2016年2月28日日曜日

17年 大和vs朝日 15回戦


11月18日 (水) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 大和 27勝68敗10分 0.284 松本操
0 1 0 0 0 4 0 0 X 5 朝日 49勝50敗6分 0.495 林安夫

勝利投手 林安夫 32勝22敗
敗戦投手 松本操   1勝10敗

二塁打 (和)渡辺

本塁打 (和)木下 4号 (朝)浅原 4号、林 1号

勝利打点 浅原直人 3


林安夫32勝、浅原と林が連続ホームラン

 いよいよ昭和17年ペナントレースも最終日を迎えました。

 朝日は初回、先頭の坪内道則がレフト線にヒットを放つが、酒沢政夫の二ゴロで坪内は二封、岩田次男の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。

 朝日は2回、先頭の浅原直人が四球を選んで出塁、林安夫が送って一死二塁、大友一明は右飛に倒れるが、中谷順次が左前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 大和は3回、先頭の杉江文二が中前打で出塁、松本操はストレートの四球を選んで無死一二塁、しかし渡辺絢吾の送りバントがピッチャーへの小フライとなり、捕球した林が二塁に送球して「1-6B」のダブルプレー、トップに返り山田潔が四球を選ぶが、木村孝平は捕邪飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 大和は4回、先頭の木下政文がレフトスタンドに第4号同点ホームランを叩き込んで1-1と追い付く。続く小松原博喜の右飛をライト浅原が落球、金子裕が中前打を放って無死一二塁、しかし苅田久徳の送りバントは一邪飛となって失敗、杉江は三振、松本は一ゴロに倒れて同点止まり。

 大和は6回、先頭の小松原博喜が右前打、金子裕の二遊間の当りはセカンド原とショート酒沢が譲り合って内野安打となり無死一二塁、苅田の中飛をセンター坪内がピッチャー林に返球したところ、二走小松原が飛び出しており林はショート酒沢に送球してタッチアウト、「8-1-6」の併殺が完成する。松本は二ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 朝日は6回裏、一死後浅原がレフトスタンドに第4号決勝ホームラン、林もレフトスタンドに連続ホームランを叩き込んで3-1、大友の遊ゴロをショート山田が一塁に悪送球、中谷が左前打を放って一死一二塁、原秀雄の三ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、広田修三の一二塁間安打で二者還って5-1とダメ押す。

 大和は7回、先頭の渡辺が左中間に二塁打、トップに返り山田の打席で林が二塁に牽制悪送球して渡辺は三進、山田は四球を選んで無死一三塁、木村の遊ゴロでショート酒沢は二塁ベースを踏んで一走山田は二封、この時三走渡辺が飛び出しているのを見た酒沢が三塁に送球、タッチアウトとなって「6B-5」の併殺が完成する。


 酒沢政夫はこの日3つの併殺に関与したが、何れも「1-6B」、「8-1-6」、「6B-5」の変則併殺プレーであった。酒沢は昭和27年の大映時代、6月21日の毎日戦で一試合2度の三重殺に関与することとなる。この時は酒沢はセカンドを守っており、ショートはこの日の対戦相手である大和のショート山田潔であった。


 林安夫は8安打6四球1三振1失点の完投で32勝目をあげて最終戦を飾った。6回に浅原と連続ホームランも放った。2シーズンで兵役にとられて戦死することとなる林にとって、生涯唯一の本塁打である。林はこれで今季541回3分の1を投げ抜いたこととなる。現在に至るまでの日本最高記録であり、今後も更新されることはない。林がここまで投げることができたのは、複数の要因が考えられる。精神的には竹内愛一監督に心酔しており監督のために投げたこと。技術的には541と1/3イニングスで与四死球138個という抜群のコントロールを誇っていたこと。当時の野球雑誌でもそのコントロールの良さを絶賛されている。そして何より時代背景が、「どうせ戦争に連れて行かれるのだからそれまで好きな野球をやり抜きたい」というアスリートの本能を刺激したからである。



*この試合では身上のコントロールが今一であったが完投で32勝目をあげる。






*大和最終戦のオーダー。今季は27勝68敗10分に終わったが、終盤に苅田久徳が参入してチームは変わってきている。










*朝日最終戦のオーダー。昨シーズン竹内愛一監督を迎え、今季林安夫を得て49勝50敗6分と大健闘を見せた。







 

