2015年11月20日金曜日

出世頭



 祖父江東一郎が「猛打賞&勝利打点」を記録した昭和17年10月19日の「大洋vs名古屋 14回戦」をお伝えしたところです。


 2015年7月7日に、元電通常務であった祖父江東一郎氏(92歳)の訃報が伝えられています。この「祖父江東一郎氏」とは、昭和17(1942)年に大洋に入団して翌18年に西鉄に在籍し、昭和25年と26年に毎日オリオンズに在籍した「祖父江東一郎」と同一人物なのでしょうか。


  愛知県出身で、年齢も合致しています。


 電通で社長を務めて最高顧問から名誉相談役にまで昇りつめた成田豊氏は東大野球部出身なので、電通に野球部があったとしても不思議ではありません。


 アメリカ野球学会東京支部のメンバーにも協力してもらい、「祖父江東一郎氏」と「祖父江東一郎」は同一人物である可能性が高いことが分かりました。


 であれば、野球界OBでは祖父江が出世頭でしょう。


*当ブログでは「野球人」と認定した場合、原則として「呼び捨て」とさせていただいております。したがって、電通常務の祖父江東一郎氏は敬称付き、野球人祖父江東一郎は呼び捨てとさせていただきますのでご了承ください。


 

17年 大洋vs名古屋 14回戦


10月19日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 0 0 0 0 0 0 2 大洋     51勝33敗6分 0.607 野口二郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋 35勝52敗4分 0.402 西沢道夫 森井茂

勝利投手 野口二郎 33勝14敗
敗戦投手 西沢道夫   6勝9敗

二塁打 (大)(浅岡、野口二郎 (名)古川

勝利打点 祖父江東一郎 1

猛打賞 (大)祖父江東一郎 1


祖父江東一郎、猛打賞&勝利打点

 大洋は2回、先頭の浅岡三郎がレフト線に二塁打、富松信彦が右前打で続いて無死一三塁、祖父江東一郎が中前に先制タイムリーを放って1-0、名古屋ベンチはここで早くも先発の西沢道夫をあきらめて森井茂をマウンドに送る。宇野錦次の投前送りバントを森井が三塁に送球して二走冨松は三封、トップに返り中村信一の三ゴロで宇野が二封されて二死一三塁、中村が二盗を決めて濃人渉が四球を選び二死満塁、野口二郎の遊ゴロをショート小鶴誠が二塁に送球するがセーフ、この間に三走祖父江が生還して2-0、このプレーには野選が記録された。


 野口二郎は快調なピッチングを続けた。初回、二死後古川清蔵に右中間二塁打を許すが、以降は名古屋打線を抑え込んで無安打ピッチング。結局、1安打2四球2三振で今季16度目の完封、33勝目をマークする。野口二郎の1安打完封は今季4度目となる。


 祖父江東一郎が4打数3安打1得点1打点で猛打賞と勝利打点を記録した。祖父江に関しては、別項で特集します。


 

憎まれ役



 あまりの強さに「憎まれ役」に徹した相撲人生でした。


 昼のニュースでは病院に搬送されたとだけ伝わりましたが、帰ってくると訃報に変わっていました。「輪湖時代」と言われましたが、6歳年上の輪島は既にベテランの域に達しており、輪島の左下投げを凌ぎながら水入りの持久戦に持込む作戦で勝ち続けました。当時は赤鬼のような形相の輪島を応援していましたが、「ちょっと勝てないな」と思っていたのも事実です。


 筆者の知る限り、史上最強の横綱でしたね。

 

2015年11月19日木曜日

櫻井様からのご質問に対するご回答



 「17年 南海vs阪急 13回戦」に寄せられた櫻井様からのご質問に回答させていただきます。

質問内容

「宇佐美徹也氏の『プロ野球記録大鑑』のコラム内に、『2死で三塁に山下好一がいて、打者が外野に安打、ところが、山下好一はホームインしなかった』事が書かれてます。一応、宇佐美徹也氏がホームインしなかった理由を推測してますが、私には納得できる理由ではないです。その事について、『本当に山下好一は、2死から安打が出て生還しなかったのか?』『何かスコアカードに詳細が書かれてないか』」 


