ここで先ほど手痛いエラーを犯した大友が中越えに汚名挽回の二塁打を放って3-1とする。 

 名古屋は6回、桝、大沢連続四球、田中実左飛後石丸藤吉も四球で一死満塁、小坂三郎の代打小島茂男が中犠飛を打ち上げて又もノーヒットで2-3として先発松尾幸造から森井茂にスイッチ。ライオンはその裏、先頭の水谷が四球で歩いて盗塁、桜井七之助の遊ゴロで水谷三進、菊矢の左犠飛でこちらもノーヒットで4-2とする。ライオンは8回にも大友の四球、水谷の右前打から桜井の遊ゴロで1点を追加して5-2としてそのまま逃げ切る。

 名古屋の2得点はいずれもノーヒットでの得点であるがそれもそのはず、名古屋は初回の三浦敏一の中前打以降菊矢の前に9回までノーヒットに抑え込まれる。すなわち、菊矢吉男は8四球を与えながら1安打6三振で完投、12勝目をあげる。



12年秋 金鯱vsセネタース 5回戦

11月27日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 2  2  金鯱         21勝25敗       0.457 中山正嘉 古 谷倉之助
2 0 0 0 2 0 0 1 X  5 セネタース 19勝25敗1分 0.432 伊藤次郎


勝利投手 伊藤次郎 2勝3敗
敗戦投手 中山正嘉 6勝9敗


二塁打 (セ)青木、尾茂田
三塁打 (セ)苅田


三本の犠飛


 セネタースは初回、先頭の苅田久徳が左翼線に三塁打、横沢七郎四球で無死一三塁、尾茂田叶の左前タイムリーで1点を先制してなお一三塁、中村民雄の右犠飛で2-0とする。

 セネタースは5回、先頭の今岡謙次郎が中前打で出塁、苅田が送って横沢の右前タイムリーで3-0、尾茂田の右中間二塁打で二三塁とすると中村民が再び右犠飛を打ち上げて4-0とリードを広げる。更に8回、右前打で出塁した伊藤次郎がパスボールで一挙三塁に進み、家村相太郎の右犠飛で5-0とする。

 伊藤次郎に8回まで3安打無得点に抑えられてきた金鯱は最終回、先頭の江口行男中前打、矢野槇雄四球、小林茂太死球で無死満塁、黒澤俊夫の遊ゴロの間に江口が還って1-5、スリム平川喜代美に代わる代打佐々木常助の一塁内野安打で矢野が還って2-0とするがここまで。

 伊藤次郎は5安打2四球1死球3三振の完投で2勝目をあげる。

2010年11月21日日曜日

12年秋 ジャイアンツvsイーグルス 7回戦

11月26日 (金) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 1 0 0 0 0 0 0 2 ジャイアンツ 30勝18敗      0.625 スタルヒン 成田友三郎
0 0 3 0 0 0 0 0 X 3 イーグルス 28勝18敗2分 0.609 中河美芳


勝利投手 中河美芳  13勝5敗
敗戦投手 スタルヒン 15勝8敗


二塁打 (ジ)スタルヒン、伊藤 (イ)ハリス


バッキー・ハリス、逆転二塁打


 ダブルヘッダーの第二試合、ジャイアンツは今季最終戦となる。

 ジャイアンツは2回、二死から内堀保が左前打で出塁、スタルヒンが右翼線にタイムリー二塁打を放って1点を先制する。更に3回、一死後三番伊藤健太郎が左前打、中島治康中前打で一死一二塁、筒井修の二塁ベース寄りのゴロをセカンドサム高橋吉雄が捕って自らベースを踏み中島は二封、高橋はゲッツーを狙って一塁に転送するがこれが暴投となって伊藤が生還して2-0とする。

 イーグルスは3回裏、一死後辻信夫が右前打で出塁、漆原進が左前打で続いて一死一二塁、寺内一隆の投ゴロをスタルヒンは三塁に投げるがこれが悪送球となる間に辻が還って1-2、二番ピッチャー中河美芳の遊ゴロで二死二三塁、ここでバッキー・ハリスが中越えに逆転二塁打を放って3-2とリードする。

 リードすると中河のピッチングは冴える。3回までは5安打を許したが、4回以降ジャイアンツ打線を3安打無得点に抑え、結局8安打2四球2三振の完投で13勝目。ジャイアンツは4回から登板の成田友三郎がイーグルス打線を無得点に抑える好投を見せる。

 イーグルスとしては澤村に中河をぶつけたかったところ。今のスタルヒンなら畑福でも投げ勝っていたのではないか。ダブルヘッダーに連勝して逆転二位を狙うならば澤村に中河で行くべきであったと思うが、当時は予告先発は無かったと思われますので致し方が無かったか。



12年秋 イーグルスvsジャイアンツ 6回戦

11月26日 (金) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 イーグルス  27勝18敗2分 0.600 畑福俊英
2 0 0 0 3 2 0 0 X 7 ジャイアンツ 30勝17敗    0.638 澤村栄治


勝利投手 澤村栄治    9勝5敗
敗戦投手 畑福俊英 12勝11敗


三塁打 (ジ)中島


澤村栄治、六者連続三振


 ジャイアンツに1ゲーム差(この時点ではまだ10月27日のセネタース戦が取消しになっていませんので負けにカウントすると0.5ゲーム差)に迫ってきたイーグルスとの二位攻防戦。ダブルヘッダーの第一試合はジャイアンツが調子をあげてきた澤村栄治、イーグルスは昭和9年全日本以来昨年まで澤村と苦楽を共にしてきた畑福俊英の先発。

 イーグルスは初回、先頭の寺内一隆が四球で出塁、澤村は相変わらず立ち上がりのコントロールが定まらない。二番ファースト中河美芳の投ゴロでランナーが入れ替わり、バッキー・ハリス左飛、サム高橋吉雄四球で二死一二塁とするが小島利男は三振。イーグルスとしては澤村を崩す絶好のチャンスを逃す。

 ジャイアンツは初回、先頭の呉波が右前打で出塁、こちらも前川八郎の二ゴロでランナーが入れ替わり、水原茂の遊ゴロをショート辻信夫がエラーして一死一二塁、中島治康の中飛をセンター寺内がエラーして前川に続いて水原も生還して2点を先制。翌日の読売新聞には「中島の中堅左安打性痛打に野手(寺内一隆=筆者注)よく追いすがりながらもグラブに弾いて逸した」と記されている。当時のグローブの性能では致し方がないところか。

