2012年7月31日火曜日

15年 タイガースvs阪急 2回戦


4月14日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 タイガース 9勝9敗1分 0.500 若林忠志 三輪八郎
1 0 0 2 3 3 0 0 X  9 阪急         9勝6敗1分 0.600 浅野勝三郎

勝利投手 浅野勝三郎 1勝1敗
敗戦投手 若林忠志     5勝4敗

勝利打点 フランク山田伝 3


準完全

 浅野勝三郎が準パーフェクトを達成した。

 タイガースは初回、ジミー堀尾文人が三ゴロ、皆川定之が中飛、本堂保次は三振に倒れる。2回、カイザー田中義雄が左飛、松木謙治郎も左飛、伊賀上良平は三振に終わる。3回、若林忠志は遊ゴロ、富松信彦は一飛、山根実が四球を選び二盗に成功、しかし堀尾は三振に打ち取られる。

 タイガースは4回、皆川が右飛、本堂が中飛、田中が遊ゴロに倒れる。5回、松木は二ゴロ、伊賀上は遊直、若林は二飛に終わる。6回、富松は左飛、山根は一邪飛、堀尾は二飛に打ち取られる。
 タイガースは7回、皆川が一邪飛、本堂が二飛、田中が投ゴロに倒れる。8回、松木は右直、伊賀上は中飛、三輪八郎は三振に終わる。いよいよ無安打無得点が見えてきた。


 浅野勝三郎は9回、富松に代わる代打中田金一を捕邪飛に打ち取りあと二人、山根に代わる代打宮崎剛を中飛に打ち取りあと一人コール、最後は堀尾を中飛に打ち取り快挙を達成する。

 阪急は初回、先頭の中島喬が三前にセーフティバントを決めて出塁、上田藤夫が送ってフランク山田伝が左前に先制タイムリーを放つ。

 阪急は4回、先頭の山下実の一ゴロをファースト松木がエラー、山下好一が右前打、井野川利春が中前打を放って無死満塁、伊東甚吉が押出し四球を選び浅野の中犠飛で3-0とする。

 阪急は5回、一死後山田が中前打、黒田健吾の一ゴロを松木が二塁に悪送球、山下実は中飛に倒れるが山下好一が右前打を放って二死満塁、井野川が左前にタイムリー、伊東が押出し四球を選びフォアボール目をキャッチャー田中が捕逸して二走山下好一も還って3点追加、6-0とする。

 阪急は6回、一死後上田が左前打、山田の右前打で無死一三塁、黒田が四球を選んで無死満塁、6回表の守備から山下実に代わってファーストに入っている新富卯三郎が右前にタイムリーを放って若林をKO、代わった三輪から山下好一が右前に2点タイムリーを放って9-0とする。

 浅野勝三郎は無安打1四球4三振の準完全で今季初勝利をあげる。翌日の読売新聞によると浅野は「見事なコントロールをもって内外角を極めつけるスローカーブ」が良かったようである。


 浅野の無安打無得点は史上6人目7回目となる。1回目は昭和11年9月25日のタイガース戦で澤村栄治が4四球7三振、2回目は昭和12年5月1日のタイガース戦で澤村栄治が3四球11三振、3回目は同年7月3日のイーグルス戦でスタルヒンが3四球6三振、4回目は同年7月16日のセネタース戦で石田光彦が1四球6三振、但しこの試合では阪急に2エラーがありました。5回目は昭和14年11月3日のセネタース戦で中尾輝三が10四球6三振、6回目は昭和15年3月18日のイーグルス戦で亀田忠が9四球6三振でした。

 日本最初の完全試合は昭和25年6月28日の西日本パイレーツ戦で達成した藤本英雄ですが、本日浅野が山根実に四球を与えていなかったら日本最初の完全試合は浅野勝三郎のものとなっていた訳です。








        *浅野勝三郎は無安打1四球4三振の準完全試合を達成した。













     *無安打無得点に抑えられたタイガース打線。














*澤村栄治の1回目の無安打無得点。昭和11年10月15日発行「日本職業野球聯盟広報」第七号より。











2012年7月30日月曜日

15年 ライオンvs南海 2回戦


4月14日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10  計
0 0 0 0 1 0 0 0 0  0   1 ライオン 5勝12敗 0.294 菊矢吉男
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1X  2 南海      7勝10敗1分 0.412 清水秀雄

勝利投手 清水秀雄 3勝4敗
敗戦投手 菊矢吉男 5勝4敗

勝利打点 なし


サヨナラ暴投

 南海は初回、先頭の岩出清が左前打で出塁、岡田宗芳は右飛に倒れ国久松一の二ゴロでランナーが入れ替わり、吉川義次の右前打で国久が三塁に走って二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて1点を先制する。

 ライオン1回裏、先頭の玉腰年男が四球で出塁するが西端利郎は三振、坪内道則も三振、玉腰がディレードスチールを試みるが「1-6」と渡ってタッチアウト。

 ライオンは2回、鬼頭数雄が三振、菊矢吉男が三振、井筒研一も三振、清水秀雄が三者三振に抑える。3回先頭の伊勢川眞澄も三振で四者連続三振。牽制死を挟んで六者連続三振となった。

 ライオンは5回、先頭の松岡甲二が四球で出塁、トップに返り玉腰の一塁線バントが内野安打となって無死一二塁、西端の二飛をセカンド国久が捕球するが一塁に悪送球して二者進塁し一死二三塁とする。恐らく西端の送りバントが小フライとなってバントシフトで前進してきた国久が捕球、一走玉腰は当然リードを取っているので国久が一塁に送球したがこれが悪送球となったものでしょう。坪内道則が左前にタイムリーを放って1-1の同点に追い付く。

 ライオン先発の菊矢吉男、南海先発の清水秀雄の投げ合いは譲らず1対1のまま延長戦に突入する。

 南海は10回裏、先頭の岩出が遊撃内野安打で出塁、岡村の二ゴロをセカンド西端が二塁に送球するがショート松岡がエラー、パスボールで無死二三塁、更に菊矢のワイルドピッチで岩出が還って南海がサヨナラ勝ち。

 清水秀雄は10回を完投して5安打6四球12三振1失点、自責点0の力投をみせた。菊矢吉男も9回3分の0を6安打5四球2三振のピッチングであった。


 清水は鬼頭数雄を徹底的にマークした。2回の三振に続いて5回同点とされた一死二三塁で鬼頭を迎えて三振、7回も二死一二塁で鬼頭を迎えて三振。結局鬼頭を5打数無安打3三振に抑えた。









           *清水秀雄は菊矢吉男との投げ合いを制して3勝目をあげる。



2012年7月29日日曜日

15年 金鯱vsジャイアンツ 3回戦


4月13日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  
1 1 0 0 0 0 0 3 0  5 金鯱               6勝9敗1分 0.400 内藤幸三 中山正嘉
0 0 0 0 0 0 0 2 0  2 ジャイアンツ 11勝6敗 0.647 川上哲治

勝利投手 内藤幸三 2勝0敗
敗戦投手 川上哲治 1勝1敗
セーブ    中山正嘉 3

二塁打 (金)長島
本塁打 (金)佐々木 1号

勝利打点 佐々木常助 1


金鯱、ジャイアンツに2連勝

 昨日のイーグルス戦で途中代打を出された中島治康はスタメン落ち。川上哲治が四番ピッチャーに起用される。金鯱は元祖ジャイアンツキラーの内藤幸三が先発する。

 金鯱は初回、一死後佐々木常助が左翼スタンドに先制ホームランを叩き込んで1-0とする。

 金鯱は2回、一死後瀬井清がピッチャー強襲ヒット、新井一がツースリーから四球を選んで一死一二塁、川上の牽制球が悪送球となりバックアップのセンター林清一も後逸する間に二走瀬井がホームイン、一走新井も一気にホームを狙うが「8-6-2」と渡ってタッチアウト。

 金鯱先発の内藤幸三は4回まで4四球を与えながら無失点。2回、4回を併殺で切り抜ける。5回、一死後永澤富士雄に四球、二死後白石敏男に初ヒットを許すが水原茂を遊直に打ち取る。6回、7回も無失点でここまで1安打4四球6三振無失点。

 金鯱は8回、一死後長島進が死球を受け、古谷倉之助が左前打、森田実が四球を選んで一死満塁、瀬井の三ゴロ併殺崩れの間に長島が還って3-0、瀬井が二盗を決めて二死二三塁、新井に代わる代打野村高義の三ゴロをサード水原が一塁に悪送球する間に三走古谷に続いて瀬井も還って5-0とする。

 ジャイアンツは8回、先頭の白石がワンスリーから四球を選んで出塁、水原が中前打、パスボールで無死二三塁、千葉茂が四球を選んで無死満塁、川上が左前に2点タイムリーを放って2-5、金鯱はここで力投を続けてきた内藤に代えて中山正嘉を二番手としてマウンドに上げる。平山菊二の三ゴロで川上が二封されて一死一三塁、林清一の三ゴロは「5-4-3」と渡ってダブルプレー。

