2016年2月28日日曜日

17年 大和vs朝日 15回戦


11月18日 (水) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 大和 27勝68敗10分 0.284 松本操
0 1 0 0 0 4 0 0 X 5 朝日 49勝50敗6分 0.495 林安夫

勝利投手 林安夫 32勝22敗
敗戦投手 松本操   1勝10敗

二塁打 (和)渡辺

本塁打 (和)木下 4号 (朝)浅原 4号、林 1号

勝利打点 浅原直人 3


林安夫32勝、浅原と林が連続ホームラン

 いよいよ昭和17年ペナントレースも最終日を迎えました。

 朝日は初回、先頭の坪内道則がレフト線にヒットを放つが、酒沢政夫の二ゴロで坪内は二封、岩田次男の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。

 朝日は2回、先頭の浅原直人が四球を選んで出塁、林安夫が送って一死二塁、大友一明は右飛に倒れるが、中谷順次が左前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 大和は3回、先頭の杉江文二が中前打で出塁、松本操はストレートの四球を選んで無死一二塁、しかし渡辺絢吾の送りバントがピッチャーへの小フライとなり、捕球した林が二塁に送球して「1-6B」のダブルプレー、トップに返り山田潔が四球を選ぶが、木村孝平は捕邪飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 大和は4回、先頭の木下政文がレフトスタンドに第4号同点ホームランを叩き込んで1-1と追い付く。続く小松原博喜の右飛をライト浅原が落球、金子裕が中前打を放って無死一二塁、しかし苅田久徳の送りバントは一邪飛となって失敗、杉江は三振、松本は一ゴロに倒れて同点止まり。

 大和は6回、先頭の小松原博喜が右前打、金子裕の二遊間の当りはセカンド原とショート酒沢が譲り合って内野安打となり無死一二塁、苅田の中飛をセンター坪内がピッチャー林に返球したところ、二走小松原が飛び出しており林はショート酒沢に送球してタッチアウト、「8-1-6」の併殺が完成する。松本は二ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 朝日は6回裏、一死後浅原がレフトスタンドに第4号決勝ホームラン、林もレフトスタンドに連続ホームランを叩き込んで3-1、大友の遊ゴロをショート山田が一塁に悪送球、中谷が左前打を放って一死一二塁、原秀雄の三ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、広田修三の一二塁間安打で二者還って5-1とダメ押す。

 大和は7回、先頭の渡辺が左中間に二塁打、トップに返り山田の打席で林が二塁に牽制悪送球して渡辺は三進、山田は四球を選んで無死一三塁、木村の遊ゴロでショート酒沢は二塁ベースを踏んで一走山田は二封、この時三走渡辺が飛び出しているのを見た酒沢が三塁に送球、タッチアウトとなって「6B-5」の併殺が完成する。


 酒沢政夫はこの日3つの併殺に関与したが、何れも「1-6B」、「8-1-6」、「6B-5」の変則併殺プレーであった。酒沢は昭和27年の大映時代、6月21日の毎日戦で一試合2度の三重殺に関与することとなる。この時は酒沢はセカンドを守っており、ショートはこの日の対戦相手である大和のショート山田潔であった。


 林安夫は8安打6四球1三振1失点の完投で32勝目をあげて最終戦を飾った。6回に浅原と連続ホームランも放った。2シーズンで兵役にとられて戦死することとなる林にとって、生涯唯一の本塁打である。林はこれで今季541回3分の1を投げ抜いたこととなる。現在に至るまでの日本最高記録であり、今後も更新されることはない。林がここまで投げることができたのは、複数の要因が考えられる。精神的には竹内愛一監督に心酔しており監督のために投げたこと。技術的には541と1/3イニングスで与四死球138個という抜群のコントロールを誇っていたこと。当時の野球雑誌でもそのコントロールの良さを絶賛されている。そして何より時代背景が、「どうせ戦争に連れて行かれるのだからそれまで好きな野球をやり抜きたい」というアスリートの本能を刺激したからである。



*この試合では身上のコントロールが今一であったが完投で32勝目をあげる。






*大和最終戦のオーダー。今季は27勝68敗10分に終わったが、終盤に苅田久徳が参入してチームは変わってきている。










*朝日最終戦のオーダー。昨シーズン竹内愛一監督を迎え、今季林安夫を得て49勝50敗6分と大健闘を見せた。







 

訂正のお知らせ



 名古屋の引分け数について、9月22日の「名古屋vs阪急 11回戦」以降、一つずつ少なく表示していました。9月22日以降は「3分→4分」に、10月24日の「阪急vs名古屋 14回戦」以降は「4分→5分」に、11月9日の「名古屋vs巨人 15回戦」以降は「5分→6分」に、それぞれ訂正させていただきます。


 ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします申し上げます。


 

17年 名古屋vs南海 15回戦


11月16日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 2 0 0 3 5 名古屋 39勝60敗6分 0.394 石丸進一
2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 南海     49勝55敗 0.471 清水秀雄

勝利投手 石丸進一 17勝19敗
敗戦投手 清水秀雄   4勝3敗

勝利打点 桝嘉一 4


石丸進一、2安打完投

 南海は初回、先頭の国久松一がストレートの四球で出塁、猪子利男も四球を選んで無死一二塁、岡村俊昭がセオリーどおり三前に送りバントを決めて一死二三塁、岩本義行は歩かされて一死満塁、名古屋先発の石丸進一は続く清水秀雄を一ゴロに打ち取るが、これをファースト本田親喜がエラーする間に三走国久が還って1点を先制、清水に打点は記録されていない。柳鶴震は三振に倒れて二死満塁、中野正雄が押出し四球を選んでこの回2点を先制する。

 石丸進一は初回2失点で自責点は1が記録されている。一死満塁で清水の一ゴロをファースト本田がエラー、清水に打点は記録されていないので、公式記録員は本田のエラーが無ければ三走国久は封殺されたと判断した。国久の得点は当然石丸進一の自責点ではない。二走猪子は本田のエラーが無くても三塁に進んでいるので、中野の押出し四球で猪子が得点した際は石丸進一の自責点となる。

