2015年6月30日火曜日

17年 大洋vs阪神 10回戦


8月8日 (土) 西京極

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 大洋 35勝24敗5分 0.593 野口二郎 三富恒雄
0 0 0 3 0 1 0 0 X 4 阪神 36勝28敗2分 0.563 若林忠志
 
勝利投手 若林忠志 15勝8敗
敗戦投手 野口二郎 23勝11敗

二塁打 (大)中村、野口明 (神)田中、若林

勝利打点 若林忠志 1


若林の執念

 大洋は初回、先頭の中村信一が中前打で出塁、濃人渉の投前送りバントをピッチャー若林忠志がダッシュよく飛び出し二塁に送球して中村を二封、野口二郎のライト線ヒットで濃人は三塁に進み一死一三塁、野口が二盗を決めて一死二三塁と先制のチャンス、しかし期待の野口明は投飛、村松長太郎は三振に倒れてチャンスを逸す。

 阪神は4回、先頭のカイザー田中義雄が三塁に内野安打、土井垣武が四球を選び、藤井勇の三ゴロで土井垣が二封されて一死一三塁、松尾五郎の三ゴロで三走田中は動かず藤井が二進して二死二三塁、ここで若林が右中間に二塁打を放ち2点を先制、パスボールで若林は三進、野口昇が右前に追撃のタイムリーを放って3-0とする。

 阪神は6回、一死後松尾が中前打、若林の三ゴロの間に松尾は二進、野口昇は四球を選び二死一二塁、塚本博睦の中前タイムリーで4-0とする。

 初回のピンチを凌いだ阪神先発の若林は快調なピッチングで3回、4回と三者凡退。4回に自ら先制打を放った後の5回に再びピンチを迎える。

 大洋は5回、先頭の山川喜作はライト山口政信への飛球に倒れてワンアウト、佐藤武夫が四球を選んで一死一塁、阪神はここでライトを山口から上田正に交代、戦場から復帰したばかりの山口はまだ体力が回復しておらず途中退場するケースが多いのでこの交代は不思議ではない。阪神は若林監督が投げている時は誰かベンチコーチがいるのか、田中義雄主将が若林と英語で意思疎通できるので田中がベンチコーチを務めているのかもしれないが、田中もキャッチャーとして出場しているので田中と若林がマウンド上で英語でコンタクトをとってライトの交代を決めたのではないでしょうか。織辺由三の三ゴロで一走佐藤は二封、トップに返り中村の右中間二塁打で二死二三塁、濃人は四球を選び二死満塁で野口二郎を迎えるが、野口は遊飛に倒れてこの回も無得点。このシーンが本日のハイライトであった。

 大洋は6回も一死後村松、浅岡三郎が連続四球を選ぶが山川は右飛、佐藤は中飛に倒れて無得点。

 大洋は7回の守備から先発の野口二郎をベンチに下げて二番手として三富恒雄がマウンドに上がる。

 大洋は8回、先頭の野口明が右中間に二塁打、村松の中前打で無死一三塁、しかし浅岡は三振、山川も連続三振、このあたりは若林の執念を感じさせる。佐藤が四球を選んで二死満塁、ここで織辺が中前に2点タイムリーを放って2-4と2点差に迫り、中村の当りはレフトライナーに終わってこの回2点止まり。

 大洋は9回、一死後三富が右前打を放って出塁、野口明も中前打、村松が四球を選んで一死満塁と一打同点のチャンスを迎える。しかし浅岡のライトへの鋭いライナーは上田の正面に飛び、捕球した上田が二塁に送球、離塁していた二走野口明が戻れず試合終了。


 若林忠志は粘りのピッチングで9安打7四球4三振2失点の完投、15勝目をあげる。執念のピッチングであった。
 



 

2015年6月29日月曜日

17年 南海vs阪神 10回戦


8月7日 (金) 神戸市民

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 3 1 0 1 5 南海 35勝31敗 0.530 木村忠彦 徳島忠彦
0 4 2 0 0 0 1 0 X 7 阪神 35勝28敗2分 0.556 御園生崇男 藤村隆男 若林忠志

勝利投手 御園生崇男 10勝7敗
敗戦投手 木村忠雄       0勝1敗
セーブ     若林忠志    2

二塁打 (神)野口
三塁打 (神)塚本
本塁打 (南)増田 1号

勝利打点 野口昇 1


増田敏、ランニングスリーランホームラン

 不動の三番・北原昇を欠く南海は万能選手・国久松一を三番に入れてきた。先発はプロ入り初登板となる木村忠彦が務める。

 南海は初回、二死後その国久が中前打から二盗に成功、岩本義行が死球を受けて二死一二塁、しかし五番に入った岡村俊昭は一ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪神は2回、先頭の藤井勇が二遊間に内野安打、御園生崇男は遊飛に倒れるが、松尾五郎が四球を選んで一死一二塁、野口昇がレフト線に二塁打を放ち1点を先制、一走松尾も二塁、三塁を回ってホームに突進、タイミングはアウトであったがレフト国久からのバックホームが悪送球となって松尾も生還、2-0とする。更に塚本博睦が右中間に三塁打を放って3-0、トップに返り山口政信も中前にタイムリーを放ち4-0とする。