 中山は最終回、吉原正喜の四球と白石の中前打で二死一二塁のピンチを迎えるが水原を二飛に打ち取り3セーブ目。金鯱が逃げ切りジャイアンツに2連勝。ジャイアンツが敗れたことによりセネタースが首位に躍り出た。


 前日のセネタース戦から三番に抜擢された長島進が5打席3打数3安打1四球1死球の活躍を見せた。

 スタメン落ちの中島治康はこの試合で出場機会はなかった。次の試合から復帰し、今季はジャイアンツ104試合の内103試合に出場することとなるのでこの試合だけ欠場したことになる。恐らく怪我によるものではなく不振のため外されたものと考えられる。


 昭和11年には澤村栄治を抑えて初代奪三振王となり「元祖巨人キラー」として知られる内藤幸三は11年限りで兵役に就き昭和14年に戦場から復帰、昨年は勝星はなかったが今季はジャイアンツ戦に2連勝して巨人キラー振りを遺憾なく発揮している。

 グーグルで「内藤幸三」を検索するとユーチューブの画像がヒットします。これは戦後広島カープの創設に参加した時の画像です。広島創設時のメンバーには当ブログで活躍した或は活躍している白石敏男(勝巳に改名しています)、笠松実、内藤幸三、中山正嘉、森井茂、田中幸男(成豪に改名しています)、岩本章、山口政信などの名前を見ることができます。ジャイアンツ戦の2連勝はその内藤-中山のリレーで勝ち取ったものです。








          *金鯱は内藤幸三-中山正嘉のリレーでジャイアンツに2連勝。












       *昭和25年に創設された広島カープサイン色紙に残された内藤幸三のサイン(中央)。












          *同じく中山正嘉のサイン(中央下)。左隣は白石勝巳です。











15年 セネタースvsイーグルス 2回戦


4月13日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 3 2 0 1 0 0 0  6 セネタース 11勝5敗1分 0.688 浅岡三郎
0 0 0 0 0 0 0 0 1  1 イーグルス   5勝9敗1分 0.357 長谷川重一 中河美芳

勝利投手 浅岡三郎     4勝0敗
敗戦投手 長谷川重一 1勝1敗

三塁打 (セ)野口
本塁打 (セ)苅田 1号 (イ)中河 1号

勝利打点 横沢七郎 2


中河美芳、生涯唯一のホームラン

 セネタースは3回、先頭の織辺由三がワンスリーから四球を選んで出塁、トップに返り苅田久徳が左前打、横沢七郎が左前に先制タイムリーを放って1-0、野口二郎が右前にタイムリーを放って2-0としてなお無死一三塁、山崎文一の中犠飛で3-0とする。

 セネタースは4回、先頭の織辺の遊ゴロをショート山田潔がエラー、苅田が左前打、横沢が一前に送りバントを決めて一死二三塁、野口が左越えに三塁打を放って5-0とする。

 セネタースは6回、一死後苅田が左翼スタンドにソロホームランを放って6-0とダメ押す。

 セネタース先発の浅岡三郎は8回まで4安打無失点の好投を見せる。ピンチは3回だけで、先頭の清家忠太郎に左前打を許し、山田の遊ゴロで清家が二進、岡田福吉を一邪飛に打ち取るが、岩垣二郎に四球を与えて中河美芳の左前打で二死満塁、しかし谷義夫は三振に仕留める。1回の無死一塁は「4B-3」、5回の無死一塁も「4-6-3」とセネタースお得意の併殺網で切り抜ける。

 イーグルスは9回、先頭の中河がライトスタンドにホームランを放って零封を免れる。


 好調浅岡三郎は5安打2四球4三振の完投で無傷の4連勝を飾る。翌日の読売新聞に「イ軍の攻撃は浅岡のスクルウ・ボール」に徹頭徹尾苦しめられて・・・」という記述がみられる。筆者は、日本人が初めて「スクリューボール」を知ったのは1971年に日米野球で来日したボルチモア・オリオールズのマイク・クエイヤーが投た時であったと信じていたが、既に昭和15年には「スクリューボール」の存在は認識されており浅岡三郎が投げていたようである。一般的には「スクリューボール」は左腕投手がサイド気味に投げると考えられており、浅岡の「スクルウ・ボール」はシンカーであった可能性も考えられる。若林忠志がシンカーを武器にしていたことは当時の記述によく見られる。

 セネタースはこれで7連勝となって首位ジャイアンツに並んだ。セネタースの快進撃は大和球士著「真説 日本野球史」にも描かれている。しかし「投手団は野口を軸に、浅岡、村松、金子が好投した。」と書かれている。事実は当ブログが示しているとおり、浅岡三郎が投手団の軸になっている。野口二郎は本日も5打数3安打3打点を記録しているように「打撃陣の軸」になっているのが史実である。


 中河美芳が本塁打を放った。中河のバッティングは柔らかく弾き返す広角打法で、例えば昭和14年3月に40打数13安打打率4割3分3厘をマークして月間MVPを獲得した時も13安打は全てシングルヒットであった。通算1,342打数を記録する中河にとってプロ生活唯一の本塁打となった。









            *浅岡三郎は5安打完投で無傷の4連勝を飾る。










     *中河美芳の生涯唯一の本塁打を伝えるスコアカード。












2012年7月28日土曜日

柳鶴震、首位打者に躍り出る


 昭和15年4月12日は後楽園、甲子園球場で合計4試合が行われたが打撃ベストテンに大きな変動が見られた。

 開幕以来首位打者の座をキープしてきた川上哲治は3打数無安打で今季通算61打数21安打3割4分4厘3毛となって二位に落ちた。鬼頭数雄は4打数2安打をマークして今季通算64打数22安打3割4分3厘8毛で三位に付けている。今季熾烈な首位打者争いを続けることとなる二人を差し置いて、柳鶴震が3打数3安打を記録して今季通算58打数20安打3割4分4厘8毛で首位打者に躍り出た。

 四位タイには3割3分3厘で桝嘉一と大沢清の名古屋勢が並び、千葉茂が3割2分6厘で六位、岡村俊昭が3割1分4厘で七位、野口二郎が3割1分3厘で八位、中河美芳が3割1分1厘で九位、黒田健吾が2割9分6厘で十位に続いている。

 昭和15年の柳鶴震は75失策を記録することとなり年間最多失策記録のみが語られることが多いが、何故75個もエラーをしながら使われ続けたかを考える必要がある。柳は当時の選手では国久松一に次ぐ強肩であり、一時的とはいえ川上、鬼頭を凌ぐ打率をマークする程の強打の持ち主なのである。この点を無視して年間最多失策記録のみを取り上げるのはいかがなものか。

 「強打のショートの元祖は誰か」の議論では豊田泰光や藤田平、宇野勝が語られる事が多いが、柳鶴震こそが「強打のショートの元祖」と言ってよいでしょう。サム高橋吉雄も「強打のショートの元祖」とも言えますが、高橋は肩が弱くてセカンドに回ることが多かったので柳鶴震の方が相応しいでしょう。






15年 タイガースvsライオン 3回戦


4月12日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 2 0 5 0 0 8 タイガース 9勝8敗1分 0.529 木下勇 若林忠志
0 0 2 0 0 0 0 0 0 2 ライオン    5勝11敗 0.313 菊矢吉男 井筒研一


勝利投手 若林忠志 5勝3敗
敗戦投手 菊矢吉男 5勝3敗


二塁打 (ラ)坪内
三塁打 (ラ)鬼頭

勝利打点 若林忠志 1


カイザー田中好走塁

 タイガースは3回、先頭のジミー堀尾文人が四球で出塁、皆川定之の送りバントが野選を誘って無死一二塁、本堂保次は三振、カイザー田中義雄は左飛に倒れて二死二三塁、松木謙治郎が四球を選んで二死満塁、伊賀上良平の三ゴロをサード山本尚敏が一塁に悪送球する間に堀尾が還って1点を先制する。

 ライオンは3回裏、先頭の山本が四球を選んで出塁、トップに返り玉腰年男の投ゴロが「1-6-3」と渡ってダブルプレー、チャンスは潰えたかに見えたが西端利郎が右前打、坪内道則が左翼線に二塁打、レフト山根実がもたつく間に西端が還って1-1の同点、山根にエラーが記録されたので坪内には打点は記録されない。更に鬼頭数雄が右中間に三塁打を放って2-1と逆転に成功する。

 タイガースは5回、先頭の本堂の三ゴロをサード山本が一塁に悪送球、田中の送りバントが内野安打となって無死一二塁、松木は二飛に倒れて一死一二塁、ライオンここでセカンドを西端から前田諭治に交代、伊賀上が四球を選んで一死満塁、中田金一に代わる代打若林忠志の遊ゴロはショート松岡甲二からセカンド西端に送られて一走伊賀上は二封されるが西端がもたつき併殺できなかった隙に三走本堂に続いて二走田中も還って3-2と逆転、この当りで若林には2打点が記録されて3-2と逆転に成功、これが決勝点となったため若林に勝利打点が記録されることとなったが真の殊勲者は二走田中でしょう。

 タイガースはライト中田の代打に出た若林が先発の木下勇に代わって二番手としてマウンドに上がる。木下に代わって富松信彦が入ってレフト、レフトの山根が中田に代わってライトに入る。