 イーグルス打線は2回以降澤村に手も足も出ず。2回は杉田屋守二飛、畑福俊英三振、辻信夫二飛とストレートの伸びとドロップのキレを感じさせる。3回は先頭の漆原進の三ゴロを水原先輩がエラーし寺内は送りバント、ワイルドピッチで寺内を三塁に進めるが中河は三振、ハリスを投ゴロに打ち取る。4回は高橋、小島、杉田屋守から三者三振、杉田屋の三振は三振ナットアウトと記録されており、杉田屋が空振りしたドロップを内堀が捕りきれなかったものであろう。5回も畑福、辻、漆原から三者三振と6者連続三振。まだ全てを調べているわけではありませんが、私の記憶では新記録です。5回まで8三振無安打無得点。

 ジャイアンツは5回、先頭の内堀保が左前打で出塁、澤村が送って呉三振、前川四球、水原右前タイムリーで3-0、中島治康が右中間を破る三塁打を放って5-0。本日の澤村の出来では試合は決まりと言ってもよいでしょう。

 イーグルスは6回、先頭の寺内一隆が右前に初ヒット、ライト中島からの返球をセカンド筒井修が失して無死二塁、中河二打席連続三振後ハリスの左前打で二死一三塁、ここで澤村がこの日二つ目のワイルドピッチを犯して寺内が生還し1点を返す。

 ジャイアンツは6回裏、筒井中前打、内堀右前打、ライト太田健一からのバックサードが悪送球となり無死二三塁、ここで澤村が中前に弾き返して二者を迎え入れて7-1として二位の座を確定する。

 澤村は7回以降もイーグルス打線を杉田屋の左前打1本に抑えて結局、3安打3四球11三振の完投で9勝目、タイガースとの王座決定戦を残してはいるものの今季最終登板を飾る。年が明けると入営が待っており、澤村が次に公式戦のマウンドに姿を見せるのは昭和15年のこととなる。澤村は春季リーグ戦では244回を投げてワイルドピッチはゼロ、秋季リーグ戦でも140回で10月30日のタイガース5回戦初回に景浦将の打席で一つあっただけであるが、本日は二つのワイルドピッチを犯している。最後の登板で力が入ったのか、志半ばでマウンドを去るやるせなさからなのか。



12年秋 金鯱vsライオン 6回戦

11月26日 (金) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
8 0 0 1 0 0 0 0 3 12 金鯱      21勝24敗 0.467 鈴木鶴雄 古谷倉之助
0 0 0 0 2 0 0 0 1  3  ライオン 17勝28敗 0.378 近藤久 村田重治 桜井七之助


勝利投手 鈴木鶴雄 9勝7敗
敗戦投手 近藤久     3勝10敗
セーブ   古谷倉之助 2


二塁打 (金)相原
本塁打 (金)平川 1号


11人連続アウト無し


 金鯱は初回、先頭の島秀之助は遊ゴロに倒れるが、江口行男が右翼線にヒット、パスボールで二塁に進み矢野槇雄の左前打で一三塁、小林茂太四球で満塁、黒澤俊夫が押出し四球を選んで1点を先制。なお一死満塁が続き、スリム平川喜代美がが左翼ブリーチャーにグランドスラムを放って5-0。続く相原輝夫、瀬井清が連続四球、ワイルドピッチで二三塁、鈴木鶴雄の左前タイムリーで6-0、なお一死一三塁にランナーを残してライオン先発近藤久は降板、村田重治が二番手で登板する。いきなりボークで瀬井が還り7-0、島四球、江口投前内野安打で満塁、矢野押出し四球で8-0。村田が降板して三番手に桜井七之助がファーストからマウンドへ、桜井はウォーミングアップ無しでの登板と思われるが小林茂を二飛、黒澤を二ゴロに抑えてようやく金鯱の初回の攻撃が終了。打者14人で8得点、二番江口行男の第一打席から三番矢野槇雄の第二打席まで11人連続アウト無しの記録を達成する。

 打撃好調の桜井七之助はマウンドでも好投を見せ、というより金鯱が手を抜いた可能性もありますが、2回から8回までは4回の黒澤、平川、相原の三連打による1点のみに抑える。

 8点リードの金鯱は慎重な投手リレーを見せ、先発鈴木鶴雄が3回に鬼頭数雄、水谷則一に連続四球を与えたところで古谷倉之助にスイッチし、古谷は後続を3人で抑える。古谷は4回も三者凡退に抑えるが5回突如として乱れ、大友一明四球、鬼頭死球、水谷四球で無死満塁、桜井三振後、中野隆雄、柳澤騰市が連続押出し四球を選んでライオンは2点を返して2-9。

 金鯱は9回、平川中前打、相原中前打、古谷四球の一死満塁から島が中前に2点タイムリーを放ち、江口の三ゴロをサード柳澤が失してこの回3点を追加。ライオンも最終回、桜井、柳澤のヒットで1点を返すが12対3で金鯱が圧勝する。

 公式記録では2回3分の0で降板した鈴木鶴雄が勝利投手となっている。ライオンのエラーは1個のみであり、近藤久の不調が全てであった。近藤は春季リーグ戦は11勝をあげて防御率も2.38であったが、秋季リーグ戦はこれで3勝10敗、防御率は5.87でシーズンを終えることとなり、菊矢吉男が出てきたライオン投手陣で左右の二本柱と期待されていただけに残念。

2010年11月20日土曜日

12年秋 セネタースvsジャイアンツ 7回戦

11月25日 (木) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 1 2 セネタース  18勝25敗1分 0.419 野口明
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ジャイアンツ 29勝17敗    0.630 スタルヒン


勝利投手 野口明      13勝14敗
敗戦投手 スタルヒン 15勝7敗


三塁打 (セ)中村民


野口明、4安打完封


 セネタースは4回、一死後中村民雄がレフトに三塁打、翌日の読売新聞によると「ボールがスタンド下に転がり込む幸運」としている。続く野口明の二直はセカンド筒井修からサード水原茂に転送されるがこれを水原がエラーする間に中村が還って1点を先制する。

 セネタースは9回、一死後尾茂田叶が四球で出塁、中村民の右前打で一三塁とし、野口明の中犠飛で2-0と待望の追加点をあげる。

 野口明は4安打1四球8三振で今季三度目の完封。中村民雄と共に2得点に絡む。

 スタルヒンはこれで三連敗、終盤にきて調子を落としており、タイガースとの王座決定戦に不安を残す。ジャイアンツはこれで三位イーグルスに1ゲーム差に迫られ、明日のイーグルスとのダブルヘッダーに連敗するとイーグルスに二位の座を明け渡すこととなる。