 南海先発の清水秀雄に5回まで目安打に抑えられてきた名古屋は6回、先頭の桝嘉一の当りは遊ゴロ、これをショート長谷川善三がエラー、続く小鶴誠の遊ゴロも長谷川が連続エラーして無死一二塁、古川清蔵は捕飛に倒れるが、吉田猪佐喜が四球を選んで一死満塁、ここで石丸藤吉が左前に同点の2点タイムリーを放って2-2とする。

 名古屋は9回、一死後石丸進一がレフト線にヒット、芳賀直一も左前打を放ち、トップに返り本田親喜が四球を選んで一死満塁、桝嘉一が右前に決勝タイムリーを放って3-2、小鶴は三振に倒れて二死満塁、古川が左前にダメ押しの2点タイムリーを放ち5-2として試合を決める。


 石丸進一は2安打6四球1三振の完投で17勝目をあげる。初回は4四球と乱れたが、6回まで南海打線を無安打に抑える好投であった。石丸は前回11月12日の阪神戦でも1安打完封の好投を見せており、来季の飛躍を期待させる内容で昭和17年のシーズンを締めくくった。


 名古屋は39勝60敗6分の成績でシーズン終了、実力の割に成績は冴えなかったが、最終節は3勝1敗1分であった。




*石丸進一は今季最終戦を2安打完投で飾った。






*名古屋最終戦のオーダー。6回に石丸藤吉が同点打、9回に桝嘉一が決勝打と古川清蔵がダメ押し打を放った。





 

17年 大和vs大洋 15回戦


11月16日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 大和 27勝67敗10分 0.287 畑福俊英
0 2 0 0 0 0 0 1 X 3 大洋 60勝39敗6分 0.606 野口二郎

勝利投手 野口二郎 40勝17敗
敗戦投手 畑福俊英 32勝18敗

二塁打 (和)畑福 (大)富松2
三塁打 (大)富松

勝利打点 中村信一 1


野口二郎40勝、富松信彦は長打3本

 大洋は2回、一死後浅岡三郎が四球を選んで出塁、富松信彦が右中間に二塁打を放って一死二三塁、祖父江東一郎は浅い右飛に倒れるが、宇野錦次に代わる代打渡辺敬蔵が四球を選んで二死満塁、トップに返り中村信一が中前に2点タイムリーを放ち2-0とする。

 5回まで4安打を放ちながら無得点の大和は6回、先頭の木下政文が中前打、小松原博喜の二ゴロをセカンド佐々木光雄がエラーして無死一二塁、金子裕は中飛に倒れて一死一二塁、苅田久徳の三ゴロは「5-4-3」と転送されるが、ファースト野口明が後逸する間に三塁に進んでいた二走木下がホームに還って1-2と1点差に詰め寄る。

 大洋は6回裏、先頭の富松が右中間に三塁打、祖父江は三振に倒れるが、佐々木に代わる代打古谷倉之助が四球を選び代走に板垣茂保を起用、ここでダブルスチールを仕掛けるが三走冨松は「2-4-2」と転送されて本塁寸前タッチアウト、この回は無得点に終わった。

 大洋は8回、先頭の富松がこの日3本目の長打となる二塁打を右中間に放ち、佐々木の後のセカンドに入っている貞池広喜が四球を選び、トップに返り中村信一の左前打で一死満塁、濃人渉が中犠飛を打ち上げて3-1と突き放す。

 野口二郎は8安打2四球6三振1失点、自責点ゼロの完投、今季最終戦で40勝目をマークする。
 富松信彦が二塁打2本、三塁打1本を放って猛打賞を獲得した。



 大洋は今季60勝39敗6分でシーズンを終了、3分の2は野口二郎の勝ち星であった。


 野口二郎が記録した40勝は、昭和14年にスタルヒンがマークした42勝に次ぐ記録となった。戦後の見直し作業でスタルヒンの記録は40勝に訂正されたが、昭和36年に稲尾が42勝を記録した際に再度見直されてコミッショナー裁定により42勝に再訂正された。したがって、野口二郎の40勝は、昭和14年のスタルヒン42勝、昭和36年の稲尾42勝に次いで歴代3位の記録となっている。


 因みに、昭和14年のスタルヒンの記録を現行ルールの勝利投手の基準で見直すと、「40勝」ではなく「38勝」となる。戦後の見直し作業時の基準が現行ルールとは違っていたのか、「38勝」だと野口二郎よりも下になってしまうので「40勝」でお茶を濁したのかは定かではない。昭和17年に記録した野口二郎の40勝が、現行ルールでも40勝であることは当ブログでお伝えしてきたとおりです。





*野口二郎は最終戦で40勝目をマーク。








*大洋の今季最終戦オーダー。富松信彦が3本の長打を記録した。



 

2016年2月27日土曜日

17年 阪急vs阪神 15回戦


11月15日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急 49勝50敗6分 0.495 笠松実
2 0 0 0 4 0 0 0 X 6 阪神 52勝48敗5分 0.520 若林忠志

勝利投手 若林忠志 26勝13敗
敗戦投手 笠松実     17勝17敗

本塁打 (神)門前 1号

勝利打点 門前真佐人 2


若林忠志、3安打完封で締める

 阪神は初回、一死後山口政信が四球を選んで出塁、カイザー田中義雄の当りは右前に抜けるが、ライト小田野柏からの二塁送球で一走山口はフォースアウト、ライトゴロが記録されて二死一塁、ここで門前真佐人がレフトスタンドにツーランホームランを叩き込んで2点を先制する。

 阪神は5回、一死後塚本博睦が左前打から二盗に成功、山口が四球を選んで一死一二塁、田中の遊ゴロをショート中村栄が二塁に送球するがセカンド上田藤夫が後逸、この間に二走塚本が三塁ベースを蹴ってホームに還り3-0、なお一死一二塁から門前の当りは三ゴロ、この打球をサード黒田健吾が二塁に悪送球、二走山口が三塁ベースを蹴ってホームに還り4-0、一走田中は三塁、打者走者の門前も二塁に進んで一死二三塁、藤井勇は浅い中飛に倒れて二死二三塁、若林の三ゴロをサード黒田が一塁に送球するが、ファースト井野川利春が後逸、三走田中に続いて二走門前もホームに還って6-0とする。阪急は上田、黒田、井野川のエラーでこの回4失点。