 阪神は3回、先頭の土井垣武がセンター右にヒット、藤井は四球、南海ベンチはここで先発の木村から徳島忠彦にスイッチ、御園生の投ゴロの間に二者進塁して一死二三塁、松尾が右前に2点タイムリーを放って6-0と突き放す。

 南海は6回、先頭の岩本が中飛に倒れて一死無走者、阪神ベンチはここで先発の御園生から藤村隆男にピッチャー交代、岡村も左飛に倒れて二死無走者、中野正雄の三ゴロでスリーアウトチェンジと思われたところサード土井垣がエラー、続く徳島の一ゴロを今度はファースト藤井がエラー、二死一二塁となって増田敏の当りはセカンドとセンターの間への小フライ、セカンド松本貞一がバック、センター山口が前進するも二者が衝突、白球が転々とする間に二走中野に続いて一走徳島もホームイン、更に打者走者の増田も二塁、三塁を回ってホームに還りランニングスリーランホームランが記録された。

 3点差に追い上げた南海は7回、一死後猪子利男が四球で出塁、国久の右前打で一死一三塁、ここは「打走法」か。国久が二盗を決めて一死二三塁、岩本の遊ゴロの間に三走猪子が還って4-6、岡村が四球を選んで二死一三塁、阪神ベンチはここで藤村を下げて若林忠志監督が三番手としてマインドに上がる。岡村も二盗を決めて二死二三塁と一打同点のチャンス、中野正雄は投ゴロに打ち取られて追加点はならなかったが、試合は風雲急を告げてきた。

 しかし阪神はその裏、先頭の若林が左前打で出塁、松尾は中飛に倒れるが野口が四球を選んで一死一二塁、塚本の三ゴロが「5-4-3」と転送されてゲッツーと思われたところ、セカンド猪子からの一塁転送が悪送球となる間に三走若林が還って7-4と再度突き放す。

 南海は9回、先頭の柳鶴震が左前打、レフト松尾がファンブルする間に柳は二塁に進み、猪子の二ゴロで柳が三塁に向かうとセカンド平林栄治がサードに投げてセーフ、野選が記録されて無死一三塁、国久の左犠飛で柳が還り5-7、しかし岩本の三ゴロが「5-4-3」と渡りダブルプレーが完成してゲームセット。


 北原昇を欠く南海は健闘したが、その影響は7回の守備で顕在化した。2点差に追い上げた7回裏、一死一三塁からの三ゴロはゲッツーかに見えたがセカンド猪子利男からの一塁転送が悪送球となって再び3点差となってしまったのである。猪子は開幕からずっとショートを守っており、セカンドでのゲッツーにおける一塁反転はショートとは逆の動きとなる。北原であればゲッツーが完成して反撃の可能性は十分考えらるところであった。


 猪子利男がセカンドに回ったため、ショートにはルーキーの増田敏が起用された。増田が6回に記録した本塁打はランニングホームランであった。昭和17年と18年に通算84試合に出場して戦場に去って行った増田敏が球史に刻んだ唯一の本塁打であった。増田は戦死することとなる。



*北原昇の欠場によりショートに起用された増田敏は4打数2安打3打点1本塁打を記録した。







*「雑記」欄には「山口と松本が衝突。球が転々としてる間本塁打となる。」と書かれている。







 

2015年6月28日日曜日

北原昇離脱



 南海の好守の要、北原昇は8月5日の朝日戦3回表の攻撃で、二死から内野安打で出塁すると二盗を試み失敗したが、この際負傷して3回裏の守りにつくことはなく途中退場した。この後、北原がグラウンドに立つことは永遠になかったのである。


 開幕から三番セカンドで65試合に出場してきた北原は、この日の負傷により欠場が続く。北原の欠場は胸の病が悪化したからというのがこれまでの定説であったが、そのきっかけとなったのはこの負傷途中退場であった。胸の病の悪化が重なり、応召のためグラウンドに立つこともなく、戦地にて戦病死したと伝えられているが真相は定かではない。


 戦前の二塁手と言えば苅田久徳、千葉茂となるのがこれまでの定説であったが、当ブログの読者のレベルであれば、北原昇が苅田、千葉に近い存在であったことがご理解いただけるのではないでしょうか。これまで検証してきたように、実戦的な選手であり、好走守に洗練されたプレーを見せる玄人好みの選手である。