12年秋 阪急vsライオン 5回戦

11月25日 (木) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 0 0 0 0 2 0 4 阪急    16勝26敗3分  0.381 笠松実 中田武夫
1 0 0 0 0 2 3 0 X 6 ライオン 17勝27敗    0.386 菊矢吉男


勝利投手 菊矢吉男 11勝10敗
敗戦投手 笠松実       3勝7敗
二塁打 (ラ)柳澤
三塁打 (ラ)鬼頭


ライオン5盗塁


 ライオンは初回、先頭の坪内道則四球、大友一明の遊ゴロでランナーが入れ替わり、鬼頭数雄四球、水谷則一の中前タイムリーで1点を先制する。桜井七之助もピッチャーを襲う内野安打で一死満塁、菊矢吉男の右飛で大友がタッチアップからホームを狙うがライト西村正夫の好返球にタッチアウト。

 阪急は2回、一死後宇野錦次、島本義文が連続四球、笠松実が右前にタイムリーを放ち1-1の同点、西村が三前にセーフティバントを決めて満塁、黒田健吾の遊ゴロの間に島本が還って2-1と逆転。

 阪急は5回まで毎回安打ながら追加点を奪えず。ライオンは6回、一死後鬼頭が右中間に三塁打、水谷四球と盗塁、阪急は笠松から中田武夫にスイッチ、二死後菊矢が左前に逆転タイムリーを放って3-2とする。更に7回、柳澤騰市が投失に生き盗塁、原一朗は三塁内野安打、サードキヨ野上清光からの送球をファースト山下実がエラーする間に柳澤が還って4-2、、原の二盗とキャチャー悪送球で無死三塁、坪内四球後二盗、大友の三ゴロで原一朗は本封となり一死一三塁、大友が走って鬼頭が右翼線に2点タイムリーを放ち6-2とリードを広げる。

 阪急は8回、宇野錦次四球、中田右前打、ここから西村、黒田、山下実が三連続四球で2点を返すが一歩足りず。

 菊矢吉男は7安打9四球3三振の完投で11勝目をあげる。

12年秋 イーグルスvs金鯱 7回戦

11月25日 (木) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 2 1 0 0 1 0 5 イーグルス 27勝17敗2分 0.614 中河美芳
0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 金鯱       20勝24敗       0.455 中山正嘉


勝利投手 中河美芳 12勝5敗
敗戦投手 中山正嘉    6勝8敗

中河美芳、完投で12勝目


 東西対抗も無事終了し、ペナントレースはいよいよ最終節に突入した。14連勝を逃したイーグルスは現在二位ジャイアンツに2ゲーム差、明日ジャイアンツとのダブルヘッダーを控えており、二位浮上のラストチャンスを求めて負けられない一戦。

 イーグルスは3回、先頭の中河美芳が中前打で出塁、辻信夫が送って二死後寺内一隆の右前タイムリーで1点を先制する。続く4回、先頭のバッキー・ハリス中前打、サム高橋吉雄左前打、一死後杉田屋守右前打、ライトからの返球が逸れる間にハリスが生還して2-0としてなお一死二三塁、中河の左犠飛で3-0とする。

 金鯱は4回裏、矢野槇雄、黒澤俊夫が連続四球、小林茂太の右前タイムリーで1-3、小林は牽制に刺されるが三塁に進んだ黒澤俊夫がホームスチールを決めて2-3とする。

 イーグルスは5回、一死後寺内四球、パスボール後中根之も四球、二死後高橋の三塁内野安打で4-2とする。更に8回、中根に代わる代打太田健一が中前にヒット、ハリスが送って一死二塁、高橋の二ゴロで三進、小島利男の一飛をファースト古谷倉之助が落球する間に太田が還って5-2とする。

 4回に1安打で2点を奪われた中河美芳は5回以降、ランナーを許しながらも無失点。結局6安打5四球6三振の完投で12勝目をあげる。

2010年11月19日金曜日

第1回東西対抗

 秋季リーグ戦はまだ終了しておらず、12月1日から王座決定戦を控えている中で、11月20日後楽園で、21日、23日甲子園で第1回東西対抗が行われた。


 本来の計画では、この時期にコースト・リーグのチーム(恐らくサンフランシスコ・シールズを予定していたのでしょう)を招いて日米対抗を行う予定にしていたのが、日米関係の険悪化から予定変更を余儀なくされた。そのため秋季リーグ戦は当初各チーム6回総当たり戦で行う予定だったのが7回総当たりに変更された。東西対抗も日米対抗の穴を埋めるために考え出された窮余の一策であった可能性が高い。また、このほか東西対抗不出場選手のみによる試合も行われています。


11月20日の先発メンバー


東軍


(七)鬼頭数雄 (四)苅田久徳 (五)水原茂 (九)中島治康 (二)バッキー・ハリス (六)サム高橋吉雄 (八)尾茂田叶 (三)永澤富士雄 (一)澤村栄治


西軍


(八)ジミー堀尾文人 (七)山下好一 (九)景浦将 (三)山下実 (四)江口行男 (五)伊賀上良平 (一)古谷倉之助 (二)三浦敏一 (六)岡田宗芳


 第一戦は澤村が6安打2死球7三振、三塁を踏ませぬ完封で東軍が14対0で完勝した。この試合では、澤村栄治とバッキー・ハリスによる我が国野球史上空前絶後のバッテリーが実現した。