 若林忠志は3安打2四球1三振で今季4度目の完封で26勝目、今季最終戦を飾った。


 阪神は52勝48敗5分で昭和17年のペナントレースを終了、阪急は49勝50敗6分の負越しに終わった。



*阪神最終戦のオーダー。塚本、山口、門前、藤井など、帰還兵の活躍が目立ったシーズンであった。








*阪急最終戦のオーダー。小田野柏には最後まで「小野田柏」のスタンプが押されている。






 

17年 朝日vs巨人 15回戦


11月15日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 0 0 1 0 2 朝日 48勝50敗6分 0.490 内藤幸三
0 1 0 1 0 1 0 1 X 4 巨人 72勝27敗5分 0.727 藤本英雄

勝利投手 藤本英雄 10勝0敗
敗戦投手 内藤幸三   5勝10敗

二塁打 (朝)岩田

勝利打点 呉波 10

猛打賞 (巨)青田昇 5


藤本英雄は10連勝、呉波は10個目の勝利打点

 今季残り2試合となった朝日はここまで48勝49敗6分。この試合に勝って最終戦に5割確保の望みをつなぎたいところ。

 朝日は2回、一死後岩田次男が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、広田修三は三振に倒れるが、岩田が二盗を決めて二死二塁、中谷順次が左前にタイムリーを放って1点を先制する。

 巨人はその裏、一死後楠安夫が四球で出塁、青田昇が左前に痛打を放って一死一二塁、呉波が中前に同点タイムリーを放って1-1とする。

 巨人は4回、三番伊藤健太郎、四番中島治康が連続三振、しかし楠が中前打、青田も右前打で続いて二死一二塁、ここで呉が左前に勝越しタイムリーを流し打って2-1とリードする。

 巨人は6回、二死後中島がストレートの四球で出塁、楠もストレートの四球を選んで二死一二塁、青田が右前にタイムリーを放って3-1と突き放す。

 朝日は8回、二死後浅原直人が三塁に内野安打、浅原の二盗はタイミングはアウトであったがセカンド坂本茂が落球して二死二塁、岩田が左中間に二塁打を放って2-3と1点差に追い上げる。

 巨人はその裏、一死後楠が四球で出塁、青田も四球を選んで一死一二塁、呉に代わる代打林清一の左前打で一死満塁、三好主に代わる代打小暮力三は三振に倒れて二死満塁、藤本英雄が押出し四球を選んで4-2と再度突き放して試合を決める。


 藤本英雄は5安打6四球8三振の完投でデビュー以来10連勝、藤本のデビューイヤーは10勝0敗で勝率10割であった。


 朝日先発の内藤幸三は8安打8四球と乱れ、6三振を奪う力投ではあったが、朝日の勝率5割の夢は断たれた。


 呉波が10個目の勝利打点を記録した。今季の勝利打点ランキングは、中島治康が18個でトップ、古川清蔵は11個で二位、呉は三位となった。





 

2016年2月26日金曜日

17年 大洋vs名古屋 15回戦


11月14日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 計
0 0 1 0 0 0 0 1 大洋     59勝39敗6分 0.602 重松通雄 古谷倉之助
1 0 0 0 2 0 0 3 名古屋 38勝60敗6分 0.388 西沢道夫 森井茂

勝利投手 西沢道夫     7勝11敗
敗戦投手 古谷倉之助 5勝7敗
セーブ     森井茂     2

本塁打 (大)中村民雄 1号 (名)小鶴 2号

勝利打点 なし


2本塁打の競演

 第一試合から雨模様であったが午後2時14分、杉村正一郎主審の右手が上がりプレイボール。

 名古屋は初回、二死後小鶴誠がレフトスタンドに先制ホームランを叩き込んで1-0とする。

 大洋は3回、一死後中村民雄がレフトスタンドに同点ホームランを叩き込んで1-1と追い付く。

 名古屋は5回、一死後本田親喜が左前打で出塁すると二盗に成功、桝嘉一の二ゴロの間に二走本田は三進、小鶴が四球から二盗を決めて二死二三塁、古川清蔵の当りはセカンドフライ、ところが何とセカンド宇野錦次が落球、この間に三走本田に続いて二走小鶴も還って3-1と勝ち越す。

 大洋は8回表の攻撃で2点をあげて3-3の同点に追い付いた。8回裏名古屋の攻撃は、先頭の吉田猪佐喜が左前打で出塁、ここで雨脚が激しくなり雨天コールドゲームとなった。この場合、8回の記録はなかったこととなり、名古屋が3対1で7回コールド勝ちとなる。


 名古屋先発の西沢道夫は6イニングを投げて6安打1四球1三振1失点で7勝目をあげる。7回からリリーフした森井茂は7回は三者凡退に抑えたものの8回は大洋に2点を許してリードをフイにしたが、雨に救われて8回の記録はなかったこととなり、1イニングを投げて無安打無四球無三振無失点で当ブログルールによりセーブが記録された。


 決勝点は宇野錦次の落球によるもので7回雨天コールドゲームと締まらない試合となったが、中村民雄と小鶴誠によるホームランの競演は見応えがあった。シーズンも終盤となり、聯盟はストックしておいたニューボールを卸したようで、11月18日の最終戦までホームランが出まくることとなる。




「雑記」欄に7回コールドゲームとなった経緯が書かれている。






 

2016年2月23日火曜日

17年 朝日vs南海 15回戦


11月14日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 朝日 48勝49敗6分 0.495 林安夫
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 南海 49勝54敗 0.476 清水秀雄

勝利投手 林安夫   31勝22敗
敗戦投手 清水秀雄 4勝2敗

勝利打点 酒沢政夫 4


酒沢政夫は今月3個目の勝利打点、林安夫は3安打完封

 朝日は3回、二死後坪内道則が四球を選ぶと二盗に成功、酒沢政夫が左前に先制タイムリーを放って1-0とする。これがこの試合両チーム唯一の得点となった。

 林安夫は3安打1四球無三振で今季12度目の完封、31勝目をあげる。

 南海先発の清水秀雄も5安打6四球6三振1失点の完投。


 決勝のホームを踏んだのは四球で出塁した坪内道則で、林と清水との与四球の差が明暗を分けたゲームであった。当時の「野球界」にも、林安夫のコントロールの良さについての記述が数多く見られる。この日の林の投球数は78球であった。