 タイガースは7回、先頭の本堂が四球で出塁するが二盗に失敗、田中の遊ゴロをショート松岡がエラー、松木の右前打で一死一三塁、伊賀上のピッチャー強襲ヒットで4-2、若林は左飛に倒れるが富松が中前にタイムリーを放って5-2、山根の三ゴロをサード山本が二塁悪送球する間に伊賀上が還って6-2としてなお二死二三塁、トップに返り堀尾が中前に2点タイムリーを放って8-2として試合を決める。

 タイガースは12安打を放ったが全てシングルヒットであった。







澤村球場へ帰還


 昭和15年4月11日付け読売新聞は「澤村球場へ帰還」の見出しと共に「日本職業野球界最大の名投手、東京巨人軍の澤村栄治(24)君は昭和12年秋のシーズンを名残りとして翌13年1月郷里の部隊に入営・・・9日除隊となり宇治山田市岩淵町の実家に無事帰還した旨10日巨人軍市岡専務へ電報があった。」と伝えている。

 更に「澤村投手は入営中には師団対抗手榴弾投競技で師団長の前で83メートルという超人的新記録を樹立して流石職業球団随一の名投手たるにふさわしい怪腕を発揮し大いに面目を施した・・・」「・・・大別山の激戦で左手に貫通銃創を受けたが昨夏8月原隊に復帰・・・」「暫らく郷里で静養のうえ巨人軍に復帰するが懐かしの“背番号14”が後楽園に、例の胸のすくような速球と剃刀の刃のように鋭いドロップの偉力を発揮する日は近い」と伝えている。

 「澤村投手談」として「聖戦で体得した尊い試練を基礎として巨人軍に復帰の上大いに頑張る覚悟です。ただ2年余の軍隊生活で三貫匁も肥りすっかり軍隊式になったので鍛え直さなければならないと考えています。将来をよりよくするためにはこの際一切白紙に還元して再出発したいので再びプレートに起つには田舎ですっかり体を練り直し自信ができてからにしたいと思っています。」と伝えている。

 大本営発表的記述も見られるが、手榴弾投83メートルの記録は当時の新聞に書かれているので事実でしょう。一貫は「3.75キロ」なので澤村は10キロ以上肥ったことになる。これからトレーニングを積んで体を絞っていくこととなる。

 澤村栄治の伝記映画「不滅の熱球」にもこの時澤村が走り込みを続けるトレーニングシーンが見られます。1955年に公開された「不滅の熱球」は池辺良が澤村栄治、司葉子が優子夫人を演じた傑作ですがビデオ化もDVD化もされていないようなので中々見る機会がないのが残念です。深夜テレビで一度だけ見たことがあります。

 1940年に公開された「秀子の応援団長」には吉原正喜、水原茂、スタルヒン、尾茂田叶、野口二郎、景浦将他、当時の現役選手が多数出演しており、貴重な画像はユーチューブにもアップされています。川上哲治の伝記映画「背番号16」には川上自身も出演しており野球中継が雨で中止になった時などに放映されていましたが最近では見る機会もなくなりました。


 野球映画の世界では日米の差は野球技術以上に大きく、邦画では上記3作くらいしか論じる作品がありませんが洋画では「打撃王」や「フィールド・オブ・ドリームス」を始め数多くの傑作があります。

 当ブログお薦めの作品は「61*」です。ロジャー・マリスがベーブ・ルースの60号を破って61号を記録した当時は試合数の違いからマリスの記録「61」にはアスタリスクが付けられていました。アスタリスクが外されたのはマリスの死後のことです。「61*」はDVDになっていますので見ることができます。筆者も横浜のレンタルビデオ店で借りてきたものですが、「店長推薦」が貼ってありました。見る目のある店長さんですね。

 次にお薦めは「エイトメンアウト」です。ブラックソックス事件を正面から扱った日本未公開作品ですがDVD化されていますので見ることができます。「Say it ain't so Joe」は史実ではなかったとも言われていますが映画の中では効果的に使われています。「フィールド・オブ・ドリームス」もブラックソックス事件に関連した作品ではありますが、「エイトメンアウト」の方が面白い。

 まだあまり有名ではなかった頃のトミー・リー・ジョーンズがタイ・カッブを演じた「タイ・カップ」(原題「COBB」)は公開当時「タイ・カッブの人間性に迫る」という触れ込みでしたので日本では受ける訳ないねと思って見ていました。日本では理解できた人は少なかったと思いますが、筆者の米国野球史研究の基礎は「タイ・カップ自伝」(ベースボール・マガジン社)にありますのでこれも外せません。






15年 南海vs阪急 3回戦


4月12日 (金) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 1 0 0 0 0 0 0  1 南海 6勝10敗1分 0.375 清水秀雄
0 0 1 0 0 0 0 1 X  2 阪急 8勝6敗1分 0.571 石田光彦 森弘太郎

勝利投手 森弘太郎 5勝2敗
敗戦投手 清水秀雄 2勝4敗

二塁打 (南)吉川

勝利打点 黒田健吾 2


黒田健吾決勝犠飛

 南海は3回、先頭の山尾年加寿が四球で出塁、平野正太郎が左前打を放って無死一二塁、戸田与三郎が一塁線に送りバントを決めて一死二三塁、トップに返り岩出清が四球を選んで一死満塁、藤戸逸郎が投前にスクイズを決めて1点を先制する。

 阪急は3回裏、先頭の伊東甚吉が四球で出塁、石田光彦が捕前に送りバントを決めて一死二塁、トップに返り中島喬の打席で清水秀雄がワイルドピッチ、二走伊東が一気にホームに還って1-1の同点とする。翌日の読売新聞によると「清水のドロップが捕手の靴に当って遠く本部付近へ転々する暴投・・・」とのこと。戦前の甲子園球場はファウルグラウンドが広く、キャッチャー吉川義次のスパイクに当って跳ね上がったボールがバックネットまでゆっくりと転がって行く間に伊東が二塁から還ってきたようだ。

 4回以降阪急打線は清水に内野安打1本に抑えられて7回まで無得点が続く。

 阪急は8回、先頭の中島が右前打で出塁、上田藤夫が一前に送りバントを決めて一死二塁、フランク山田伝の左前打で一死一三塁、黒田健吾の左犠飛で2-1と勝ち越す。

 阪急先発の石田光彦は4回まで南海打線を3安打1失点に抑える。5回、一死後戸田与三郎に四球を与え、岩出清に中前打を許して一死一二塁としたところで二番手の森弘太郎と交代、藤戸の遊ゴロをショート上田が失して一死満塁とされるが国久松一を右飛、清水を二ゴロに抑える。

 森は6回、先頭の吉川に左前打を許し末崎隆行の送りバントで一死二塁とされるが山尾を右飛、平野を三ゴロに抑え、7回、8回も無安打に抑える。

 1点のリードを許した南海は9回、二死後戸田に代わる代打深尾文彦が左前打を放つが岩出が左飛に倒れて阪急が接戦を制す。

 戸田与三郎がプロの世界に身を置いたのは昭和15年だけのこととなる。通算44打席30打数1安打で引退することとなるが13四死球を記録しており四球選びの名人である。通算犠打数は1つだけであるが3回に決めた送りバントがそれである。







*阪急3回の攻撃で伊東甚吉がワイルドピッチで二塁からホームに還った場面。清水のドロップがキャッチャー吉川のスパイクに当って大きく跳ね上がりバクネットまで転々とする間に伊東が二塁から生還した。当時の甲子園球場の写真を見るとファウルグラウンドが広いことが分かる。












2012年7月26日木曜日

15年 ジャイアンツvsイーグルス 1回戦


4月12日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  
0 0 0 0 2 0 0 0 0  2 ジャイアンツ 11勝5敗 0.688 中尾輝三 スタルヒン
0 0 0 1 0 0 0 0 0  1 イーグルス     5勝8敗1分 0.385 亀田忠

勝利投手 中尾輝三 2勝3敗
敗戦投手 亀田忠    4勝5敗
セーブ   スタルヒン 1

二塁打 (ジ)白石
三塁打 (イ)寺内

勝利打点 水原茂 1


千葉が同点打、水原が決勝打

 ジャイアンツは初回、先頭の千葉茂が右前打で出塁するが後続なく無得点。2回、先頭の白石敏男がセンター右奥に二塁打、平山菊二は守備妨害で一死二塁、ワイルドピッチで一死三塁、林清一の右飛で白石はタッチアップからホームを突くがライト谷義夫からのバックホームにタッチアウトとなってダブルプレー。3回、先頭の吉原正喜から中尾輝三、千葉と3連続四球で無死満塁、しかし水原は浅い中飛、中島治康の投ゴロは「1-2-3」と渡って2イニング連続ダブルプレー。4回、先頭の川上哲治が四球で出塁、白石の遊ゴロは「6-4-3」と渡って3イニング連続ダブルプレー、平山も遊ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 イーグルスは初回、先頭の岡田福吉が四球で出塁、岩垣二郎の投ゴロでランナーが入れ替わり、中河美芳、谷が連続四球を選んで一死満塁、しかし亀田忠は三振、寺内は投ゴロに倒れる。3回、一死後岩垣が四球、中河が右前打を放って一死一二塁、しかし谷は右飛、亀田は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 イーグルスは4回、先頭の寺内が左中間に三塁打、竹内功がストレートの四球で無死一三塁、清家忠太郎は二邪飛に倒れて一死一三塁、山田潔が二塁前にスクイズを決めて1点を先制する。