11月21日の先発メンバー


西軍


(三)松木謙治郎 (四)黒田健吾 (九)山下実 (七)黒澤俊夫 (八)山下好一 (五)伊賀上良平 (二)カイザー田中義雄 (一)西村幸生 (六)岡田宗芳


東軍


(七)鬼頭数雄 (四)苅田久徳 (五)水原茂 (九)中島治康 (二)バッキー・ハリス (六)サム高橋吉雄 (八)尾茂田叶 (三)永澤富士雄 (一)野口明


 西軍は四番に黒澤を起用したが第二打席からは景浦将に代わっている。この試合は4対1で西軍が雪辱した。




11月23日の先発メンバー


東軍

(七)鬼頭数雄 (四)苅田久徳 (五)水原茂 (九)中島治康 (二)バッキー・ハリス (六)サム高橋吉雄 (八)尾茂田叶 (三)永澤富士雄 (一)澤村栄治


西軍


(三)松木謙治郎 (四)黒田健吾 (九)山下実 (七)黒澤俊夫 (八)ジミー堀尾文人 (五)伊賀上良平 (二)カイザー田中義雄 (一)西村幸生 (六)岡田宗芳


 この試合も西軍は黒澤と堀尾がすぐに山下好一と景浦将に交代している。西軍が9対2で快勝して2勝1敗で優勝した。


*東西対抗のスコアブックは残されていませんので、本日の記載は読売新聞の記事に基づいております。

12年秋 第12節 週間MVP

 今節は一日三試合が三日間だけという変則開催。タイガースが3勝0敗、セネタースが2勝0敗、ライオン、金鯱、ジャイアンツが1勝1敗、イーグルス、阪急が0勝1敗1分、名古屋が0勝3敗であった。イーグルスの14連勝を阻みジャイアンツに快勝したセネタースの健闘が光る。
 この後、第1回東西対抗を挟んで11月25日~30日まで一日三試合で最終節が行われ、12月1日から春季優勝のジャイアンツと秋季優勝のタイガースとの間で王座決定戦が行われることとなる。


週間MVP

投手部門

 ジャイアンツ  澤村栄治 3

 阪急7回戦で延長10回3安打12三振の快投を見せる。

 セネタース 浅岡三郎 1

 ジャイアンツ6回戦で初回に2安打を許したのみ、2回から9回を無安打に抑える。
 浅岡は7月1日の春季リーグ阪急6回戦でも野口明を2回からリリーフして8回までノーヒットピッチングをやっている。1年で二度の一世一代のピッチングを見せたことになる。


打撃部門

 ジャイアンツ 澤村栄治 1

 阪急7回戦で延長10回を完封し、自らサヨナラヒットを放ち、史上初の投手部門・打撃部門のW受賞を達成する。
 この選出にはかなり私情を挟んでおります。ご存知のとおり澤村はこの後昭和15年に復帰するまで2年間を兵役で棒に振ることとなります。

 ライオン 桜井七之助 1

 今節2試合で8打数5安打4得点6打点、二塁打2本、三塁打1本と爆発する。



殊勲賞

 阪急 笠松実 1

 イーグルス7回戦で5イニングを1安打無失点に抑え、同点ツーランホームランを打って引分けに持ち込む。

 セネタース 横沢七郎 1

 イーグルス7回戦で先制にして決勝の2点タイムリーを放ちイーグルスの14連勝を阻む。ジャイアンツ6回戦でも4打数2安打2打点。


敢闘賞

 タイガース 藤村富美男 1

 今節17打数6安打5得点3打点。


技能賞

 タイガース 岡田宗芳 2

 今節15打数6安打2得点3打点。













 

2010年11月18日木曜日

12年秋 セネタースvsジャイアンツ 6回戦

11月18日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 4 0 0 0 1 0 0 0 5 セネタース  17勝25敗1分 0.405 浅岡三郎
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 ジャイアンツ 29勝16敗    0.644 スタルヒン


勝利投手 浅岡三郎     4勝7敗
敗戦投手 スタルヒン 15勝6敗


二塁打 (セ)今岡
本塁打 (ジ)筒井 2号


浅岡三郎、一世一代のピッチング


 翌日の読売新聞は冒頭、「セネタースは・・・輝かしい勝利を先に名誉の戦死を遂げた中尾選手の霊前に供した」と伝えている。中尾長選手は広陵中学時代、小川利安、田部武雄、野村実等と黄金時代を作り、明治大学では俊足で鳴る名中堅手として主将を務め、入営後にセネタースと契約していたが職業野球ではプレーすることなく戦死したものである。この日の読売新聞は「三原伍長戦傷す」の見出しでジャイアンツ、三原脩の負傷も伝えている。

 ジャイアンツは初回、二番筒井修が左翼スタンドに先制ホームラン、二死後四番中島治康が左前打を放つが伊藤健太郎は三振。

 セネタースは2回、先頭の野口明が四球で出塁、浅岡三郎の送りバントはセカンド筒井からファースト永澤富士雄に送球されるが永澤が落球。ここは浅岡のプッシュバントと考えるよりは、ジャイアンツのバントシフトはセカンドが前進する形をとっていたと考える方が妥当であろう。以前は高校野球で良く見られたシフト(通常一塁手より二塁手の方が守備能力が高い)であるが最近はあまり見かけない。ワイルドピッチ後青木幸造四球で無死満塁、横沢七郎の右前タイムリーで1-1の同点、森口次郎は三振に倒れるが苅田久徳は押出し四球で2-1と逆転。このあたりはスタルヒンの乱調ぶりがうかがえる。今岡謙次郎の二ゴロで苅田は二封されるがゲッツーならずの間に三走青木が生還して3-1、尾茂田叶の右前タイムリーで4-1とする。セネタースは6回にも水原のエラーと横沢のタイムリーで1点追加。

 この日のジャイアンツはベテラン永澤富士雄と水原茂のエラーで失点を重ね、スタルヒンも精神的な弱さを見せ、タイガースとの王座決定戦を控えて不安材料が目に付く戦いぶりであった。

 浅岡三郎は2回以降ジャイアンツ打線を翻弄、三つの四球を許したのみで無安打に抑えきり、結局2安打6三振3四球の完投で4勝目をあげる。浅岡としては一世一代の好投であった。

12年秋 金鯱vsタイガース 7回戦

11月18日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
1 0 0 0 1 0 0 1  0  3  金鯱     20勝23敗     0.465 中山正嘉
0 0 3 0 0 0 0 0 1X 4 タイガース 37勝8敗1分  0.822 御園生崇男 景浦将


勝利投手 景浦将     4勝1敗
敗戦投手 中山正嘉 6勝7敗


三塁打 (タ)藤井


押出しサヨナラ


 金鯱は初回、先頭の島秀之助が四球で出塁、一死後島が二盗に成功、スリム平川喜代美の投ゴロに島が飛び出すがピッチャー御園生崇男からの送球をショート岡田宗芳がエラーして一死一三塁、黒澤俊夫の左犠飛で1点を先制する。

 2回は1安打3四球ながら無得点に終わったタイガースは3回、一死後藤村富美男が二失に生き、山口政信、景浦連続四球で一死満塁、ここで藤井勇が右中間を抜く走者一掃三塁打を放って3-1と逆転。