 「Wikipedia」に書かれている内容はほとんどが事実と乖離又は誤認しているので、簡単に経歴を紹介します。松本商業時代は昭和8年の春と夏の甲子園に出場し、いずれも初戦で敗退しています。センバツでは1回戦負けながら「優秀選手賞」に選ばれています。立教大学で活躍した後は満州に渡り、昭和15年の都市対抗に田部と共に出場して決勝に進出して準優勝、昭和16年の都市対抗が中止となったことが同年秋に南海入りした原因でしょう。北原のプロ入りはプロを希望したと言うより、野球ができる環境を求めた末の行動でしょう。自身の胸の病もあり、体が動くうちは野球を続ける決心であったと考えられます。プロ入り後はすぐにレギュラーとして起用され、10月23日から11月16日の14試合に出場して51打数17安打で3割3分3厘、これが驚異的な成績であることはお伝えしてきたとおりです。昭和17年は開幕から不動の三番セカンドとして全試合に出場してきましたが、無念のリタイアとなり、グラウンドを後にすることとなったのです。



*3回表の攻撃、二死後内野安打で出塁すると二盗を試みるが失敗したシーン。





*「雑記」欄には「北原負傷」と書かれている。




*「備考欄」には「北原二盗のとき負傷」と書かれている。





*昭和8年センバツ出場時のメンバー表(選抜高等学校野球大会50年史」より)




*センバツでは1回戦で敗退ながら「優秀選手賞」を獲得した。


 



*昭和8年夏の甲子園は初戦敗退。




*昭和15年の都市対抗は大連実業から出場して決勝に進出。




 

17年 巨人vs黒鷲 10回戦


8月7日 (金) 神戸市民

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 1 0 0 0 0 0  0   0   0  1 巨人 42勝18敗3分 0.700 中尾輝三 須田博
0 1 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0  1 黒鷲 15勝42敗6分 0.263 畑福俊英

二塁打 (巨)中尾、楠 (黒)玉腰

勝利打点 なし


畑福俊英、延長12回を自責点ゼロ

 このところ変則日程となっており、この日は神戸市民球場で2試合が行われる。観衆は2,700人であった。巨人は中尾輝三が7月27日の黒鷲9回戦以来の先発。8月1日の阪神戦は須田博、2日の大洋戦は広瀬習一が先発しており、巨人のローテーションは上位チームは須田と広瀬、下位チームは中尾と変化している。

 巨人は初回、先頭の白石敏男が四球で出塁、水原茂の三前バントが内野安打となって無死一二塁、中島治康は初球を打って遊飛、川上哲治が2球目に手を出すと二ゴロ、「4-6-3」と渡ってダブルプレー。

 巨人は2回、先頭の楠安夫が四球で出塁、伊藤健太郎の三ゴロで楠は二封、青田昇の遊ゴロが「6-4-3」と渡って2イニング連続のダブルプレー。

 黒鷲は2回裏、一死後富松信彦がストレートの四球で出塁、小松原博喜は三塁に内野安打、杉江文二の三ゴロで小松原が二封されて二死一三塁、木村孝平が左前にタイムリーを放って1点を先制する。

 3回は三者凡退に終わった巨人は4回、先頭の中島が左前打で出塁、川上の二ゴロでランナーが入れ替わり、楠の三ゴロをサード玉腰忠義が一塁に悪送球、一死一二塁から伊藤の三ゴロはお誂え向きのゲッツーコースとなり玉腰が二塁に送球して一走楠は二封、セカンド木村が一塁に転送するがこれが高く逸れて白球がファウルグラウンドを転々とする間に二走川上が三塁からホームに生還、1-1の同点とする。

 2個のエラーで1点は失ったものの、黒鷲先発の畑福俊英は奮闘した。6回まで2安打1失点、7回二死後中尾に左中間二塁打を許すが白石を三ゴロに打ち取り無失点。8回は先頭の水原に左前打を打たれ、中島は右飛に打ち取るが川上にも左前に運ばれ一死一二塁、しかし楠の遊飛に二走水原が飛び出してゲッツー。9回、10回は三者凡退に抑える。

 巨人先発の中尾は3回から8回まで黒鷲打線を玉腰の内野安打1本に抑えて無失点。9回、一死後玉腰に右中間二塁打を許して一打サヨナラのピンチを迎えるが、木下政文を三振、富松を一ゴロに打ち取り無失点。10回、一死後杉江に右前打を許し、続く木村の初球に二盗を決められて一死二塁と再び一打サヨナラのピンチを迎えたところで藤本定義監督が出てきて須田博と交代した。木村はカウントノースリーから打って出たがセカンドフライに倒れて二死二塁、畑福も二ゴロに倒れてこの回も無得点。