 決勝打を放った酒沢政夫は11月に入って3個目の勝利打点を記録。11月2日の阪神戦では延長12回決勝打、9日の南海戦では8回に逆転打と、貴重な殊勲打を連発している。


 

2016年2月21日日曜日

17年 大和vs阪急 15回戦


11月13日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 大和 27勝66敗10分 0.290 畑福俊英 石原繁三
0 0 0 1 0 0 3 0 X 4 阪急 49勝49敗6分 0.500 天保義夫 笠松実

勝利投手 笠松実     17勝16敗
敗戦投手 石原繁三 20勝26敗

二塁打 (急)井野川、中村

勝利打点 黒田健吾 9


黒田健吾決勝タイムリー

 大和は初回、一死後木村孝平が左前打で出塁、木下政文はストレートの四球で一死一二塁、しかし小松原博喜は三振、苅田久徳はサードライナーに倒れて無得点。

 大和は2回、先頭の金子裕がピッチャー強襲ヒット、阪急ベンチはここで先発の天保義夫から笠松実にスイッチ、金子の打球を受けて天保にアクシデントがあったのか。ウォーミングアップ不足の笠松は杉江文二にストレートの四球を与え、畑福俊英が送りバントを決めて一死二三塁、渡辺絢吾は二飛に倒れるが、トップに返り山田潔も四球で二死満塁、しかし木村は遊飛に倒れてこの回も無得点。

 阪急は4回、先頭の黒田健吾が四球を選んで出塁、山下好一は右飛に倒れるが黒田が二盗に成功、井野川利春のレフト線二塁打で1点を先制する。小田野柏が四球を選んで一死一二塁、大和ベンチはここで先発の畑福から石原繁三にスイッチ、池田久之は捕飛、中村栄は中飛に倒れて1点止まり。

 大和は5回、先頭の山田潔が四球を選んで出塁、木村は送りバントに失敗、山田が二盗を決めて、木下は四球、小松原もストレートの四球で一死満塁、苅田は初球から3つファウルの後三飛に倒れて二死満塁、金子がストレートの押出し四球を選んで1-1の同点とする。

 阪急は7回、先頭の中村が右越えに二塁打、笠松が中前打、トップに返り上田藤夫は浅い右飛に倒れて一死一三塁、笠松が二盗を決め、フランク山田伝が四球を選んで一死満塁、黒田がレフト線に決勝の2点タイムリーを放って3-1、一走山田伝も快足を飛ばして三塁に進み、打者走者の黒田も返球の隙を突いて二塁に進んで一死二三塁、山下好一の二ゴロの間に三走山田伝が還って4-1とする。


 急遽登板となった笠松実は8イニングを投げて4安打8四球と乱れたが1失点に抑えて17勝目をあげる。大和は13残塁であった。



 

2016年2月20日土曜日

17年 大洋vs阪神 15回戦


11月13日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 2 0 3 大洋 59勝38敗6分 0.608 野口二郎
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 阪神 51勝48敗5分 0.515 御園生崇男

勝利投手 野口二郎     39勝17敗
敗戦投手 御園生崇男 13勝16敗

二塁打 (大)野口明
三塁打 (神)野口昇

勝利打点 祖父江東一郎 2

猛打賞 (大)野口二郎 2 (神)野口昇 3


野口3兄弟が8安打

 阪神は4回、先頭の塚本博睦が右前打で出塁、続く山口政信の中前打をセンター富松信彦が後逸する間に一走塚本が一気にホームに還って1点を先制する。

 大洋は6回、一死後富松が四球を選んで出塁、中村民雄は左飛に倒れるが、野口明が左前打を放って二死一二塁、野口二郎が右前に同点タイムリーを放って1-1と追い付く。

 大洋は8回、二死後浅岡三郎がレフト線にヒット、中村信一が四球を選び、ワイルドピッチで二者進塁、宇野錦次に代わる代打古谷倉之助は歩かされて二死満塁、ここで祖父江東一郎が左前に決勝の2点タイムリーを放ち3-1と勝ち越す。


 野口二郎は9安打1四球1三振1失点、自責点ゼロの完投で39勝目をあげる。


 この試合で大洋の野口二郎が5打数3安打、阪神の野口昇が3打数3安打を記録して兄弟で猛打賞を獲得した。大洋の野口明も4打数2安打を記録しており、3兄弟で12打数8安打であった。


 

2016年2月19日金曜日

17年 大洋vs大和 14回戦


11月12日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大洋 58勝38敗6分 0.293 古谷倉之助
2 0 0 2 1 0 0 0 X 5 大和 27勝65敗10分 0.604 石原繁三

勝利投手 石原繁三   20勝25敗
敗戦投手 古谷倉之助 5勝6敗

三塁打 (和)小松原

勝利打点 なし


石原繁三20勝目!!

 大和は初回、一死後木村孝平の当りは三ゴロ、これをサード佐々木光雄がエラーして一死一塁、木下政文は左飛に倒れるが、小松原博喜の中前打で一走木村は三進、小松原が二盗を決めて二死二三塁、苅田久徳の遊ゴロをショート濃人渉が一塁に悪送球する間に二者生還して2点を先制する。

 大洋は4回、一死後中村民雄が中前打、野口明の遊ゴロをショート山田潔が失して一死一二塁、古谷倉之助は右飛に倒れて二死一二塁、富松信彦は中前打、二走中村は三塁ベースを蹴ってホームに突進、センター渡辺絢吾からのバックホームに中村は本塁寸前でタッチアウト、このプレーがこの試合を決した。

 大和は4回裏、先頭の小松原が四球で出塁、苅田の三前送りバントをサード佐々木が一塁に悪送球、犠打エラーとなって無死二三塁、金子裕が四球を選んで無死満塁、鈴木秀雄は一邪飛、石原繁三は二直に倒れて二死満塁、しかし渡辺が押出し四球を選んで3-0、トップに返り山田もストレートの押出し四球を選び4-0とする。