 金鯱は5回、先頭の中山正嘉が中前打、島は捕前内野安打、江口行男四球で無死満塁、平川の三ゴロが5-4-3と渡りゲッツーとなる間に中山が還って2-3とする。更に8回、二死後、ここ6試合で20打数1安打と当たりが止まっていることから三番から八番に下げられた矢野槇雄が意地の左前打を放ち盗塁に成功、中山が左前にタイムリーを放って3-3の同点に追い付く。

 中山は4回以降立ち直り8回までタイガース打線を2安打に抑えて同点を呼び込む。タイガースは9回から御園生崇男をライトに下げてライトから景浦将がマウンドへ。金鯱は9回、江口中飛、平川左飛後、黒澤が二塁に内野安打を放つが勝負をかけた盗塁に失敗。

 タイガースは9回、先頭の松木謙治郎が右前打で出塁、藤村もショートへの内野安打で続き無死一二塁、金鯱はバックホームに備えて肩を壊している島に代えてセンターに佐々木常助を入れる。山口の遊ゴロで藤村が二封されて一死一三塁、景浦は敬遠で一死満塁、藤井の一ゴロは3-2と渡り松木は本封、しかし伊賀上良平がサヨナラ押出し四球を選んで粘る金鯱を打っ棄る。



2010年11月17日水曜日

12年秋 ライオンvs名古屋 6回戦

11月18日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 3 4 0 2 0 0 2 13 ライオン 16勝27敗       0.372 菊矢吉男
0 1 0 1 0 0 0 0 0 2  名古屋  11勝31敗3分 0.262 木下博喜 繁里栄 田中実


勝利投手 菊矢吉男 10勝10敗
敗戦投手 田中実    2勝1敗


二塁打 (ラ)中野2、桜井、菊矢 (名)岡本
三塁打 (名)大沢


中野隆雄、5打数4安打3打点


 ライオンは初回、坪内道則中前、大友一明左前の連打と四番水谷則一の四球で一死満塁、桜井七之助のショートへの内野安打と悪送球で2点を先制する。名古屋は2回、田中実が左前打で出塁、高木茂の投ゴロを菊矢吉男がエラー、小坂三郎が右前にタイムリーを放って1-2とする。

 ライオンは3回、一死後水谷が左前打、桜井四球、菊矢左前タイムリー、中野隆雄が左翼線にタイムリー二塁打、名古屋は木下博喜から繁里栄にスイッチ、柳澤騰市死球、原一朗押出し四球で3点をあげて5-1。更に4回、先頭の大友が四球、鬼頭数雄一塁内野安打から重盗、水谷四球で無死満塁、名古屋は繁里を下げて下げてサード田中実をマウンドに上げてファースト大沢清がサードに入りファーストには岡本利三を入れる。ここで桜井が右前に2点タイムリー、菊矢の左翼線二塁打で1点追加してなお二三塁、中野の三ゴロの間に桜井が還ってこの回4点、9-1として試合を決める。

 名古屋は4回、大沢の右翼線三塁打と田中実の右翼線タイムリーで1点を返すが、ライオンは6回、桜井の二塁打と中野のタイムリー等で2点、9回にも中野の内野安打から原のタイムリー等で2点を加えて13対2で大勝。

 菊矢吉男は6安打4四球3三振の完投で10勝目をあげる。五番桜井七之助が4打数3安打3打点、六番菊矢が5打数2安打3打点、七番中野隆雄が5打数4安打3打点であった。

2010年11月16日火曜日

12年秋 阪急vsジャイアンツ 7回戦

11月17日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0 阪急             16勝25敗3分 0.390 中田武夫
0 0 0 0 0 0 0 0 0 1X  1 ジャイアンツ 29勝15敗       0.659 澤村栄治


勝利投手 澤村栄治 8勝5敗
敗戦投手 中田武夫 3勝7敗


三塁打 (ジ)中島、永澤


澤村栄治、延長10回完封、自らサヨナラ打


 阪急は初回、先頭の西村正夫が四球で出塁するが黒田健吾の遊ゴロでゲッツー。ジャイアンツは1回裏、こちらも先頭の前川八郎が四球で出塁するが筒井修の遊ゴロで二封、筒井が中田武夫の牽制に刺されて無得点。

 ジャイアンツ先発澤村栄治は4回まで西村の内野安打1本に抑え4三振を奪う好投。阪急先発中田も3回まで無安打、4回二死後中島治康に中越え三塁打を許すが後続を抑える。

 阪急は6回、先頭の西村がこの日2本目のヒットを左前に放つが黒田左飛、山下実、山下好一は連続三振に倒れて無得点。ジャイアンツは7回、先頭の伊藤健太郎左前打、白石が送って一死二塁とチャンスを迎えるが永澤富士雄、内堀保と連続内野ゴロに倒れて無得点。阪急は9回、二死後山下好一がこの日チーム3本目のヒットを放つが得点無し。9回裏のジャイアンツは三者凡退。この試合は第三試合のため延長戦に突入する。

 澤村は10回表、先頭のジミー堀尾文人をサードフライに打ち取ったかに見えたが名手水原がエラー、宇野錦次が送って一死二塁、しかし代打山田勝三郎、中田武夫が連続三振。澤村は10回まで12三振を奪う力投。阪急はキャッチャー島本義文に代打山田を送ったため10回から大原敏夫がマスクを被る。

 ジャイアンツは10回裏、先頭の永澤富士雄が右中間に三塁打を放ち、代走に平山菊二を起用。内堀の当りはピッチャーを襲い内野安打となるが平山は動けず無死一三塁、ここで左打席に入った澤村がセンターにサヨナラ打を放ってジャイアンツが1対0で勝利を収める。

 剛の澤村に対する柔の中田による投げ合いは歴史に残る名勝負といえるが残念ながら歴史に埋没してしまっている。

 中田武夫は9回3分の0を投げて5安打3四球1死球2三振。中田は前回登板の11月11日対名古屋7回戦でも5安打完封しており現在絶好調。本日もシュートが冴えて内野ゴロはエラーも含めて18を数えた。4回に伊藤健太郎に死球を与えているが、前回登板時も1死球、春季リーグ戦4月18日にタイガースを1点に抑えて完投した時も2死球を与えている。死球を与えるくらいシュートが切れているかが中田のピッチングのバロメーターとなる。