訂正のお知らせ



 名古屋の引分け数について、9月22日の「名古屋vs阪急 11回戦」以降、一つずつ少なく表示していました。9月22日以降は「3分→4分」に、10月24日の「阪急vs名古屋 14回戦」以降は「4分→5分」に、11月9日の「名古屋vs巨人 15回戦」以降は「5分→6分」に、それぞれ訂正させていただきます。


 ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします申し上げます。


 

17年 名古屋vs南海 15回戦


11月16日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 2 0 0 3 5 名古屋 39勝60敗6分 0.394 石丸進一
2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 南海     49勝55敗 0.471 清水秀雄

勝利投手 石丸進一 17勝19敗
敗戦投手 清水秀雄   4勝3敗

勝利打点 桝嘉一 4


石丸進一、2安打完投

 南海は初回、先頭の国久松一がストレートの四球で出塁、猪子利男も四球を選んで無死一二塁、岡村俊昭がセオリーどおり三前に送りバントを決めて一死二三塁、岩本義行は歩かされて一死満塁、名古屋先発の石丸進一は続く清水秀雄を一ゴロに打ち取るが、これをファースト本田親喜がエラーする間に三走国久が還って1点を先制、清水に打点は記録されていない。柳鶴震は三振に倒れて二死満塁、中野正雄が押出し四球を選んでこの回2点を先制する。

 石丸進一は初回2失点で自責点は1が記録されている。一死満塁で清水の一ゴロをファースト本田がエラー、清水に打点は記録されていないので、公式記録員は本田のエラーが無ければ三走国久は封殺されたと判断した。国久の得点は当然石丸進一の自責点ではない。二走猪子は本田のエラーが無くても三塁に進んでいるので、中野の押出し四球で猪子が得点した際は石丸進一の自責点となる。

 南海先発の清水秀雄に5回まで目安打に抑えられてきた名古屋は6回、先頭の桝嘉一の当りは遊ゴロ、これをショート長谷川善三がエラー、続く小鶴誠の遊ゴロも長谷川が連続エラーして無死一二塁、古川清蔵は捕飛に倒れるが、吉田猪佐喜が四球を選んで一死満塁、ここで石丸藤吉が左前に同点の2点タイムリーを放って2-2とする。

 名古屋は9回、一死後石丸進一がレフト線にヒット、芳賀直一も左前打を放ち、トップに返り本田親喜が四球を選んで一死満塁、桝嘉一が右前に決勝タイムリーを放って3-2、小鶴は三振に倒れて二死満塁、古川が左前にダメ押しの2点タイムリーを放ち5-2として試合を決める。


 石丸進一は2安打6四球1三振の完投で17勝目をあげる。初回は4四球と乱れたが、6回まで南海打線を無安打に抑える好投であった。石丸は前回11月12日の阪神戦でも1安打完封の好投を見せており、来季の飛躍を期待させる内容で昭和17年のシーズンを締めくくった。


 名古屋は39勝60敗6分の成績でシーズン終了、実力の割に成績は冴えなかったが、最終節は3勝1敗1分であった。




*石丸進一は今季最終戦を2安打完投で飾った。






*名古屋最終戦のオーダー。6回に石丸藤吉が同点打、9回に桝嘉一が決勝打と古川清蔵がダメ押し打を放った。





 

17年 大和vs大洋 15回戦


11月16日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 大和 27勝67敗10分 0.287 畑福俊英
0 2 0 0 0 0 0 1 X 3 大洋 60勝39敗6分 0.606 野口二郎

勝利投手 野口二郎 40勝17敗
敗戦投手 畑福俊英 32勝18敗

二塁打 (和)畑福 (大)富松2
三塁打 (大)富松

勝利打点 中村信一 1


野口二郎40勝、富松信彦は長打3本

 大洋は2回、一死後浅岡三郎が四球を選んで出塁、富松信彦が右中間に二塁打を放って一死二三塁、祖父江東一郎は浅い右飛に倒れるが、宇野錦次に代わる代打渡辺敬蔵が四球を選んで二死満塁、トップに返り中村信一が中前に2点タイムリーを放ち2-0とする。

 5回まで4安打を放ちながら無得点の大和は6回、先頭の木下政文が中前打、小松原博喜の二ゴロをセカンド佐々木光雄がエラーして無死一二塁、金子裕は中飛に倒れて一死一二塁、苅田久徳の三ゴロは「5-4-3」と転送されるが、ファースト野口明が後逸する間に三塁に進んでいた二走木下がホームに還って1-2と1点差に詰め寄る。