 ジャイアンツは5回、一死後吉原が三塁に内野安打、中尾が2打席連続四球を選んで一死一二塁、トップに返り千葉が右前に同点タイムリーを放って1-1、水原が中前にタイムリーを放って2-1と逆転に成功、これが決勝打となった。

 ジャイアンツ先発の中尾は5回までに6四球を与え、イーグルス先発の亀田は5回まで5四球を与えた。

 ジャイアンツは8回からスタルヒンをリリーフに投入、スタルヒンは2イニングを1安打1四球1三振無失点に抑えて千葉茂の同点打と水原茂の決勝打を守り切ってジャイアンツが逃げ切る。但し中島治康と川上哲治は無安打、中島には第三打席で楠安夫が代打に起用された。









*千葉茂と水原茂のタイムリーで2点をあげたジャイアンツ打線。中島治康には5回の第三打席で楠安夫が代打に送られた。









2012年7月25日水曜日

15年 金鯱vsセネタース 2回戦


4月12日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 3 0 0 0 0 0 0 0   3  金鯱            5勝9敗1分 0.357 松元三彦 中山正嘉
0 0 0 4 0 4 0 2 X 10 セネタース 10勝5敗1分 0.667 村松長太郎 野口二郎

勝利投手 野口二郎 5勝2敗
敗戦投手 中山正嘉 1勝5敗

二塁打 (セ)佐藤、柳
三塁打 (セ)柳
本塁打 (金)松元 1号

勝利打点 なし


セネタース6連勝

 金鯱は松元三彦が先発、6連勝を狙うセネタースは村松長太郎が先発する。

 金鯱は2回、先頭の古谷倉之助が左前打で出塁、森田実がストレートの四球を選んで無死一二塁、瀬井清の三ゴロは「5-4-3」と渡って二死三塁、野村高義が四球を選んで二死一三塁、ピッチャー松元がレフトスタンドにスリーランホームランを叩き込んで3点を先制する。

 セネタースは2回、先頭の柳鶴震が四球で出塁、佐藤武夫が左中間に二塁打を放ち村松が四球を選んで無死満塁、織辺由三のショートライナーに二走佐藤が飛び出しショート濃人渉が二塁ベースに入って無補殺併殺、苅田久徳は左飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 3点をリードした金鯱は3回から先制スリーランを放った松元に代えて中山正嘉をリリーフに送る。

 セネタースは4回、先頭の柳が右前打、佐藤は三邪飛に倒れるが村松が右前打、織辺は三振に倒れるがトップに返り苅田が左前にタイムリーを放って1-3、横沢七郎が右前にタイムリーで続いて2-3として苅田が三塁に進み横沢が二盗を決めて二死二三塁、野口二郎の遊ゴロをショート濃人が一塁に悪送球する間に三走苅田に続いて横沢も還って4-3と逆転する。

 1点リードしたセネタースは先発の村松に代えていつも通り野口をリリーフに送る。

 セネタースは6回、一死後苅田が四球を選んで出塁、横沢が中前打、野口も四球を選んで一死満塁、山崎文一は三振に倒れて二死満塁、ここで小林茂太がセンター右に2点タイムリーを放って6-3、柳が右中間に三塁打を放って8-3とする。

 セネタースは8回、先頭の山崎の遊ゴロをショート濃人がエラー、小林がストレートの四球を選んで無死一二塁、柳の右翼線の二塁打で9-3、一死後石井豊が左前にタイムリーを放って10-3とする。


 “戦前最高のクラッチヒッター”小林茂太が2打点、“強打の失策王”柳鶴震が3打点をあげてセネタースが6連勝を飾った。

 結果論で言うと先制スリーランを放った先発の松元三彦を2回で降ろして中山正嘉をリリーフに送った金鯱の継投策が失敗であった。中山は25勝をあげた昨年ほどのキレがなく5敗目を喫した。




     *6連勝と波に乗るセネタース打線。











2012年7月24日火曜日

スタンディングオベーション


 今日は珍しく(?)仕事が忙しく、基本的にテレビは見ないので朝のニュースも知らず、イチローのヤンキース移籍を知ったのは夕方になってからでした。しかも既にヤンキースの一員として試合に出てヒットまで打っていました。

 通常この手の移籍の第一打席はブーイングで迎えられるものですが、シアトルのファンはスタンディングオベーションでイチローの第一打席を迎えました。イチローが見せてきた野球に対する真摯な姿勢を誰よりもよく理解していたのがシアトルのファンだった訳です。イチローの日本式お辞儀を初めて見た人が多かったのではないでしょうか。


 当ブログはイチローの成績低下を動体視力の衰えに起因していると見ています。人間の動体視力は35歳から衰え、2~3年は過去の経験則によりカバーできますが38歳頃から急速に衰えていくのが通例です。イチローと同タイプと考えられるロッド・カルー、トニー・グウィンの事例を確認してみてください。解決策はスピードの遅い球を投げるピッチャーが多い日本に戻ることですがその道をイチローが選択することはあり得ませんので多くを期待するのは酷というものですが、イチローであれば過去の事例を覆してくれるのでないかと期待させられてしまうところがイチローらしいところです。次のシアトルでは大ブーイングで迎えられることを期待しましょうか。






2012年7月23日月曜日

15年 セネタースvs南海 3回戦


4月10日 (水) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
3 2 0 0 2 0 0 1 0  8 セネタース 9勝5敗1分 0.643 金子裕 浅岡三郎
0 0 1 0 0 0 3 0 2  6 南海       6勝9敗1分 0.400 平野正太郎 政野岩夫

勝利投手 金子裕        1勝3敗
敗戦投手 平野正太郎 0勝2敗
セーブ     浅岡三郎 1

二塁打 (セ)山崎 (南)国久
三塁打 (南)清水

勝利打点 山崎文一 3


金子裕、帰還後初勝利

 セネタースは初回、先頭の苅田久徳の三ゴロをサード戸田与三郎がエラー、村松長太郎の二ゴロをセカンド国久松一もエラーして無死一三塁、野口二郎の三ゴロで三走苅田が三本間に挟まれ「5-2-5」でタッチアウトとなる間に一走村松は三塁に、打者走者の野口は二塁に進む。苅田の飛び出しは「5-4-3」のゲッツーでも1点を取るためで、サード戸田がバックホームすると三本間に挟まれて村松と野口の進塁のために時間を稼ぐ高度な走塁テクニックである。まだ1回なので戸田はゲッツーが取れる当りであったのならば二塁に投げるべきであった。一死二三塁となって四番山崎文一がセンター左奥に二塁打を放って2点を先制、柳鶴震も左前にタイムリーを放って3-0とする。

 南海は1回裏、一番岩出清、二番岡村俊昭が連続三振、国久も二飛に倒れる。セネタース先発の金子裕の力投にセネタース打線は更に奮い立った。

 セネタースは2回、先頭の金子が右前打で出塁、南海はここで先発の平野正太郎から政野岩夫にスイッチ、織辺由三の三塁内野安打で無死一二塁、苅田が投前に送りバントを決めて一死二三塁、村松は三ゴロに倒れて二死二三塁、野口が左前に2点タイムリーを放って5-0とする。

 南海は2回、先頭の清水秀雄が中越えに三塁打、しかし吉川義次は浅い左飛、山尾年加寿は二ゴロ、藤戸逸郎は遊ゴロに倒れてここも金子が踏ん張る。

 南海は3回、一死後戸田が四球で出塁、岩出の二ゴロをセカンド苅田がエラー、岡村の一ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、国久の遊ゴロをショート柳がエラーする間に戸田が還って1-5とする。

 セネタースは5回、一死後柳が中前打で出塁、佐藤武夫が右前打を放って一死一二塁、横沢七郎が四球を選んで一死満塁、金子の三ゴロをサード戸田がエラーする間に三走柳に続いて二走佐藤も還って7-1とリードを広げる。

 南海は7回、先頭の藤戸が四球で出塁、政野の遊ゴロで藤戸が二進、戸田は四球、トップに返り岩出も四球を選んで一死満塁、岡村が中前にタイムリーを放って2-7、国久が中前に2点タイムリーを放って4-7、セネタース苅田監督はここで力投を続けてきた金子は限界と見て浅岡三郎をリリーフに送る。浅岡の二塁牽制球が悪送球となって一死二三塁、しかし清水は投ゴロ、吉川も投ゴロに倒れて追加点はならず。

 セネタースは8回、先頭の織辺が四球で出塁、苅田は中飛、織辺が二盗、村松は中飛、野口の三塁内野安打で二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて8-4と突き放す。

 南海は9回、先頭の岩出が左前打で出塁、岡村は二飛に倒れるが国久が左翼線に二塁打を放って一死二三塁、清水は四球で一死満塁、吉川は浅い左飛に倒れて二死満塁、山尾に代わる代打末崎隆行が右前に2点タイムリーを放って6-8、しかし藤戸が三振に倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。