 一方澤村栄治は3安打3四球12三振、今季一番の出来で延長10回を完封し、自らサヨナラヒットで決着をつける。なお、ランナーが三塁にいるためスコアブックに残された記録は中前のシングルヒットとなっているが、翌日の読売新聞には「中堅頭上」を抜けたと記されている。
 
 1973年8月30日、江夏豊は延長11回をノーヒットノーランに抑えて自らサヨナラホームランで決着をつけた。「江夏、大バンザイ」の実況はユーチューブで見ることができます。




*澤村と中田による歴史的投げ合いを物語るスコアブック




*澤村サヨナラヒットの場面




12年秋 イーグルスvsセネタース 7回戦

11月17日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 1 0 0 1 2 0 6 イーグルス 26勝17敗2分 0.605 中河美芳 畑福俊英
0 4 0 0 2 1 0 0 X 7 セネタース 16勝25敗1分 0.390 野口明


勝利投手 野口明   12勝14敗
敗戦投手 中河美芳 11勝5敗


二塁打 (イ)杉田屋、野村 (セ)今岡、苅田
本塁打 (イ)高橋 5号


セネタースがイーグルスの14連勝を阻む


 セネタースは2回、中村民雄左前打、野口明セカンド内野安打、綿貫惣司が送って青木幸造三振で二死二三塁、ここで横沢七郎が左前打にタイムリーを放って2点を先制、今岡謙次郎右中間二塁打、苅田久徳左中間二塁打と続いて4-0とする。イーグルス先発の中河美芳は最近に無い不調でイーグルスの14連勝危うし!

 イーグルスは3回、一死後漆原進が四球で出塁、野村実中前打、寺内一隆の三ゴロで野村が二封されて一死一三塁、ここで寺内が二盗、三走漆原はタイミングを遅らせてスタートするがキャッチャー中村民は三塁に送球、漆原はホームに突っ込むがサード横沢が悪送球して漆原が生還、中根之が左前にタイムリーで続いて2-4とする。更に4回、サム高橋吉雄が右翼スタンドに第5号を叩き込んで3-4と1点差に迫る。

 しかしセネタースは5回、二死後尾茂田叶が遊失に生き中村民右前打、野口明三塁内野安打で二死満塁、ここから綿貫、青木と連続で押出し四球を選んで6-3とする。

 セネタースは6回、先頭の今岡謙次郎が左前打、苅田が右前に運んで無死一三塁、イーグルスは中河をファーストに回して畑福俊英を投入、森口次郎四球で無死満塁、尾茂田の遊ゴロで三走今岡は本封、しかし中村民の三ゴロの間に苅田が還って7-3と突き放す。

 イーグルスは7回、一死後漆原が三前にセーフティバントを決めて出塁、野村右前打、寺内中前タイムリーで4-7。更に8回、先頭の畑福が遊失に生き、杉田屋守の左中間二塁打で無死二三塁、中河は三邪飛に倒れるが漆原四球後、野村が左中間に二塁打を放って6-7、しかし寺内投ゴロ、中根は三振に倒れて追加点はならず。このま野口明が押し切りイーグルスは遂に13連勝でストップ。

 野口明は10安打を浴びながら四球1三振の完投で12勝目。イーグルスはこの日はサム高橋吉雄をショートで先発させている。秋季リーグ戦では高橋をセカンドに固定して成功してきたが何故かこの日はショートに起用した。セネタース5回の攻撃で、二死から高橋のエラーをきっかけに手痛い追加点を奪われたことが本日の敗因となった。高橋のショート起用がイーグルスのツキを変えてしまったようである。

12年秋 タイガースvs名古屋 6回戦

11月17日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 3 0 6 1 0 0 2 0 12  タイガース 36勝8敗1分   0.818  若林忠志 西村幸生
0 0 0 3 0 4 0 1 0  8   名古屋      11勝30敗3分 0.268  森井茂 西沢道夫


勝利投手 若林忠志 9勝4敗
敗戦投手 森井茂     4勝11敗


二塁打 (タ)藤村、景浦、広田
三塁打 (名)田中実
本塁打 (タ)松木 3号、田中 3号


タイガース、二試合連続2ホーマー


 タイガースは2回、藤井勇四球、カイザー田中義雄三前内野安打で一死二塁、若林忠志が右前にタイムリーを放って1点を先制、松木謙治郎四球後、藤村富美男が右中間を破って3-0とする。更に4回、先頭の田中が四球で出塁、若林の二ゴロの間に二進して岡田宗芳の左前タイムリーで4-0。更に松木がライトスタンドにツーランを放ち6-0、藤村中前打、山口政信三前内野安打から景浦将が左中間に二塁打を放って8-0、藤井の右前タイムリーで9-0とする。


 名古屋は4回裏、大沢清右前打、白木一二右前打、田中実左前打で無死満塁、高木茂の遊ゴロで田中が二封される間に1点、小坂三郎の二ゴロをセカンド藤村が失する間に二者還り3-9。
 タイガースは5回、田中の左越えホームランで10-3。名古屋は6回、白木中前打、田中の右中間三塁打、サード伊賀上良平のエラー、西沢道夫の中前タイムリー、ショート岡田のエラーで4点返して7-10。


 タイガースは8回、景浦、伊賀上の重盗で1点、広田修三のタイムリー二塁打で1点を追加。名古屋は8回裏、2四球と西沢の二ゴロに間に1点返すがここまで。名古屋もよく粘ったが終始タイガースが主導権を握り快勝。タイガースは12月初めにジャイアンツとの昭和12年度王座決定戦を控えているだけにモチベーションは落ちていない。昭和11年の洲崎決戦ではやられただけに今年はリベンジを期す。

2010年11月15日月曜日

三冠への道 ⑲ & 一騎討ち ⑮

 
 いよいよMVPとサイ・ヤング賞の発表が近づいてきましたので最終予想をさせていただきます。

 アメリカン・リーグ サイ・ヤング賞はフェリックス・ヘルナデスと予想します。21勝7敗のC.C.サバシアを差し置いて13勝12敗のヘルナンデスと予想するとは無謀にもほどがありますが、ピッチング内容を重視すればヘルナンデスと言う結論に帰結せざるをえません。この手法により、2009年ア・リーグも19勝のサバシア、バーランダー、ヘルナンデスを差し置いて16勝のザック・グレインキーと予想して的中させましたし、2007年ア・リーグも20勝のベケットを差し置いて19勝のC.C.サバシアと予想して的中させましたし、2009年ナ・リーグも19勝のウェインライトを差し置いて15勝のティム・リンスカムと予想して的中させましたし、2008年のナ・リーグも22勝のブランドン・ウェブを差し置いて18勝のティム・リンスカムと予想して(この時が一番気合が入りました)的中させています。