 大和は5回、一死後小松原が右中間に三塁打、苅田の左前タイムリーで5-0とリードを広げる。


 石原繁三は7安打1四球1三振で今季7度目の完封、20勝目をあげる。石原は今月3度目の完封となった。


 大和はこれで今季27勝目、うち、20勝が石原繁三である。チームの勝利数に占める比率は7割4分1厘であり、現在38勝の野口二郎によるチームの勝利数(58勝)に占める比率6割5分5厘を大きく上回っている。石原が普通のチームに所属していたら、間違いなく30勝を記録していたでしょう。


 

2016年2月16日火曜日

17年 阪神vs名古屋 15回戦


11月12日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪神     51勝47敗5分 0.520  藤村隆男 玉置玉一 若林忠志 三輪八郎
3 6 0 0 0 0 0 0 X 9 名古屋 37勝60敗6分 0.381  石丸進一
 
勝利投手 石丸進一 16勝19敗
敗戦投手 藤村隆男   3勝5敗

三塁打 (名)古川

勝利打点 古川清蔵 11

猛打賞 (名)古川清蔵 3


石丸進一、1安打完封

 名古屋は初回、先頭の本田親喜が四球を選んで出塁、桝嘉一も四球を選び無死一二塁、小鶴誠は左飛に倒れるが、ダブルスチールを決めて一死二三塁、ここで古川清蔵が左中間に三塁打を放って2点を先制、阪神ベンチは早くも先発の藤村隆男から玉置玉一にスイッチ、吉田猪佐喜が四球を選んで二盗に成功、岩本章も四球で一死満塁、石丸藤吉の投ゴロの間に三走古川が還ってこの回3点を先制する。

 阪神は2回、一死後藤井勇が三遊間を破って出塁、しかし野口昇の二ゴロが「4B-3」と渡ってダブルプレー。阪神はこの藤井の左前打がこの試合唯一のヒットであった。

 名古屋は2回裏、先頭の芳賀直一が中前打で出塁、トップに返り本田は四球、桝の投前送りバントをピッチャー玉置が一塁に悪送球、犠打とエラーが記録されて無死満塁、続く小鶴のカウントがワンツーとなったところで阪神ベンチは玉置を下げて三番手として若林忠志監督がマウンドに上がるが、小鶴が押出し四球を選んで4-0、古川の右前タイムリーで5-0、吉田の二ゴロ併殺の間に三走桝が還って6-0、岩本の三塁内野安打がタイムリーとなって7-0、石丸藤吉の遊ゴロをショート野口昇がエラーして二死二三塁、石丸進一が左前に2点タイムリーを放って9-0と大量リードする。


 2点タイムリーを放って気を良くした石丸進一は3回以降阪神打線を無安打に抑え切り、1安打4四球2三振で今季3度目の完封、16勝目をあげる。石丸進一は16勝で完封が3回と完封率は低いが、3度の完封に於ける被安打は1安打、2安打、3安打である。


 当のヒーローが石丸進一なら、打のヒーローは古川清蔵であった。古川は5打数3安打3打点、三塁打1本、勝利打点と猛打賞も記録する活躍を見せた。古川は今季11個目の勝利打点、ここまで勝利打点数トップは中島治康の18個ですが、巨人は71勝で名古屋は37勝なので、チーム勝利数に占める比率は中島が2割5分4厘で古川は2割9分7厘、「勝利打点率」では古川清蔵が中島治康を上回る。





*石丸進一は1安打完封。










*石丸進一に1安打に抑え込まれた阪神打線。




 

2016年2月14日日曜日

17年 大洋vs南海 15回戦


11月10日 (火) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 大洋 58勝37敗6分 0.611 野口二郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 南海 49勝53敗 0.480 別所昭

勝利投手 野口二郎 38勝17敗
敗戦投手 別所昭       0勝1敗

二塁打 (大)野口明

勝利打点 中村民雄 1


中村民雄の決勝打を野口二郎が守り抜く

 南海は別所昭がプロ入り初登板。

 大洋は初回、先頭の中村信一が四球を選んで出塁、濃人渉が送って一死二塁、中村民雄が中前に弾き返して二走中村信一を迎え入れ1点を先制する。

 大洋先発の野口二郎はこのスミ一を守り抜き、南海打線を2安打1四球4三振に抑えて今季19度目の完封、38勝目をあげる。

 別所は9回を完投して8安打2四球3三振1失点、プロ入り初の責任投手は敗戦投手であった。


 決勝打を放った中村民雄は昭和12年にセネタースに入団して四番を打つが1年で応召し、昭和17年秋にプロ野球に戻ってきた。戦後は母校・熊本工業の監督として何度も甲子園に出場することとなる。


 熊本工業と言えば川上哲治ですが、中村民雄が昭和12年に応召してから後輩の川上が昭和13年に巨人入団し、川上が昭和17年秋に応召すると中村が5年ぶりに戦場から帰還して昭和18年もプロ野球に在籍するが、不思議な巡り会わせでプロ野球では中村民雄と川上哲治の接点はない。


 

17年 朝日vs大和 14回戦


11月10日 (火) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 朝日 47勝49敗6分 0.490 内藤幸三 林安夫
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大和 26勝65敗10分 0.286 石原繁三

勝利投手 林安夫     30勝22敗
敗戦投手 石原繁三 19勝25敗

勝利打点 なし


坪内道則が決勝本盗、林安夫は30勝目

 大和は初回、先頭の木村孝平が左前打で出塁、苅田久徳は遊飛に倒れるが、木下政文がファウル3つのツーナッシングから4球ボールを選んで四球で出塁、しかし二走木村が三盗に失敗、小松原博喜が四球を選んで二死一二塁とするが、松本操は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。結果的に木村の盗塁失敗が後々響くこととなる。

 朝日は2回、先頭の浅原直人の三ゴロをサード木下政文がエラー、内藤幸三は左飛に倒れるが、浅原が二盗に成功、早川平一が四球を選んで一死一二塁、中谷順次の二ゴロで一走早川が守備妨害、更にセカンド苅田から一塁に送球されて「×4-3」のダブルプレーが完成する。実際にどのようなプレーであったのかは読者の方々の想像にお任せいたします。