 大洋は6回裏、先頭の富松が右中間に三塁打、祖父江は三振に倒れるが、佐々木に代わる代打古谷倉之助が四球を選び代走に板垣茂保を起用、ここでダブルスチールを仕掛けるが三走冨松は「2-4-2」と転送されて本塁寸前タッチアウト、この回は無得点に終わった。

 大洋は8回、先頭の富松がこの日3本目の長打となる二塁打を右中間に放ち、佐々木の後のセカンドに入っている貞池広喜が四球を選び、トップに返り中村信一の左前打で一死満塁、濃人渉が中犠飛を打ち上げて3-1と突き放す。

 野口二郎は8安打2四球6三振1失点、自責点ゼロの完投、今季最終戦で40勝目をマークする。
 富松信彦が二塁打2本、三塁打1本を放って猛打賞を獲得した。



 大洋は今季60勝39敗6分でシーズンを終了、3分の2は野口二郎の勝ち星であった。


 野口二郎が記録した40勝は、昭和14年にスタルヒンがマークした42勝に次ぐ記録となった。戦後の見直し作業でスタルヒンの記録は40勝に訂正されたが、昭和36年に稲尾が42勝を記録した際に再度見直されてコミッショナー裁定により42勝に再訂正された。したがって、野口二郎の40勝は、昭和14年のスタルヒン42勝、昭和36年の稲尾42勝に次いで歴代3位の記録となっている。


 因みに、昭和14年のスタルヒンの記録を現行ルールの勝利投手の基準で見直すと、「40勝」ではなく「38勝」となる。戦後の見直し作業時の基準が現行ルールとは違っていたのか、「38勝」だと野口二郎よりも下になってしまうので「40勝」でお茶を濁したのかは定かではない。昭和17年に記録した野口二郎の40勝が、現行ルールでも40勝であることは当ブログでお伝えしてきたとおりです。





*野口二郎は最終戦で40勝目をマーク。








*大洋の今季最終戦オーダー。富松信彦が3本の長打を記録した。



 

2016年2月27日土曜日

17年 阪急vs阪神 15回戦


11月15日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急 49勝50敗6分 0.495 笠松実
2 0 0 0 4 0 0 0 X 6 阪神 52勝48敗5分 0.520 若林忠志

勝利投手 若林忠志 26勝13敗
敗戦投手 笠松実     17勝17敗

本塁打 (神)門前 1号

勝利打点 門前真佐人 2


若林忠志、3安打完封で締める

 阪神は初回、一死後山口政信が四球を選んで出塁、カイザー田中義雄の当りは右前に抜けるが、ライト小田野柏からの二塁送球で一走山口はフォースアウト、ライトゴロが記録されて二死一塁、ここで門前真佐人がレフトスタンドにツーランホームランを叩き込んで2点を先制する。

 阪神は5回、一死後塚本博睦が左前打から二盗に成功、山口が四球を選んで一死一二塁、田中の遊ゴロをショート中村栄が二塁に送球するがセカンド上田藤夫が後逸、この間に二走塚本が三塁ベースを蹴ってホームに還り3-0、なお一死一二塁から門前の当りは三ゴロ、この打球をサード黒田健吾が二塁に悪送球、二走山口が三塁ベースを蹴ってホームに還り4-0、一走田中は三塁、打者走者の門前も二塁に進んで一死二三塁、藤井勇は浅い中飛に倒れて二死二三塁、若林の三ゴロをサード黒田が一塁に送球するが、ファースト井野川利春が後逸、三走田中に続いて二走門前もホームに還って6-0とする。阪急は上田、黒田、井野川のエラーでこの回4失点。


 若林忠志は3安打2四球1三振で今季4度目の完封で26勝目、今季最終戦を飾った。


 阪神は52勝48敗5分で昭和17年のペナントレースを終了、阪急は49勝50敗6分の負越しに終わった。



*阪神最終戦のオーダー。塚本、山口、門前、藤井など、帰還兵の活躍が目立ったシーズンであった。








*阪急最終戦のオーダー。小田野柏には最後まで「小野田柏」のスタンプが押されている。






 

17年 朝日vs巨人 15回戦


11月15日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 0 0 1 0 2 朝日 48勝50敗6分 0.490 内藤幸三
0 1 0 1 0 1 0 1 X 4 巨人 72勝27敗5分 0.727 藤本英雄