 すなわち、近年のサイ・ヤング賞投票においては勝利数は重要視されず、各種スタッツを重視した投票行動が特徴となっています。2008年ア・リーグのみ最多勝のクリフ・リーがサイ・ヤング賞を受賞していますが、各種スタッツに秀でていたクリフ・リーが偶々最多勝も取っただけのことです。

 それにしても13勝でサイ・ヤング賞となるともちろん過去最低勝利数(リリーフ投手を除く)となりますので、投票する方も勇気がいると思いますが、ピッチング内容を見ればフェリックス・ヘルナンデスでしょう。この内容で13勝しかできないとは、いかに打戦の援護が無かったかを如実に物語ってしまうだけに、仮に受賞となってもシアトルファンは喜んで良いのやら悲しむべきなのか複雑な心境に陥ることでしょう。マエケンですら15勝しているのですから。マエケンももし13勝だったら沢村賞はパ・リーグの誰かにいっていたでしょう。


 各種スタッツを重視すればナショナル・リーグはアダム・ウェインライトになる可能性がありますが、当ブログではロイ・ハラデーと予想します。一騎討ち①~⑭で主張しているとおり、4月から終始一貫して本命説を唱え続けてきました。4月、5月とウバルト・ヒメネスが2カ月連続月間MVPを受賞し、ヒメネス30勝説やサイ・ヤング賞決定説が渦巻いていた時にもロイ・ハラデー本命説はぶれませんでした。菅内閣にも見習ってもらいたいものです。


 アメリカン・リーグMVPはミゲール・カブレラと予想します。ジョシュ・ハミルトンに相当数の票が流れることは想像に難しくありませんが、今年のバッティング内容であればカブレラでしょう。フロリダ時代はアルバート・プホルス、ライアン・ハワードがいたため無冠に終始しましたが、ア・リーグに移った途端に本塁打王となり、今年は打点王とタイトルの常連となっています。懐の深い柔らかなスウィングに力強さも備わっているバッティングセンスは当代随一と言ってよいでしょう。

 
 ナショナル・リーグMVP争いが最も難解です。私に投票権があればロイ・ハラデーに投票しますが、サイ・ヤング賞とのW受賞は今年も厳しそうです。候補がアルバート・プホルス、ジョーイ・ボット、カルロス・ゴンザレスであることはちょっと見ている人であれば分かるでしょう。プホルスの敵は二人ではなく、三年連続というハードルの高さにあると思います。個人的には、「試合を制する一撃」が影を潜めていた今年はMVPの資格はないと考えていますが、シルバースラッガー賞とゴールドグラブ賞を取っているだけに、同じ一塁手のジョーイ・ボットは苦しくなってきたのかもしれません。

 打者有利と言われるコロラドを本拠地とするバッターにはMVP投票では票が集まらない傾向にあり、カルロス・ゴンザレスは苦しいと思います。今年ゴンザレスが選ばれるのであれば、2007年のマット・ホリデーは何故選ばれなかったのかと非難轟々となることでしょう。個人的には、首位打者をキープするために最終二試合を休んだことを許せませんのでMVPの資格は無いと考えています。というより休ませたコロラドのアホ首脳陣にお灸を据えるためにもMVPには選出するべきでは無いと考えています。こういうことをやっているからコロラドは試合球の湿度を自チームが有利になるように細工をしているのではないかと疑われるのです。
 
 ということで、敢えてジョーイ・ボットと予想させていただきます。

2010年11月14日日曜日

12年秋 タイガースvsライオン 7回戦

11月15日 (月) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 2 0 3 8 2 2 0 19 タイガース 35勝8敗1分 0.814 御園生崇男 青木正一
1 0 0 0 1 0 3 0 0  5  ライオン    15勝27敗     0.357 近藤久 大友一明 桜井七之助


勝利投手 御園生崇男 10勝0敗
敗戦投手 近藤久           3勝9敗
セーブ   青木正一 1 


二塁打 (タ)藤村、御園生2 (ラ)桜井
三塁打 (タ)藤村 (ラ)大友、桜井
本塁打 (タ)松木 2号、景浦 3号 


御園生崇男、無傷の10連勝

 
 タイガースは初回、先頭の松木謙治郎がライトスタンドに先制の第2号ホームラン、二死後景浦将もライトスタンドに第3号ホームランを放ち2点を先制する。今シーズンの全ホームラン数は先日の笠松実が100本目であり、景浦のホームランで102本となった。内訳は西宮で14本、洲崎で5本、甲子園で3本、後楽園が80本である。景浦は今季第3号であるが、これまで後楽園では一本も打っていない。恐らく景浦は「こんな箱庭みたいなところでオーバーフェンスしても何の価値もない。」と考えていたのではないか。優勝も決まり、兄貴分の松木が眼の前でライトスタンドに打ち込んだのを見て、同じところに打ち込んでやろうと洒落てみたのではないか。翌日の読売新聞は「先ず松木が右翼に本塁打を放って攻撃の火蓋を切れば景浦も同じ箇所に打ち込んでライオンの度肝を抜いた・・・」と伝えている。

 ライオンは1回裏、大友一明の左中間三塁打を水谷則一の一ゴロで還して1-2とする。
 タイガースは3回、先頭の松木が中前打で出塁、藤村富美男左前打、山口政信四球の無死満塁から、景浦が左犠飛、藤村も三塁に進み藤井勇が中犠飛で2点を追加して4-1。5回も松木からの攻撃、松木は三ゴロに倒れるが藤村の右翼線二塁打から山口の遊ゴロをショート中野隆雄が失して藤村が還り、景浦の左前打をレフト鬼頭が後逸して山口が還り三塁に達した景浦を藤井の右犠飛で還して3点追加して7-1とする。

 ライオンは5回、桜井七之助の三塁打で1点返して2-7。

 タイガースは6回、先頭の岡田宗芳が一塁内野安打、一死後藤村死球、山口四球、景浦と藤井が連続押出し四球、ライオンは近藤久が降板してセカンド大友一明がマウンドへ、広田修三に代わる代打門前真佐人が左前に2点タイムリー、御園生崇男が右翼線にタイムリー二塁打、皆川定之に代わる代打奈良友夫が中前タイムリー、ワイルドピッチで御園生が還り、岡田がこの回2安打目となる左前タイムリーと続いてこの回8点をあげて15-2とする。