 戦場から帰ってきた山崎文一が3つ目の勝利打点を記録、こちらも戦場から戻ってきた金子裕が力投を見せて帰還後初勝利をあげる。金子は昨年8月22日の応召直前の完封勝利以来の勝利投手となった。セネタースは5連勝で首位ジャイアンツに半ゲーム差まで迫ってきた。







     *金子裕は昨年8月22日の完封勝利以来の勝星で戦場から帰還後初勝利を飾る。












     *5連勝と波に乗るセネタース打線。







2012年7月22日日曜日

15年 ライオンvsタイガース 2回戦


4月10日 (水) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 1 0 0 0 1  0   1   3 ライオン    5勝10敗 0.333 菊矢吉男
0 0 0 0 0 0 0 0 2  0   0   2 タイガース 8勝8敗1分 0.500 三輪八郎 若林忠志

勝利投手 菊矢吉男 5勝2敗
敗戦投手 若林忠志 4勝3敗

二塁打 (タ)伊賀上、本堂
三塁打 (ラ)鬼頭2

勝利打点 加地健三郎 1


加地健三郎決勝犠飛

 タイガース先発の三輪八郎に4回までパーフェクトに抑えられてきたライオンは5回、先頭の鬼頭数雄が三塁に内野安打、菊矢吉男は右飛に倒れるが広田修三の二ゴロをセカンド本堂保次がエラー、加地健三郎の遊ゴロもショート皆川定之がエラーして一死満塁、松岡甲二の三ゴロの間に三走鬼頭が還って1点を先制する。

 ライオンは6回、先頭の玉腰年男が四球で出塁、タイガースはここで先発の三輪八郎を下げて若林忠志を投入する。西端利郎が送りバントを決めて一死二塁、坪内道則は中飛に倒れ、鬼頭が四球を選んで二死一二塁、菊矢は遊ゴロに倒れて無得点。

 7回も無安打に終わったライオンは8回、先頭の山本尚敏が左前打で出塁、トップに返り玉腰年男が送りバントを決めて一死二塁、しかし西端、坪内が連続遊ゴロに倒れて無得点。

 ライオンは9回、先頭の鬼頭が左中間に三塁打、菊矢が右前にタイムリーを放って2-0とする。

 タイガースは9回裏、先頭のジミー堀尾文人が三塁に内野安打、本堂が左中間に二塁打を放って堀尾を迎え入れて1-2、カイザー田中義雄の投ゴロを菊矢が一塁に悪送球して本堂は動けず無死一二塁、松木謙治郎が送りバントを決めて一死二三塁、伊賀上良平は敬遠の四球で一死満塁、富松信彦は二飛に倒れるが若林の遊ゴロをショート松岡がエラーする間に三走本堂が還って土壇場で2-2の同点に追い付く。更に二死満塁のサヨナラのチャンスに山根実に代わって代打に土井垣武がプロ入り初出場するが一ゴロに倒れる。

 ライオンは11回、先頭の鬼頭が右越えに三塁打、菊矢は二ゴロに倒れて広田が四球を選んで一死一三塁、ここで加地健三郎が右犠飛を打ち上げて3-2と勝ち越す。

 タイガースは11回裏、先頭の松木が二塁に内野安打、更にセカンド西端の悪送球が重なって松木は二塁に進む。伊賀上良平の中飛で松木がタッチアップから三塁に進んで一死三塁、富松の二ゴロで松木がホームに突っ込むがセカンド西端からのバックホームにタッチアウト、若林が左飛に倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。

 菊矢吉男は延長11回を5安打3四球4三振の完投で5勝目をあげる。

 鬼頭数雄が4打数3安打3得点三塁打2本。ライオンの得点は全て鬼頭がホームを踏んだものである。これで今季通算60打数20安打3割3分3厘で野口二郎、大沢清と並んで打撃ベストテン三位タイに浮上してきた。


 殊勲の決勝犠飛を放った加地健三郎は公式記録が残っているのは昭和15年だけで通算8打点をあげている。その後10年間の消息は不明であるが、出場記録こそないものの昭和25年の巨人の登録メンバーにその名を見ることができる。今季のライオンでの背番号は20番であったが昭和25年の巨人では27番のようである。









             *菊矢吉男は延長11回を5安打完投で5勝目をあげる。











*延長11回の接戦を制したライオン打線。加地健三郎に犠飛が1、鬼頭数雄に3得点が記録されている。











15年 南海vsタイガース 1回戦


4月9日 (火) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 1 0 0 0 1 0  2 南海      6勝8敗1分 0.429 清水秀雄
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 タイガース 8勝7敗1分 0.533 木下勇

勝利投手 清水秀雄 2勝3敗
敗戦投手 木下勇     3勝4敗

二塁打 (南)清水

勝利打点 清水秀雄 3


野球は一人でもできる

 清水秀雄の真骨頂とも言える試合であった。

 南海は3回、一死後国久松一が三塁に内野安打、岡村俊昭の一ゴロをファースト松木謙治郎が二塁に送球するがこれが悪送球となって一死一二塁、清水秀雄が左前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 南海は8回、二死後国久が四球を選んで出塁、国久が二盗を決めて岡村が四球を選んで二死一二塁、清水が左中間に二塁打を放って2-0とする。

 清水は投げてもタイガース打線を1回~3回までパーフェクトピッチング。4回二死から本堂保次に初ヒットを許すがカイザー田中義雄を二ゴロに打ち取る。5回は2四球で二死一二塁とするが森国五郎を三振に打ち取る。7回、一死後伊賀上良平に左翼線ヒットから盗塁を許して一死二塁とするが中田金一、木下勇を連続三振に仕留める。9回、先頭の田中が三塁内野安打、松木を四球で歩かせて無死一二塁のピンチを招くが伊賀上を左飛、中田に代わる代打若林忠志を三振、木下に代わる代打藤村隆男を連続三振に斬って捨てる。

 清水秀雄は5安打3四球9三振で開幕戦以来2度目の完封で2勝目をあげる。


 翌日の読売新聞は清水を絶賛している。「南海清水は天馬空を征く快心のピッチングを示し強敵タイガースを堂々5安打無得点に抑えあっぱれ大リーグ入り最初の力投を示した。事実この日清水が颯爽と渾身の力を揮って投げ込むオーバースローのドロップは懸河の勢いを見せ、更に絶妙無類の制球力で疾風を捲いて投ずる直球また打者の肺腑を抉る切れ味を以てタ軍打者を奔殺し完全無欠一点非の打ち所のない好投を続けた。而も清水は自軍の獲得した勝利得点2の悉くを自ら放った殊勲の適時安打によって叩き出し南海快勝の栄誉を独占する大活躍であった。」

 当時ヒーローインタビューがあれば、江夏より33年早く「野球は一人でも出来る」と答えていたのではないでしょうか。弱体化した南海守備陣もこの日は無失策でした。







               *清水秀雄は5安打完封で2勝目をあげる。










     *清水秀雄は打っても2本のタイムリーで南海全得点となる2打点をあげる。









15年 セネタースvsライオン 4回戦



4月9日 (火) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 2 0 0 0 2 0 0 0  4 セネタース 8勝5敗1分 0.615 村松長太郎 野口二郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 ライオン     4勝10敗 0.286 井筒研一 福士勇

勝利投手 村松長太郎 1勝0敗
敗戦投手 井筒研一     0勝1敗
セーブ      野口二郎 1

勝利打点 山崎文一 2


セネタース4試合連続シャットアウト勝ち

 セネタースは2回、先頭の小林茂太が右前打で出塁、柳鶴震の右前打で小林が三塁に達して無死一三塁、山崎文一が左前に先制タイムリーを放ち1-0、柳が三塁に達してなお無死一三塁、ライオンはここで早くも先発の井筒研一に代えて福士勇をリリーフに送る。村松長太郎の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってゲッツーとなる間に三走柳が還って2-0とする。

 セネタースは6回、一死後小林が死球を受けて代走に西端利郎を起用、柳が四球を選んで一死一二塁、山崎の右飛で二走西端と一走柳がタッチアップから進塁して二死二三塁、村松が右前に2点タイムリーを放って4-0とする。

 セネタース先発の村松長太郎は5回までライオン打線を2安打1四球1三振無失点に抑える。6回から村松はセンターに回りファーストの野口二郎がマウンドに上がる。野口は4イニングを2安打無四球3三振無失点に抑えて6日のライオン戦に続いて村松-野口の完封リレーとなった。

 セネタースはこれで4試合連続シャットアウト勝ちとなった。浅岡三郎の完封が2回、村松-野口の完封リレーが2回である。


 勝利投手となった村松長太郎はこの後野手としての出場が多くなる。本日の試合でも6回に放った2点タイムリーが勝負を決めた。村松がプロで残した通算成績は1勝0敗、すなわち本日の1勝がプロでの唯一の勝利となる。村松は昭和17年まで現役を続けて応召し戦死することとなる。