 大和は3回、先頭の渡辺絢吾が四球を選んで出塁、トップに返り木村の三ゴロで渡辺は二封、苅田が中前打、木下の遊ゴロで苅田は二封、木下が二盗を決め、小松原が四球を選んで二死満塁、しかし松本に代わる代打吉水幸夫は三振に倒れて無得点。

 大和は5回、先頭の渡辺が死球を受けて出塁、トップに返り木村が送りバントを決めて一死二塁、苅田が四球を選んで一死一二塁、しかし木下は中飛、小松原は遊飛に倒れてこの回も無得点。

 0対0のまま迎えた9回朝日の攻撃、先頭の坪内道則が四球を選んで出塁、酒沢政夫が送りバントを決めて一死二塁、岩田次男は中飛に倒れて二死二塁、坪内が三盗を決めて二死三塁、浅原は四球を選んで二死一三塁、浅原も二盗を決めて二死二三塁、ここでダブルスチールを決めて坪内が決勝の本盗を記録した。

 大和先発の石原繁三は8回を完投して3安打3四球無三振1失点ながら今季25敗目を喫した。


 朝日先発の内藤幸三は6イニングを投げて2安打5四球1死球5三振無失点、二番手の林安夫が3イニングを無安打1四球2三振無失点に抑えて今季30勝目をマークした。


 浅原直人は3盗塁、坪内道則も2盗塁を記録、この二人による9回二死二三塁からのダブルスチールが決勝点となった。「雑記」欄には「石原ボディスウィングした間重盗す。」と記されている。石原繁三はトルネード投法であったようだ。




*朝日のサヨナラ重盗は石原繁三がボディスウィングを行った隙を突いたものであった。













 

2016年2月13日土曜日

17年 阪急vs巨人 15回戦


11月10日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 1 0 0 0 0 0 0  1  阪急 48勝49敗6分 0.495 笠松実 江田孝
1 2 0 0 2 3 2 0 X 10 巨人 71勝27敗5分 0.724 須田博

勝利投手 須田博 25勝8敗
敗戦投手 笠松実 16勝16敗

二塁打 (巨)伊藤

本塁打 (急)笠松 1号 (巨)伊藤 4号

勝利打点 伊藤健太郎 8

猛打賞 (巨)中島治康(4安打) 10、青田昇 4


巨人打線爆発

 巨人は初回、二死後伊藤健太郎がレフトスタンドに先制ホームランを叩き込んで1-0とする。

 巨人は2回、先頭の楠安夫が中前打、青田昇が左前打で続き、三好主は中飛に倒れるが、小池繁雄がストレートの四球を選んで一死満塁、須田博が左前に2点タイムリーを放って3-0とする。

 阪急は3回、一死後笠松実がレフトスタンドにホームランを放ち1-3と詰め寄る。

 しかし阪急の反撃はここまでであった。

 巨人は5回、先頭の伊藤が左中間に二塁打、中島治康の中前タイムリーで4-1、楠はストレートの四球で無死一二塁、阪急ベンチはここで先発の笠松から江田孝にスイッチ、青田昇の右飛をライト小田野柏が落球して無死満塁、三好は三振に倒れるが、小池に代わる代打小暮力三の左犠飛で5-1と突き放す。

 巨人は6回、一死後白石敏男が中前打、伊藤の三ゴロで白石は二封、中島が右前打、楠がストレートの四球を選んで二死満塁、青田のセンター右へのタイムリーで6-1、三好が中前に2点タイムリーを放って8-1とリードを広げる。

 巨人は7回、一死後呉波が左前打で出塁、続く白石がレフト線にヒット、これをレフト山下好一がエラーする間に一走呉が還って9-1、伊藤は遊ゴロに倒れるが、中島が中前にタイムリーを放ち10-1としてとどめを刺す。

 大量リードに守られて須田博は6安打6四球4三振で完投、25勝目をあげる。


 中島治康は4安打、伊藤健太郎は長打2本、青田昇も3安打を放って猛打賞を獲得、巨人の安打数は17本であった。


 

2016年2月11日木曜日

17年 名古屋vs阪神 14回戦


11月10日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 2 0 0 0 0 0 0 0  0   0  2 名古屋 36勝60敗6分 0.375 西沢道夫 森井茂 石丸進一
0 0 0 0 0 0 1 1 0  0 1X  3 阪神    51勝46敗5分 0.526 若林忠志
 
勝利投手 若林忠志 25勝13敗
敗戦投手 石丸進一 15勝19敗

二塁打 (名)古川

勝利打点 藤井勇 3

猛打賞 (神)山口政信 1


山口政信猛打賞

 名古屋は2回、一死後古川清蔵が四球を選んで出塁、本田親喜が左前打、野口正明が右前打を放って一死満塁、西沢道夫が左前に先制の2点タイムリーを放ち2-0とリードする。

 阪神は6回、先頭の山口政信が左前打で出塁、カイザー田中義雄は右飛に倒れるが、門前真佐人が中前打、センター岩本章からの返球が乱れる間に二者進塁、藤井勇は歩かされて一死満塁、しかし若林忠志の投ゴロが「1-2-3」と渡ってダブルプレー。

 阪神は7回、一死後平林栄治がストレートの四球で出塁、三輪裕章は右飛に倒れるが、トップに返り塚本博睦が四球、山口も四球を選んで二死満塁、田中も押出し四球を選んで1-2、名古屋ベンチはここで先発の西沢から森井茂にスイッチ、門前は遊飛に倒れてこの回は1点差止まり。

 名古屋は8回から三番手の石丸進一をマウンドに送って逃げ込みを図るが、阪神は8回、先頭の藤井がストレートの四球で出塁、若林が送って一死二塁、野口昇は四球を選んで一死一二塁、平林の遊ゴロは「6-4」と渡って二死一三塁、三輪裕章に代わる代打玉置玉一の遊ゴロをショート小鶴誠がエラー、三走藤井が還って2-2の同点に追い付く。