 タイガースは6回から御園生がライトに入り青木正一が登板。タイガースは7回、御園生の2点タイムリー二塁打で2点を追加。ライオンは7回、桜井の2点タイムリー二塁打と中野の左前タイムリーで3点を返す粘りを見せるがタイガースは8回、藤村の中越え三塁打と青木の右犠飛で2点を追加して19-5で圧勝、優勝を決めても全く手を緩めない。

 御園生崇男は無傷の10連勝、打っても6打数3安打3打点二塁打2本。タイガースは藤村富美男が6打数3安打、岡田宗芳も6打数3安打と猛打賞3人を含む20安打の猛攻を見せる。


*写真は戦後のサイン帳に残された御園生崇男のサイン。




12年秋 名古屋vs金鯱 7回戦

11月15日 (月) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 1 0 0 0 0 2 名古屋 11勝29敗3分 0.275 松尾幸造 繁里栄
0 0 0 3 0 1 0 3 X 7 金鯱   20勝22敗       0.476 古谷倉之助 鈴木鶴雄


勝利投手 古谷倉之助 6勝4敗
敗戦投手 繁里栄        0勝7敗
セーブ   鈴木鶴雄 2


三塁打 (金)島


隠れたヒーロー、相原輝夫


 名古屋は初回、先頭の石丸藤吉が中前打で出塁するが石田政良三振の時に二盗失敗で三振ゲッツー。続く桝嘉一の左前打をレフト黒澤俊夫が後逸し桝は二塁、三塁を蹴ってホームへ向かうが中継の江口の強肩に刺されてチェンジ。

 名古屋は3回、先頭の小坂三郎がピッチャー強襲ヒット、松尾幸造の二ゴロで小坂は二封、石丸の三ゴロで松尾は二封、石田の三ゴロをサード矢野槇雄が失して二死一二塁、桝嘉一の右前打で石丸が還り1点を先制、ところが三塁に達した一走石田が三塁をオーバーランしてキャッチャー相原輝夫からの送球に刺されてチェンジ。名古屋は先制するが拙走が目立つ。

 名古屋先発の松尾幸造は立ち上がり連続四球で心配されたがその後立ち直る。ところが3回、矢野槇雄のピッチャー返しを脚に受けて退場、二番手に繁里栄を送る。急遽登板の繁里は続く黒澤俊夫を三振に仕留める。

 金鯱は4回も先頭の小林茂太が三振に打ち取られるが、続く相原が四球で出塁、二死後スリム平川喜代美が中前打、古谷倉之助四球で二死満塁、トップに返り島秀之助が左中間に走者一掃の二塁打を放ち3-1と逆転する。

 名古屋は5回、四球で出塁の石田を二塁に置いて大沢清の一飛をファースト平川が落球する間に二塁から石田が還って2-3とするが金鯱は6回、先頭の相原が四球で出塁、瀬井清の投前バントが内野安打となり無死一二塁、ここで重盗を敢行するとキャッチャー三浦敏一が三塁に高投して相原が還り4-2。金鯱は6回から病み上がりの古谷に代えて二番手に鈴木鶴雄を投入。

 名古屋は8回、先頭の黒澤が四球で出塁、小林茂左前打、瀬井左前タイムリー、平川左前タイムリー、更に鈴木の投ゴロをピッチャー重里が二塁に悪送球する間に平川が還ってこの回3点を加えて7-2とし試合を決める。

 古谷倉之助は復帰後初勝利、9月25日の対ライオン3回戦以来の勝星をあげる。リリーフ鈴木鶴雄は4イニングを4安打4四球3三振無失点に抑える。金鯱の得点は三回とも四球の走者から始まったもの。うち二回は相原輝夫が選んだもので、この日の相原の記録は2打数無安打であるが、2四球、2盗塁、2得点の活躍であった。この日のお立ち台は走者一掃の二塁打を放った島秀之助となるが、相原が選んだ2四球が最大の勝因である。



12年秋 阪急vsイーグルス 7回戦

11月15日 (月) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 1 2 0 4 阪急     16勝24敗3分 0.400 石田光彦 笠松実
0 0 0 4 0 0 0 0 0 4 イーグルス 26勝16敗2分 0.619 畑福俊英


二塁打 (阪)西村 (イ)杉田屋、中河
本塁打 (本)笠松 1号


笠松実、起死回生の同点ツーラン


 本日からシーズン終了まで一日三試合制となります。第一試合と第二試合は延長無し。本日の第一試合は11時試合開始。

 阪急先発の石田光彦は11月4日以来の登板、先発となると10月2日以来となる。阪急は初回、先頭の西村正夫が右中間に二塁打、黒田健吾が右翼線安打でつなぎ、山下実の右前タイムリーで1点を先制する。

 イーグルスは4回、先頭の中根之が四球から盗塁、一死後サム高橋吉雄四球、小島利男ショートへの内野安打で一死満塁、杉田屋守が左中間に二塁打を放ち2-1と逆転、中河美芳が左翼線に二塁打を続けて4-1とリードする。イーグルス5回の攻撃で先頭の寺内一隆が右前打を放ったところで石田は降板、笠松実がマウンドに上がって後続を抑える。

 畑福俊英は2回に石田にヒットを許した以降6回までノーヒットピッチング。イーグルス十四連勝かと思われたが阪急は7回、大原敏夫に代わる代打山田勝三郎が四球で出塁、笠松が中前打を放ち無死一二塁、西村は中飛、黒田も右飛に倒れるが山下実は四球、山下好一がセカンドに内野安打を放って2-4。更に8回、キヨ野上清光、代打重松通雄が連続三振に倒れるが島本義文が中前打で出塁、ここで好投を続ける笠松実が左翼スタンドに起死回生の同点ツーランを叩き込んで4-4とする。

 8回裏イーグルスは三者凡退、9回も両軍三者凡退で4対4の引分けに終わり、イーグルスの連勝は13でお預けとなる。

 笠松実は5イニングを投げて1安打2四球4三振で無失点に抑える好投、打っては同点ホームランの活躍であった。阪急投手陣が当りまくっているバッキー・ハリスを4打数無安打、サム高橋吉雄も3打数無安打に抑えたことが引分けに持ち込んだ要因である。