 苅田久徳の自伝「天才内野手の誕生」に村松長太郎と野口二郎に触れている場面が書かれている。「同時入団の村松長太郎も甲子園優勝投手。その村松をはるかにしのぐ快速球がビシッ、ビシッと決まるのだ。それはそうだ。格差がはっきり出てしまう。・・・」村松がプロでは打者として生きていこうと考えたのは、投手としては同期の野口二郎にはかなわないという気持ちがあったからかもしれない。








          *セネタースは4試合連続シャットアウト勝ち。村松長太郎はプロでの唯一の勝利を記録した。









2012年7月21日土曜日

三冠への道 2012 ③


 当シリーズの主役と期待していたマット・ケンプは何と2度のDL入りで圏外に去りました。復帰後は活躍しており18日のフィリーズ戦ではサヨナラホームランを放ちましたがこれが13号というのが悲しいところです。

 4月は給料泥棒のレッテルを貼られていたアルバート・プホルスが復活しました。5月1日付けブログ「三冠への道 2012 ①」では「但し4月はオープン戦と思っておいた方がいいので帳尻は合わせてくるでしょうからここでのカラ売りは禁物です。ジョシュ・ハミルトンが86打数34安打25打点9本塁打で打率2位、打点と本塁打はトップの準三冠で4月を終えましたが本日も腰痛で休んでいるように年間を通して働いたことはないのでむしろハミルトン売り・プホルス買いの裁定ポジションを組んでみたい。」とさせていただきましたがこの裁定取引は大幅利益となっています。4月は92打数20安打2割1分7厘、4打点0本塁打にすぎなかったプホルスは5月は113打数30安打2割6分5厘24打点8本塁打、6月は95打数30安打3割1分6厘19打点4本塁打、7月はここまで58打数20安打3割4分5厘10打点5本塁打で7月20日現在358打数100安打2割7分9厘57打点17本塁打として11度目の3割30本100打点が見えてきました。一方、ハミルトンは4月のプホルス以上の不振にあえいでいます。私が期待していた得意のDL入りこそまだありませんが。

 僅かながらライアン・ブラウンに三冠のチャンスが残されています。打点と本塁打の二冠は濃厚ですが打率争いが3割3分台に落ちてくれば可能性はあります。打率上位に経験豊富な打者がいないので可能性は残っています。7月20日現在3割7分2厘で首位のマッカチェンに対して3割1分1厘なので苦しいのは間違いありませんが。因みにナショナル・リーグは現在マッカチェンが1.075、ジョーイ・ボットが1.069(左膝手術のため脱落しました。内視鏡手術なので1ヶ月で復帰できるとも言われていますが。)、デビット・ライトが1.020、ライアン・ブラウンが1.002とOPS1.000超えが4人、更にルイーズが0.995、カルロス・ゴンザレスが0.985で続くという空前のハイレベルな争いとなっています。

 後半戦に入りましたのでMVP予想第一弾といきましょう。アメリカン・リーグはマイク・トラウトと予想します。新人王は確実ですがイチロー以来のMVPとのW受賞を狙います。7月20日現在本塁打15本と少ないながら長打率が5割9分9厘と驚異的です。ア・リーグの長打率ランキングはトラウトの同僚マーク・トランボが6割3分でトップ、以下ジョシュ・ハミルトン6割1分4厘、デビッド・オルティス6割9厘と続いてトラウトは4位に付けています。上位3人が明らかに長距離砲であるだけにトラウトの数字の優秀性が際立ちます。盗塁王と首位打者のタイトルを獲得して長打率6割、OPS1.000をクリアすればMVPだと思います。四球を増やして出塁率を上げることも必要となりますが。あの振り幅の小さなスウィングが狂うことは考えにくい。

 ナショナル・リーグはアンドルー・マッカチェンでもいいのですがまだ急降下する可能性はあると見ています。そうすると打撃陣に票を集める打者がいなくなるので大穴中の大穴としてR.A.ディッキーと予想します。現段階のブックメーカーのオッズは100倍を超える超大穴でしょう。37歳で突然変異したナックルボーラーとして話題性は十分過ぎる程十分です。ディッキーのナックルに球質が似ているのはチャーリー・ハフです。ハフよりもディッキーの方がスピードがありますが。ハフのナックルもディッキー同様落ちるだけでなく右に行ったり左に来たり、時には浮かび上がったりしていました。ディッキーのナックルが浮かび上がったところをまだ見たことがないのが残念です。「ディッキーがMVPなんて」と馬鹿にしていると痛い目に遭うかもしれませんよ。日本中で公開されているブログの中で、昨年のバーランダーのMVPを最も早く予想したのが当ブログであるという実績がありますので。



15年 第3節 週間MVP


 今節はセネタースが3勝0敗、ジャイアンツが3勝1敗、阪急が2勝1敗、タイガースが3勝2敗、金鯱が2勝2敗、イーグルスが1勝2敗、南海が1勝2敗、名古屋が1勝3敗、ライオンが0勝3敗であった。名古屋が失速してセネタースが浮上した。


週間MVP

投手部門

 セネタース 浅岡三郎 1

 今節2試合連続完封で文句なしの選出となった。


 ジャイアンツ スタルヒン 1

 
 1日の名古屋との決戦で10奪三振の完封、タイガース戦に2勝して3勝0敗とこちらも堂々の選出となった。



打撃部門

 セネタース 佐藤武夫 1

 今節2試合連続決勝ツーランホームランを放って文句なしの選出となった。


 セネタース 野口二郎 1

 今節12打数8安打4得点1打点2四球3盗塁と打者として活躍を見せてこちらも堂々の選出となった。









殊勲賞

 ジャイアンツ 林清一 1

 1対0で勝った3日のタイガース戦で決勝タイムリーを放つ。


 阪急 井野川利春 1

 32得点をあげた6日の南海戦で5打点を記録する。




敢闘賞

 タイガース ジミー堀尾文人 1

 今節20打数6安打5得点3打点二塁打3本、2試合連続勝利打点を記録する。




技能賞

 ライオン 鬼頭数雄 1

 今節11打数6安打で打率を2割3分8厘から3割2厘に上げて打撃ベストテンに顔を出してきた。









15年 セネタースvs阪急 2回戦


4月7日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 2 0 0 0 0 0 0 0  2 セネタース 7勝5敗1分 0.583 浅岡三郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 阪急       7勝6敗1分 0.538 森弘太郎

勝利投手 浅岡三郎 3勝0敗
敗戦投手 森弘太郎 4勝2敗

二塁打 (セ)浅岡 (阪)山田
本塁打 (セ)佐藤武夫 3号

勝利打点 佐藤武夫 2


野球は二人でもできる

 セネタースは2回、二死後浅岡三郎が左翼線にヒット、佐藤武夫が左翼スタンドにツーランホームランを叩き込んで2点を先制、これが決勝打となった。

 浅岡は第三打席で左越えに二塁打、第四打席も左前打で4打数3安打、佐藤は第二打席でも左前打を放って4打数2安打2打点であった。

 阪急打線は昨日の南海戦で27安打32得点を記録したが本日は浅岡の緩球を打てず3回の森弘太郎の中前打と9回のフランク山田伝の右中間二塁打だけに抑えられた。

 浅岡三郎は2安打3四球1三振で2試合連続完封を記録して3勝目をあげる。翌日の読売新聞によると「浅岡は1球毎に球道を変えて打者の弱点を攻める入念の投球」であったとのこと。

 佐藤武夫は2試合連続で決勝ツーランを放った。これが今季第3号となって2本で並んでいた川上哲治と伊賀上良平を突き放して単独ホームランキングに躍り出た。


 1973年8月30日、江夏豊は延長11回をノーヒットノーランに抑え自らサヨナラホームランを放って「野球は一人でも出来る」とコメントしたが、本日のセネタースは浅岡が2安打完封に打っても4打数3安打、佐藤が唯一の得点となる決勝ツーランに4打数2安打でチームの7安打のうち二人で5安打を記録した。「野球は二人でもできる」といったところですが、セネタース守備陣が無失策の好守を見せたこともお忘れなく。強打の失策王・柳鶴震も本日は3つのゴロを無難に捌いています。セネタースは3試合連続のシャットアウト勝ちで貯金を2とした。






               *浅岡三郎は2試合連続完封で3勝目をあげる。











     *セネタースは7安打のうち浅岡三郎と佐藤武夫で5安打を記録する。












     *浅岡三郎に2安打に抑えられた阪急打線。















2012年7月19日木曜日

15年 ライオンvs南海 1回戦


4月7日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 1 0 0 0 0 2 ライオン 4勝9敗 0.308 福士勇 井筒研一
0 0 3 0 0 0 0 0 X 3 南海      5勝8敗1分 0.385 政野岩夫 清水秀雄

勝利投手 政野岩夫 2勝2敗
敗戦投手 福士勇     0勝6敗
セーブ      清水秀雄 1

三塁打 (南)岡村

勝利打点 岡村俊昭 1


清水秀雄好リリーフ

 ライオンは2回、先頭の鬼頭数雄が三塁に内野安打、広田修三が左前打で続いて無死一二塁、六番ライト菊矢吉男の投ゴロの間に二者進塁して一死二三塁、山本尚敏は二飛に倒れるが松岡甲二が右前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 南海は3回、先頭の岩出清が左前打で出塁、藤戸逸郎が三前に送りバントを決めて一死二塁、国久松一が中前に同点タイムリーを放って1-1、岡村俊昭が右中間に三塁打を放って2-1と逆転、清水秀雄が四球を選んで一死一三塁、吉川義次の右犠飛で3-1とする。