阪神は11回裏、一死後山口が四球を選んで出塁、田中のレフト線ヒットで一走山口は一気に三塁に進み一死一三塁、田中が二盗に失敗して二死三塁、御園生崇男が四球を選んで二死一三塁、ここで藤井が三塁線にサヨナラ打を放って阪神が打っ棄る。


 阪神の得点は全て四球で出塁した走者が還ったもの。山口政信が猛打賞を記録し、延長11回裏には先頭打者として四球を選んでサヨナラのホームを踏む活躍を見せた。


 

17年 朝日vs南海 14回戦


11月9日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 朝日 46勝49敗6分 0.484 内藤幸三 林安夫
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 南海 49勝52敗 0.485 神田武夫

勝利投手 林安夫     29勝22敗
敗戦投手 神田武夫 24勝20敗

三塁打 (南)岩本

勝利打点 酒沢政夫 3


酒沢政夫、逆転タイムリー

 朝日は初回、先頭の坪内道則が中前打で出塁、好調・酒沢政夫が送りバントを決めて一死二塁とするが、岩田次男は一ゴロ、浅原直人は二飛に倒れて無得点。

 南海は1回裏、先頭の柳鶴震が四球からワイルドピッチで無死二塁、しかし猪子利男の送りバントをピッチャー内藤幸三がダッシュ良く飛び出して柳を三塁に刺し一死一塁、岡村俊昭はストレートの四球で一死一二塁、岩本義行は左邪飛に倒れて二死一二塁、二走猪子が内藤からの牽制に刺されてスリーアウトチェンジ。3人の走者を出しながら無得点であった。

 南海は2回、先頭の国久松一が四球で出塁、清水秀雄は左前打、長谷川善三も中前打を放って無死満塁、しかし八木進は一邪飛、神田武夫の中飛で三走国久がタッチアップからホームを狙うが、センター坪内からの好返球に刺されてスリーアウトチェンジ。南海は2イニング連続で3人の走者を出すが無得点。

 南海は3回、先頭の柳が四球を選んで出塁、猪子の投前送りバントを内藤が一塁に悪送球、犠打とエラーが記録されて無死一二塁、朝日の竹内愛一監督はここで内藤から林安夫にスイッチ、岡村の一ゴロの間に二者進塁して一死二三塁、岩本の遊ゴロで三走柳がホームを突くがショート酒沢からのバックホームにタッチアウト、国久は二飛に倒れてこの回も無得点。

 南海は5回、先頭の神田が中前打で出塁、トップに返り柳も左前打を放って無死一二塁とこの試合4度目のチャンス到来、ところが二走神田がキャッチャー広田修三からの牽制に刺されてタッチアウト、一走柳も「6-4」と送球されてタッチアウトとなって一瞬にしてチャンスを潰し、猪子も中飛に倒れて又しても無得点。神田のアウトは「2-6C」と記録されており、キャッチャー広田からサードベースカバーに入ったショート酒沢に送球されたものであり、「盗塁刺」の記録はないのでディレードスチールではないようだ。サード岩田がバント警戒と見せかけて突っ込んでウエストして二走神田を釣り出すピックオフプレーの可能性が考えられる。ショートの酒沢が三塁ベースカバーに走ってキャッチャー広田が神田をサードベースに追い詰めて刺し、二塁に向かった一走柳もショートの酒沢からセカンド原秀雄に送球されてタッチアウトとなった模様。

 南海は7回、先頭の清水が右前打、長谷川も左前打で続いて無死一二塁と5度目のチャンス、ここも八木に代わる代打別所昭が三飛、神田も二飛に倒れて二死一二塁、トップに返り柳の二遊間内野安打で二死満塁、猪子の二塁への内野安打で三走清水が還って待望の先取点をあげる。
 朝日は8回、二死後原の当りも三ゴロ、スリーアウトチェンジかと思われた瞬間サード柳が一塁に悪送球、原が二盗を決めて、坪内は四球、ここでダブルスチールを決めて二死二三塁、酒沢がライト線に逆転の2点タイムリーを放ち2-1とする。


 南海は8回裏、先頭の岩本がレフト線に三塁打を放って無死三塁と同点のチャンス、続く国久の遊ゴロをショート酒沢がファンブルするが三走岩本は動けず無死一三塁、国久が二盗を決めて無死二三塁、清水の当りは痛烈なショートライナー、三走岩本が飛び出しており「6-5」と送球されてダブルプレー、長谷川は投ゴロに倒れて万事休した。

 南海は9回も一死後神田が右前打を放って気を吐くが、トップに返り柳は右飛、猪子は中飛に倒れて朝日が逆転勝ちを収める。

 どう見ても南海が勝っていた試合であったが、サード柳鶴震の一塁悪送球、三走岩本義行のボーンヘッドなどが響き、10残塁を記録して敗れた。南海と朝日のゲーム差はゼロとなったが、勝率で南海が1厘上回っており辛うじて5位の座を守っている。


 

2016年2月7日日曜日

17年 大和vs大洋 13回戦


11月9日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大和 26勝64敗10分 0.289 広島清美
1 0 0 0 2 0 0 0 X 3 大洋 57勝37敗6分 0.606 古谷倉之助

勝利投手 古谷倉之助 5勝5敗
敗戦投手 広島清美     0勝4敗

二塁打 (和)金子 (大)中村

勝利打点 野口明 8


古谷倉之助、最後の勝利

 大洋は初回、先頭の中村信一が四球を選んで出塁、濃人渉は右飛に倒れるが浅岡三郎がライト線にヒット、更にダブルスチールを決めて一死二三塁、野口明の遊ゴロの間に三走中村が還って1点を先制する。

 大洋は5回、先頭の佐々木光雄が四球を選んで出塁、トップに返り中村がレフト線に二塁打を放ち無死二三塁、濃人は四球を選んで無死満塁、浅岡の三塁線内野安打で三走佐々木に続いて二走中村も還って3-0とリードを広げる。