 問題のシーンは7回裏阪急の攻撃、二死後、山下好一の第4打席で、三塁内野安打で出塁して二死一塁、続く黒田健吾がレフト線に二塁打を放った場面のようです。第1打席から第3打席では後続の打者はヒットを打っていません。スコアカードの記述に従うと、二死で山下好一は三塁にはおらず一塁にいて、次打者黒田の二塁打で三塁に達しています。

 ここで重要なのは、山下好一の三進が「f」によるもの、すなわち「六番森田定雄の一打により三塁に進んだ」と誤って記載されていることです。当時のスコアカードでは、「誰による進塁か」は「アルファベット」で示されています。一番から順に「abc・・・」で示されており、五番は「e」、六番は「f」となります。

 四番山下好一が三塁内野安打で一塁に出塁し、五番「e」黒田健吾の二塁打で三塁に進んでいますので、本来であれば山下好一の三進は「e」によると書かれなければならないところ、「f」すなわち六番森田定雄の一打により三進したと誤って記載されています。

 したがって、宇佐美徹也氏は、「山下好一は既に三塁に進塁しているのに黒田の二塁打で生還しなかった」と誤認したのではないでしょうか。

 スコアカードの記載によると、「二死後四番山下好一が三塁内野安打で一塁に出塁し、五番黒田健吾の二塁打で山下好一が三進して二死二三塁となり、六番森田定雄が三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ」となっています。

 「雑記」欄等には何も書かれていませんので、単なるスコアカードの誤記載が宇佐美徹也氏に誤解を生ぜしめたのではないでしょうか。



*「17年 南海vs阪急 13回戦」では、山下好一に続く打者がヒットを放ったのは7回の第4打席だけです。山下好一の三進が「f」によるもの、すなわち六番森田定雄によるものと誤って記載されています。正しくは、山下好一の三塁進塁は五番黒田健吾の二塁打によるもので、「e」によるものが正解です。

 宇佐美徹也氏の誤認も単純なミスのようですね。





 

2015年11月17日火曜日

17年 大和vs巨人 13回戦


10月19日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 大和 22勝58敗10分 0.275 広島清美
0 0 0 2 0 0 0 0 X 2 巨人 63勝25敗4分 0.716 藤本英雄

勝利投手 藤本英雄 5勝0敗
敗戦投手 広島清美 0勝2敗

本塁打 (巨)中島 7号

勝利打点 中島治康 17


広島清美1四球ピッチング

 大和は3回、先頭の山田潔がストレートの四球で出塁、トップに返り渡辺絢吾の投前バントをピッチャー藤本英雄が二塁に悪送球、一走山田は三塁に進んで無死一三塁、ここでダブルスチールを決めて1点を先制する。「雑記」欄には「二塁をカバーするものなく重盗を成功せしめた。」と書かれている。二遊間のミスであった可能性が高い。

 巨人は4回、先頭の白石敏男が四球を選んで出塁、楠安夫は遊飛に倒れるが、中島治康がレフトスタンドに逆転ツーランを叩き込んで2-1とする。これが決勝打となった。


 藤本英雄は小松原博喜に許した2安打のみに抑えて1失点、自責点ゼロの完投で入団以来5連勝を飾る。但し、投球内容は芳しくなかったようで、翌日の読売新聞によると「藤本には初陣当時の球速がない。あるいは相手を軽く見て調子を落としているのかもしれぬ。」とのこと。


 一方、大和戦発の広島清美は中島に一発を浴びたものの8回を完投して4安打1四球3三振の好投を見せた。この試合は59分で終了したが、この要因は四球乱発の藤本英雄ではなく、1四球に抑えた広島清美の快投にあった。巨人を完封していた可能性もあり、返す返すも中島に浴びた一発が痛かった。


 

2015年11月15日日曜日

17年 南海vs阪神 13回戦


10月18日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 1 2 南海 45勝45敗 0.500 川崎徳次 神田武夫
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪神 43勝42敗5分 0.506 玉置玉一 若林忠志

勝利投手 川崎徳次 14勝14敗
敗戦投手 玉置玉一   1勝1敗
セーブ     神田武夫   6

二塁打 (南)岡村 (神)門前

勝利打点 岩本義行 7

猛打賞 (神)塚本博睦 4


川崎-神田が完封リレー

 南海は5回まで1安打無得点。阪神も5回まで2安打無得点であった。

 南海は6回、一死後猪子利男がセンター右にヒット、岡村俊昭がレフト線に二塁打を放って一死二三塁、阪神ベンチはここで先発の玉置玉一を下げて若林忠志監督が自らマウンドに上がるが、岩本義行が中前にタイムリーを放って1点を先制する。