 ライオンは4回から先発の福士勇に代えて井筒研一をマウンドに送る。

 ライオンは5回、先頭の坪内道則が四球で出塁、西端利郎の右前打で無死一三塁、玉腰年男が中前にタイムリーを放って2-3、鬼頭が四球を選んで無死満塁、広田は三振に倒れて一死満塁、菊矢の右飛に一走鬼頭が飛び出しており「9-3」と渡ってダブルプレー。

 南海は7回から先発の政野岩夫から二番手として清水秀雄がマウンドに上がる。清水は3イニングを2安打2四球4三振の好リリーフを見せて当ブログルールによりセーブが記録された。

 ライオンでは坪内道則が5打席3打数3安打2四球1盗塁の活躍を見せた。鬼頭数雄は3打数2安打、今季通算53打数16安打で打率を3割2厘に上げて打撃ベストテンの8位に浮上してきた。


2012年7月18日水曜日

15年 ジャイアンツvsタイガース 3回戦


4月7日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 1 1 3 ジャイアンツ 10勝5敗 0.667 スタルヒン
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 タイガース     8勝6敗1分 0.571 木下勇 若林忠志

勝利投手 スタルヒン 7勝1敗
敗戦投手 木下勇      3勝3敗

二塁打 (ジ)川上

勝利打点 千葉茂 2


タイガース5エラーで自滅

 タイガースは初回、先頭の皆川定之がストレートの四球で出塁、ジミー堀尾文人の遊ゴロでランナーが入れ替わり、本堂保次が右前打、カイザー田中義雄がストレートの四球を選んで一死満塁、松木謙治郎の左犠飛で1点を先制する。

 ジャイアンツは4回、先頭の中島治康の二ゴロをセカンド本堂がエラー、木下勇からの一塁牽制をファースト松木が失して中島は二塁に進む。川上哲治の二ゴロの間に中島は三進、平山菊二の遊ゴロの間に中島が還って1-1の同点とする。

 ジャイアンツは8回、先頭の吉原正喜がストレートの四球を選んで出塁、スタルヒンが投前に送りバントを決めて一死二塁、トップに返り千葉茂が右前に決勝タイムリーを放って2-1とする。続く水原茂がストレートの四球、タイガースベンチはここで先発の木下勇を下げて若林忠志をリリーフに送る。中島は二飛、川上は一塁内野安打で出塁するが平山は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 ジャイアンツは9回、二死後吉原の遊ゴロをショート皆川がエラー、吉原が二盗を決めてスタルヒンの二ゴロをセカンド本堂がこの日2つ目のエラーして二死一三塁、千葉の一ゴロをファースト松木が落球する間に吉原が還って3-1とする。

 スタルヒンは5安打4四球3三振の完投で7勝目をあげる。


 試合展開から分かるようにタイガースの5つのエラーが全て失点につながった。岡田宗芳が兵役で抜けて本堂保次がセカンドに入っているが本堂が2エラー、松木の2エラーもいただけなかった。

 勝利打点は千葉茂のタイムリーであったがスタルヒンの送りバントが効いた。ジャイアンツ藤本定義監督は送りバントが嫌いで昨年まではほとんど使ってこなかったが今年は送りバントを多用している。劣化している使用球対策であろう。






               *スタルヒンは5安打完投で7勝目をあげる。








2012年7月17日火曜日

15年 金鯱vsイーグルス 1回戦


4月7日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 金鯱          5勝8敗1分 0.385 中山正嘉
1 0 0 0 0 0 3 0 X 4 イーグルス 5勝7敗1分 0.417 亀田忠

勝利投手 亀田忠     4勝4敗
敗戦投手 中山正嘉 1勝4敗

二塁打 (イ)岩垣

勝利打点 岩垣二郎 1


亀田忠今季3度目の完封

 イーグルスは初回、先頭の岡田福吉がツースリーから四球を選んで出塁、岩垣二郎が左中間に二塁打を放ち岡田を迎え入れて1点を先制する。

 イーグルス打線は2回~6回、金鯱先発の中山正嘉に1安打無得点に抑えられる。

 金鯱打線も1回~4回までイーグルス先発の亀田忠に無安打無得点に抑えられる。金鯱は5回、先頭の五味芳夫が右前に初ヒットを放つが亀田からの牽制球にタッチアウト。

 金鯱は7回、先頭の瀬井清が中前打で出塁するが二盗に失敗、森田実が四球を選ぶが中山は遊ゴロ、五味は三振に倒れる。

 イーグルスは7回裏、先頭の寺内一隆がストレートの四球で出塁、竹内功が送って一死二塁、太田健一の三塁内野安打で二走寺内は動けず一死一二塁、清家忠太郎の投ゴロをピッチャー中山が一塁に悪送球する間に二走寺内がホームインして2-0としてなお一死二三塁、山田潔は三振に倒れるがトップに返り岡田が右前に2点タイムリーを放って4-0とする。

 亀田忠は8回に古谷倉之助に3本目のヒットを許すが後続を抑え、結局3安打9四球6三振で今季3度目の完封を飾り4勝目をあげる。


 本日の勝利打点は先制タイムリーを放った岩垣二郎に記録されたが、実質的に試合を決めたのは岡田福吉の7回の2点タイムリーであろう。勝利打点がタイトルから削除された理由もここにあり、真の殊勲打が勝利打点となる訳ではない。










                 *亀田忠は4勝中3回目の完封を記録した。









     *亀田忠に3安打完封された金鯱打線。















2012年7月16日月曜日

15年 阪急vs南海 2回戦


4月6日 (土) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
4 0 1 2 2 6 5 8 4  32 阪急 7勝5敗1分 0.583 山田伝
0 0 0 0 0 2 0 0 0   2  南海 4勝8敗1分 0.333 劉瀬章 平野正太郎 深尾文彦

勝利投手 山田伝 1勝0敗
敗戦投手 劉瀬章 2勝2敗

二塁打 (阪)中島2、山下実、新富 (南)岡村、山尾
三塁打 (南)清水
本塁打 (阪)土肥 1号

勝利打点 黒田健吾 1


歴代最多得点

 先発ピッチャー不足の阪急はフランク山田伝が先発。内野手不足の南海は政野岩夫がセカンドに入る。昨年は九球団随一の投手陣を誇った阪急は高橋敏と荒木政公を応召で欠き一気に台所事情が苦しくなっている。一方、南海は鶴岡一人を筆頭に宮口美吉、中田道信、平井猪三郎、小林悟楼、栗生信夫、海蔵寺弘司と主力を大量に戦場に送り込み一気に弱体化した。

 阪急は初回、先頭の中島喬が左翼線に二塁打、上田藤夫の一塁線バントが内野安打となって上田は二盗、黒田健吾が左前に先制タイムリーを放って1-0、重盗を決めて2-0、キャッチャー吉川義次の悪送球の間に黒田は三進、山下好一が四球から二盗、山下実の右中間二塁打で4-0として南海先発の劉瀬章をKO、二番手に平野正太郎が登板して後続を3人で片づける。

 阪急は2回、先頭のフランク山田伝は三ゴロ、中島は遊ゴロ、上田は二ゴロに倒れて三者凡退。

 阪急は3回、先頭の黒田が四球で出塁して山下好一の遊ゴロで二進、二死後井野川利春の左翼線タイムリーで5-0とする。

 阪急は4回、二死後中島喬の遊ゴロをファースト清水秀雄が落球、中島が二盗を決め上田が四球を選んで二死一二塁、黒田の中前タイムリーで6-0、山下好一のピッチャー強襲ヒットがタイムリーとなって7-0とする。

 阪急は5回、先頭の井野川が遊失に生き、一死後土肥省三が左翼席にツーランを叩き込んで9-0とする。今季限りでプロ野球を去ることとなる土肥にとってプロでの唯一の本塁打となった。翌日の読売新聞には「土肥の大本塁打」と書かれている。信越硬式野球クラブ(旧電電信越・NTT信越野球部)のホームページによると昭和31年の電電信越野球部監督に「土肥省三」の名前が見られる。土肥は長野商業の出身なので同一人物の可能性が考えられる。長野商業時代には松竹水爆打線に名を連ねた宮崎仁郎と共に昭和11年夏の甲子園に出場している。

 阪急は6回、先頭の上田がピッチャー強襲ヒット、黒田が右前打、山下好一の遊ゴロで黒田は二封、山下実は四球で一死満塁、井野川の三塁内野安打で10-0、新富卯三郎の右中間二塁打で12-0、土肥の三塁内野安打で13-0、山田の右前タイムリーで14-0、トップに返り中島喬の投ゴロは「1-4-3」と転送されるがセカンド政野からの一塁送球が悪送球となる間に土肥が還って15-0とする。

 南海は6回、先頭の岩出清が右前打、藤戸逸郎の遊ゴロでランナーが入れ替わり、国久松一が中前打、岡村俊昭は三振に倒れるが清水秀雄が右翼線に三塁打を放って2-15とする。