 大洋の得点は中村信一の好走塁がもたらしたものであった。

 大洋先発の古谷倉之助は得意のドロップで大和打線を翻弄し、4安打2四球4三振で今季3度目の完封、5勝目をあげる。5回以降はノーヒットに抑え込んだ。


 学生時代に実績もなかった古谷はプロ野球初年度の昭和11年に金鯱に入団し、並み居る学生野球のスター選手に伍して活躍を続けてきた。昭和11年は本塁打、打点の二冠王となり打率も2位。投手としても通算56勝目をマーク、この日の完封勝利がプロでの最後の勝利となった。

 1911年生まれの古谷倉之助はこの時31歳、昭和17年を最後にプロ野球を去ることとなり、その後の消息はアマチュアの倶楽部チームを転々としたと伝わるのみである。プロ野球史上、「真の二刀流」とは、古谷倉之助を指すこととなる。


 

2016年2月6日土曜日

17年 阪急vs阪神 14回戦


11月9日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急 48勝48敗6分 0.500 天保義夫
0 0 0 0 0 0 1 0 X 1 阪神 50勝46敗5分 0.521 御園生崇男

勝利投手 御園生崇男 13勝15敗
敗戦投手 天保義夫       8勝7敗

二塁打 (急)井野川
三塁打 (神)平林

勝利打点 平林栄治 1

猛打賞 (急)フランク山田伝 4


平林栄治、決勝三塁打

 阪急は初回、先頭の上田藤夫がセーフティバントを試みるがピッチャー御園生崇男が捌いてワンナウト、フランク山田伝が中前打、黒田健吾は四球、山下好一の右邪飛で二走山田はタッチアップから三進、黒田が二盗を決め、井野川利春が四球を選んで二死満塁、続く小田野柏の打球は二塁を襲うがセカンドライナーとなってスリーアウトチェンジ。阪急の敗因は初回の無得点に求められるかもしれない。

 阪急先発の天保義夫は4回まで阪神打線を内野安打2本に抑えて無失点。5回、一死後三輪裕章に中前打を許し、トップに返り塚本博睦にも左前打を打たれて一死一二塁、しかし山口政信の痛烈な当たりはサードライナー、二走三輪裕章が飛び出しており「5-4」と送られてダブルプレー。

 阪急は4回、一死後井ノ川がレフト線に二塁打、小田野が四球を選んで一死一二塁、しかし池田久之は左飛、中村栄も一飛に倒れて無得点。

 阪急は6回、先頭の山下好一が二塁に内野安打、キャッチャーカイザー田中義雄からピッチャー御園生への返球が高く逸れる間に山下好一は二進、田中にはエラーが記録されている。井野川は四球、小田野の三前バントが内野安打となって無死満塁、しかし二走井野川がピッチャー御園生からの牽制に刺されて一死一三塁、池田に代わる代打日比野武は四球を選んで一死満塁、中村栄の二ゴロで三走山下好一は本封、天保も三飛に倒れてこの回も無得点。

 阪急に押されまくってきた阪神は7回裏、先頭の野口昇が四球を選んで出塁、ここで平林栄治が右中間に三塁打を放って野口を迎え入れ、遂に均衡が破れる。


 御園生崇男は9回も二死後上田に三塁内野安打、山田に右前打を許してピンチを迎えるが、最後は黒田を三ゴロに抑えて、8安打5四球1三振で今季4度目の完封、13勝目をあげる。


 決勝の三塁打を放った平林栄治は3年間のプロ生活で通算25安打、二塁打は4本あるが、三塁打は本日の決勝三塁打1本のみであった。平林は戦死することとなる。


 因みに、筆者の高校(神奈川軟式)、大学(東京六大学準硬式)の現役時代7年間で、三塁打は高2の時に習志野高校との練習試合で放った右中間への1本のみでした。


 

2016年2月5日金曜日

17年 名古屋vs巨人 15回戦


11月9日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 0 0 0 2 0 0  0   0   0  2 名古屋 36勝59敗6分 0.379 石丸進一
0 0 0 1 0 0 1 0 0  0   0   0  2 巨人    70勝27敗5分 0.722 川畑博 藤本英雄

二塁打 (巨)呉、中島

勝利打点 なし


延長12回引分

 名古屋の石丸進一は2失点で延長12回を完投、巨人は先発の川畑博が7イニングを2失点、自責点ゼロ、藤本英雄が5イニングを無失点に抑えて引き分ける。

 巨人は初回、二死後伊藤健太郎が左前打、中島治康は右前打、楠安夫が四球を選んで二死満塁、しかし林清一は遊ゴロに倒れて無得点。

 名古屋は2回、先頭の吉田猪佐喜がストレートの四球、古川清蔵は左飛に倒れるが本田親喜が左前打を放って一死一二塁、しかし野口正明の遊ゴロは「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 巨人は2回裏、先頭の坂本茂が中前打、小池繁雄も左前打で続いて無死一二塁、しかし川畑の送りバントンは一飛となって失敗、トップに返り呉波は二飛、白石敏男は三飛、チャンスで前節週間MVPの二人が連続凡飛を打ち上げて無得点。

 名古屋は3回、二死後石丸藤吉がストレートの四球で出塁、岩本章が左前打を放って二死一二塁、小鶴誠は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 序盤は両軍得点圏に走者を送りながら後1本が出なかった。

 巨人は4回、先頭の林が左前打を放って出塁、坂本のライト線ヒットで無死一三塁、続く小池の打席でスクイズを敢行するがウエストされて三走林はタッチアウト、トップに返り呉が左中間に二塁打を流し打って坂本が還り1点を先制する。

 4回から6回まで三者凡退を続けた名古屋は7回、先頭の吉田の三ゴロをサード小池が一塁に悪送球、古川がレフト線にヒット、本田の送りバントがファースト伊藤のエラーを誘って無死満塁、野口の二ゴロの間に三走吉田が還って1-1の同点、石丸進一がスクイズを決めて2-1と逆転に成功する。

 巨人は7回裏、先頭の呉が一塁内野安打で出塁するが二盗に失敗、白石が中前打、伊藤は中飛に倒れるが、中島の右中間二塁打で一走白石が生還、2-2の同点に追い付く。

 石丸進一は12回を完投して12安打5四球4三振2失点。川畑博は7イニングを3安打2四球1三振2失点、自責点ゼロ、藤本英雄は5イニングを2安打無四球2三振無失点、延長12回引き分けた。