勝利投手 藤本英雄 10勝0敗
敗戦投手 内藤幸三   5勝10敗

二塁打 (朝)岩田

勝利打点 呉波 10

猛打賞 (巨)青田昇 5


藤本英雄は10連勝、呉波は10個目の勝利打点

 今季残り2試合となった朝日はここまで48勝49敗6分。この試合に勝って最終戦に5割確保の望みをつなぎたいところ。

 朝日は2回、一死後岩田次男が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、広田修三は三振に倒れるが、岩田が二盗を決めて二死二塁、中谷順次が左前にタイムリーを放って1点を先制する。

 巨人はその裏、一死後楠安夫が四球で出塁、青田昇が左前に痛打を放って一死一二塁、呉波が中前に同点タイムリーを放って1-1とする。

 巨人は4回、三番伊藤健太郎、四番中島治康が連続三振、しかし楠が中前打、青田も右前打で続いて二死一二塁、ここで呉が左前に勝越しタイムリーを流し打って2-1とリードする。

 巨人は6回、二死後中島がストレートの四球で出塁、楠もストレートの四球を選んで二死一二塁、青田が右前にタイムリーを放って3-1と突き放す。

 朝日は8回、二死後浅原直人が三塁に内野安打、浅原の二盗はタイミングはアウトであったがセカンド坂本茂が落球して二死二塁、岩田が左中間に二塁打を放って2-3と1点差に追い上げる。

 巨人はその裏、一死後楠が四球で出塁、青田も四球を選んで一死一二塁、呉に代わる代打林清一の左前打で一死満塁、三好主に代わる代打小暮力三は三振に倒れて二死満塁、藤本英雄が押出し四球を選んで4-2と再度突き放して試合を決める。


 藤本英雄は5安打6四球8三振の完投でデビュー以来10連勝、藤本のデビューイヤーは10勝0敗で勝率10割であった。


 朝日先発の内藤幸三は8安打8四球と乱れ、6三振を奪う力投ではあったが、朝日の勝率5割の夢は断たれた。


 呉波が10個目の勝利打点を記録した。今季の勝利打点ランキングは、中島治康が18個でトップ、古川清蔵は11個で二位、呉は三位となった。





 

2016年2月26日金曜日

17年 大洋vs名古屋 15回戦


11月14日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 計
0 0 1 0 0 0 0 1 大洋     59勝39敗6分 0.602 重松通雄 古谷倉之助
1 0 0 0 2 0 0 3 名古屋 38勝60敗6分 0.388 西沢道夫 森井茂

勝利投手 西沢道夫     7勝11敗
敗戦投手 古谷倉之助 5勝7敗
セーブ     森井茂     2

本塁打 (大)中村民雄 1号 (名)小鶴 2号

勝利打点 なし


2本塁打の競演

 第一試合から雨模様であったが午後2時14分、杉村正一郎主審の右手が上がりプレイボール。

 名古屋は初回、二死後小鶴誠がレフトスタンドに先制ホームランを叩き込んで1-0とする。

 大洋は3回、一死後中村民雄がレフトスタンドに同点ホームランを叩き込んで1-1と追い付く。

 名古屋は5回、一死後本田親喜が左前打で出塁すると二盗に成功、桝嘉一の二ゴロの間に二走本田は三進、小鶴が四球から二盗を決めて二死二三塁、古川清蔵の当りはセカンドフライ、ところが何とセカンド宇野錦次が落球、この間に三走本田に続いて二走小鶴も還って3-1と勝ち越す。

 大洋は8回表の攻撃で2点をあげて3-3の同点に追い付いた。8回裏名古屋の攻撃は、先頭の吉田猪佐喜が左前打で出塁、ここで雨脚が激しくなり雨天コールドゲームとなった。この場合、8回の記録はなかったこととなり、名古屋が3対1で7回コールド勝ちとなる。


 名古屋先発の西沢道夫は6イニングを投げて6安打1四球1三振1失点で7勝目をあげる。7回からリリーフした森井茂は7回は三者凡退に抑えたものの8回は大洋に2点を許してリードをフイにしたが、雨に救われて8回の記録はなかったこととなり、1イニングを投げて無安打無四球無三振無失点で当ブログルールによりセーブが記録された。


 決勝点は宇野錦次の落球によるもので7回雨天コールドゲームと締まらない試合となったが、中村民雄と小鶴誠によるホームランの競演は見応えがあった。シーズンも終盤となり、聯盟はストックしておいたニューボールを卸したようで、11月18日の最終戦までホームランが出まくることとなる。




「雑記」欄に7回コールドゲームとなった経緯が書かれている。