 南海は7回から三番手にプロ入り初登板の深尾文彦をマウンドに送るがこれが火に油を注ぐ結果となった。

 阪急は7回、先頭の黒田が四球、山下好一が左前打、黒田が三盗を決めて山下実四球で無死満塁、井野川の三ゴロの間に黒田が還って16-2、新富が四球を選んで一死満塁、土肥が押出し四球を選んで17-2、山田は左飛に倒れるが中島喬が押出し四球を選んで18-2、上田に代わる代打池田久之が左前に2点タイムリー放って20-2、黒田は三直に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は8回、先頭の山下好一がピッチャー強襲ヒット、山下実右前打、井野川四球で無死満塁、新富が左翼線に2点タイムリーを放って22-2、土肥は四球、山田の左前タイムリーで23-2、中島が右中間に走者一掃の二塁打を放って26-2、下村豊は左飛に倒れてようやくワンアウト、黒田は死球、山下好一の三塁内野安打で下村がホームを欲張りタッチアウト、山下実が四球を選んで二死満塁、井野川が左翼線に2点タイムリーを放って28-2とする。新富が四球を選ぶが土肥が三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は9回、先頭の山田が三塁に内野安打、中島が左前打、下村の三塁内野安打がタイムリーとなって29-2、黒田が四球を選んで無死満塁、山下好一の右犠飛で30-2、下村もタッチアップから三塁に進み黒田の二盗とキャッチャー佐野誠三の悪送球の間に下村が還って31-2、山下実の右前タイムリーで32点目をあげた。井野川は左飛、新富が四球を選んで二死一二塁と追加点のチャンスを掴むが土肥が左飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 フランク山田伝は10安打2四球1死球3三振2失点で完投勝利を飾る。


 阪急は山下好一の4安打を筆頭に猛打賞が6人、先発全員が2安打以上のマルチヒット、全員安打で27安打を記録した。また、井野川利春の5打点を筆頭に3打点以上が5人、上田藤夫だけが0打点で29打点を記録した。更に、黒田健吾と山下好一の5得点を筆頭に先発全員が2得点以上、池田久之を除く全員で32得点を記録した。

 南海三番手の深尾文彦は3イニングを投げて13安打11四球1死球1三振17失点自責点17を記録、深尾のプロでの登板はこの日1度だけなので通算防御率は51.00となっている。

 阪急の32得点は歴代最高得点として今だに破られていない。









                 *フランク山田伝が完投勝利を飾る。











                 *試合時間は1時間56分であった。













     *32得点をあげた阪急打線。











15年 ライオンvsセネタース 3回戦


4月6日 (土) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 ライオン     4勝8敗 0.333 菊矢吉男 山本秀雄
0 2 1 0 0 1 4 0 X  8 セネタース 6勝5敗1分 0.545 村松長太郎 野口二郎

勝利投手 野口二郎 4勝2敗
敗戦投手 菊矢吉男 4勝2敗

二塁打 (ラ)広田 (セ)織辺
本塁打 (セ)佐藤 2号

勝利打点 佐藤武夫 1


村松-野口で完封リレー

 セネタースは2回、一死後山崎文一が右前打で出塁、二死後佐藤武夫が左翼スタンドに先制ツーランを叩き込んで2-0とする。

 セネタースは3回、先頭の苅田久徳が四球を選んで出塁、横沢七郎が送って一死二塁、野口二郎が右前にタイムリーを放って3-0とする。

 ライオンは4回、先頭の玉腰年男が中前打、鬼頭数雄の二ゴロを苅田がエラーして無死一二塁、ここでセネタースは先発の村松長太郎を下げてファーストの野口二郎をマウンドに送る。広田修三が送って一死二三塁、しかし野口は菊矢吉男を三振、井筒研一を投ゴロに打ち取る。

 セネタースは6回、先頭の野口がショートに内野安打、小林茂太の右前打で無死一二塁、二死後石井豊の三ゴロをサード山本尚敏が失する間に野口が還って4-0とする。

 セネタースは7回、先頭の織辺由三が左翼線に二塁打、トップに返り苅田の遊撃内野安打で無死一三塁、横沢の三ゴロをサード加地健三郎が一塁に悪送球する間に織辺が還って5-0としてなお無死二三塁、野口が四球を選んで無死満塁、小林の一ゴロの間に苅田が還って6-0としてなお一死二三塁、柳鶴震が左前にタイムリーを放って7-0、山崎の二ゴロの間に野口が還って8-0とする。

 セネタースは村松-野口のリレーで4日の浅岡の完封に続いて2試合連続シャットアウト勝ち。

 野口二郎は6イニングを3安打無四球5三振無失点の好投で4勝目をあげる。打っても3打数3安打2得点1打点1四球1盗塁の活躍であった。


 翌日の読売新聞によると村松長太郎は「下手、横手から投げ込む緩球でラ軍を眩惑し」たとのこと。村松は浪華商業時代、昭和12年のセンバツ決勝で中京商業の野口二郎と投げ合い2対0で野口に投げ勝って優勝した。甲子園の決勝で投げ合った投手がプロで同じチームに所属して完封リレーした事例は稀有のことでしょう。因みに野口二郎は甲子園に3回出場して12年夏と13年春に優勝して甲子園通算12勝1敗7完封の記録を残しており、野口が甲子園で唯一の黒星を喫したのが12年春決勝で対戦した村松長太郎の浪華商業であった。










*昭和12年のセンバツ決勝で投げ合った村松長太郎と野口二郎による完封リレー。野口は自伝「私の昭和激動の日々」に、村松は「丸々とした、ずんぐり型の投手だった。」と書いている。














     *2試合連続シャットアウト勝ちのセネタース打線。













15年 ジャイアンツvs金鯱 2回戦


4月6日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 0 0 2 0 0 4 ジャイアンツ 9勝5敗 0.643 中尾輝三
0 0 3 0 0 1 1 0 X 5 金鯱            5勝7敗1分 0.417 内藤幸三 中山正嘉

勝利投手 内藤幸三 1勝0敗
敗戦投手 中尾輝三 1勝3敗
セーブ      中山正嘉 2

二塁打 (ジ)白石、千葉
三塁打 (ジ)中島

勝利打点 瀬井清 2


中山正嘉圧巻のリリーフ

 ジャイアンツは千葉茂が復帰して一番セカンドに入る。

 2回の一死満塁を逃したジャイアンツは3回、先頭の水原茂の遊ゴロをショート濃人渉がエラー、中島治康の右翼線ヒットで一死一三塁、中島がパスボールで二進、川上哲治が中前にタイムリーを放って1点を先制してなお一死一三塁、白石敏男の右犠飛で2-0とする。しかし平山菊二の中飛に川上が飛び出し「8-3」と渡ってダブルプレー。

 金鯱は3回裏、先頭の佐々木常助が四球で出塁、森田実がセンター左にヒット、濃人が三前に送りバントを決めて一死二三塁、古谷倉之助が右前にタイムリーを放って1-2としてなお一死一三塁、長島進の遊ゴロ併殺崩れの間に森田が還って2-2の同点、瀬井清が左前打を放って二死一二塁、荒川正嘉に代わる代打野村高義が右前にタイムリーを放って3-2と逆転に成功する。

 金鯱は6回、先頭の瀬井がストレートの四球で出塁、野村が送りバントを決めて一死二塁、内藤幸三のピッチャー強襲ヒットで一死一三塁、カバーがもたつく間に瀬井がホームに還って4-2とする。

 ジャイアンツは7回、先頭の水原が左前打で出塁、中島が中越えに三塁打を放って3-4、川上は投飛に倒れるが白石の遊ゴロをショート濃人のエラーで4-4の同点に追い付く。更に平山が四球、林清一の三ゴロをサード瀬井がエラーして一死満塁、しかしここで内藤が踏ん張り吉原正喜は三振、中尾輝三も三振に倒れる。

 金鯱は7回裏、先頭の佐々木が中前打で出塁、森田が四球を選んで無死一二塁、濃人が投前に送りバントを決めて一死二三塁、古谷はストレートの四球で一死満塁、長島が投飛に倒れて二死満塁、瀬井がワンスリーから押出し四球を選んで5-4と勝ち越す。

 ジャイアンツは8回、先頭の千葉が右中間に二塁打、ここで金鯱・石本秀一監督は内藤から二番手中山正嘉にスイッチ、水原が一塁線に送りバントを決めて一死三塁、しかし中島は浅い中飛、川上は三振に倒れる。

 中山正嘉はジャイアンツ最終回の反撃も白石を三振、平山には右前打を許すが林を三振、吉原を三振に抑える圧巻のリリーフ。

 内藤幸三は7回3分の0を8安打5四球7三振の力投で1勝目をあげる。内藤のストレートは昭和11年には澤村栄治より速かったとも言われており“元祖巨人キラー”であった。11年限りで兵役に就き昨年戦場から戻ってきたが未勝利に終わり、この日が復帰後初勝利となった。







     *“元祖巨人キラー”内藤幸三の復帰後初勝利は矢張りジャイアンツ戦であった。