 阪神は7回、一死後門前真佐人が右中間に二塁打を放つと代走に上田正を起用、若林の右前打で一死一三塁、南海はここで先発の川崎徳次から神田武夫にスイッチ、野口は三直に倒れて二死一三塁、ここで一走若林がディレードスチールを試みるが「1-4-3」と渡ってタッチアウト、若林には盗塁失敗が記録された。

 南海は9回、一死後国久松一の当りは遊ゴロ、これをショート野口昇がエラーして一死一塁、中野正雄の右前打で一死一二塁、神田が投前に送りバントを決めて二死二三塁、ここで三走国久がホームスチールを決めて2-0とする。二走中野にも三盗が記録されているのでサインによるものだったようだ。


 南海戦発の川崎徳次は6回3分の1を投げて4安打2四球1三振無失点、14勝目をあげる。リリーフの神田武夫は2回3分の2を2安打無四球無三振無失点に抑えて6個目のセーブを記録した。


 阪神のトップバッター塚本博睦が4打席3打数3安打1四球で2盗塁を記録したが、阪神は二番から四番までが無安打でリードオフマンの活躍を活かせなかった。


 

2015年11月14日土曜日

17年 朝日vs阪急 15回戦


10月18日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 0 0 2 0 0  0   0  2 朝日 38勝46敗6分 0.452 林安夫
0 0 0 0 0 2 0 0 0  0 1X  3 阪急 45勝41敗5分 0.523 笠松実 森弘太郎

勝利投手 森弘太郎 19勝16敗
敗戦投手 林安夫     24勝21敗

勝利打点 小田野柏 1


小田野柏、サヨナラ打

 5回まで両軍無得点。阪急は二塁も踏めなかったが、朝日は2回、3回とスコアリングポジションに走者を送りながら得点できなかった。

 阪急は6回、二死後上田藤夫が四球を選んで出塁、黒田健吾のレフト線ヒットで上田は三塁に進み、黒田も二盗を決めて二死二三塁、ここで山下好一が中前に2点タイムリーを放ち2-0とする。

 朝日は7回、先頭の浅原直人が左前打で出塁、阪急ベンチはここで先発の笠松実から森弘太郎にスイッチ、続く岩田次男の打席で浅原が二盗に成功、岩田のカウントがツースリーとなったところで阪急はレフト山下好一とライト小田野柏を入れ替えた。岩田が四球を選んで無死一二塁、林安夫の遊ゴロで岩田は二封、林が二盗を決めて一死二三塁、早川平一に代わる代打内藤幸三の二ゴロで三走浅原がホームに突っ込みセカンド上田がバックホーム、タイミングはアウトであったがキャッチャー日比野武が後逸して浅原はホームイン、更に二走林もホームに還って2-2の同点に追い付く。阪急はキャッチャーを日比野から池田久之に交代。

 この後リリーフの森は10回まで朝日打線を無安打に抑える。朝日先発の林も7回から10回まで阪急打線を無安打に抑えて試合は膠着状態に陥った。

 朝日は11回表、一死後広田修三が左前打、浅原も左前打で続いて一死一二塁、続く岩田次男の打球はショートライナー、二走広田は一発を狙ってスタートを切ったが「6-4」と送られてダブルプレー。ボールの飛ばない当時は外野の守備位置が浅く、ワンヒットで得点が難しかったので広田の走塁は一概には責められない。とは言え、この一打が明暗を分けた。

 阪急は11回裏、二死後黒田が中前打で出塁、山下好一が右前打で続いて二死一二塁、ここで小田野柏が中前にサヨナラ打を放ち試合を決めた。


 森弘太郎は5イニングを2安打1四球2三振1失点に抑えて19勝目をあげる。

 林安夫は10回3分の2を完投して7安打1四球3三振であった。


 10月15日に戦場から帰還後初勝利をあげた小田野柏が、この日は外野に入ってサヨナラ打を放つ活躍を見せた。帰還兵の活躍はよく見られるが、小田野も例外ではなかった。