 巨人は11回表、二死後楠が左中間に二塁打を放つが呉波は二ゴロに倒れてここも無得点。12回は三者凡退に終わる。

 黒鷲も11回、12回と須田に抑えられ、延長12回引き分けた。


 畑福俊英は12回を完投して6安打4四球1三振1失点、自責点はゼロであった。2本の二塁打を打たれたがいずれも二死からであったことが得点を許さなかった要因となった。


 好打者木村孝平は2回に先制タイムリーを放ったが、4回の守備で痛恨のタイムリーエラーを犯して1点を失い、勝利打点をふいにした。10回裏の一死二塁の場面では、須田に対してカウントスリーボールナッシングから果敢に打って出たがセカンドフライ、これは責められない。


 

2015年6月27日土曜日

クリス・セールと守山恒太郎



 現在、7試合連続二桁奪三振を継続中のクリス・セール。1914年以降で7試合連続二桁奪三振を記録した投手はノーラン・ライアン、ペドロ・マルチネス、ランディ・ジョンソンだけで、クリス・セールは次回の登板で新記録に挑むこととなります。


 「Wikipedia」によると、クリス・セールは子供の頃、「自宅のコンクリートの壁に穴が開くほど壁当てをしていた」とのことです。日本では、「球聖」守山恒太郎の逸話が有名です。一高の名投手として鳴らした守山恒太郎は元来コントロールが悪く、一高グラウンド一塁側後方にあった物理教室の煉瓦塀に球を投げ続けてコントロールを磨きますが、遂に煉瓦の一枚を壊したと伝えられており、「守山先輩苦心の跡」として保存されていました。


 野球の練習法として、「壁当て」は基本中の基本として重要視されています。「巨人の星」でも星飛雄馬が穴の開いた壁にボールを投げ込み電信柱に当ててまっすぐ返ってくるところ、それを目撃した川上哲治巨人軍監督が穴から出てくるボールをその穴に打ち返すもまっすぐ返らず、それを見た星一徹が「飛雄馬、しくじったな」と怒ると星飛雄馬は「俺は間違っていない」と主張し、星一徹が「あの球を壁の穴に打ち返せるのは川上しかおらん」と見抜くシーンが描かれています。キューバチームの選手も試合前、壁当てを盛んにやっています。日本では子供が壁当てをしているシーンも見られなくなりました。そんな場所もなくなる一方ですし。世界のレベルからますます離されていく日本野球を象徴していますね。








 「守山先輩苦心の跡」君島一郎著「日本野球創世記」より。










 *「日本野球創世記」を著した功績が認められて2009年に野球殿堂入りした君島一郎。宇都宮の写真館に保存されていた一高時代の写真です。夏休みを利用して母校の宇都宮中学をコーチした時のものであると推測されます。「日本野球創世記」に掲載されている同氏の写真と見比べてみれば、本人であることが分かります。










 

17年 名古屋vs大洋 9回戦


8月5日 (火) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋  22勝41敗2分 0.349 西沢道夫
2 0 0 0 0 1 0 0 X 3 大洋 35勝23敗5分 0.603 野口二郎

勝利投手 野口二郎 23勝10敗
敗戦投手 西沢道夫   4勝6敗

二塁打 (名)西沢 (大)野口二郎
三塁打 (大)野口明

勝利打点 野口明 4


野口兄弟

 大洋は初回、先頭の中村信一がいきなり死球を受けて出塁、濃人渉の送りバントは捕邪飛となって失敗、野口二郎の遊ゴロをショート木村進一がお手玉して一死一二塁、ここで野口明が右中間に三塁打を放ち2点を先制する。

 大洋先発の野口二郎は1回、2回を三者凡退。3回、先頭の西沢道夫にレフト線二塁打を許し、芳賀直一は三振に打ち取るが木村に中前打から二盗を許して一死二三塁のピンチを迎える。しかしトップに返り石丸藤吉を三振、岩本章には3球ファウルで粘られた末四球を与えて二死満塁、本田親喜を左飛に打ち取りこの回も無失点。野口はこのピンチを切り抜けて波に乗った。

 大洋は6回、一死後野口二郎がライト線に二塁打、野口明が右前にタイムリーを放って好投を続ける弟を援護する。

 6回まで3安打無失点の野口二郎は7回、一死後飯塚誠に中前打、西沢は左飛に打ち取るが芳賀にも中前打を許して二死一二塁、ここも木村を三ゴロに打ち取り無失点。

 野口二郎は8回、9回も無失点で切り抜け、5安打1四球7三振で2試合連続、今季11度目の完封で23勝目をあげてハーラーダービーを独走する。


 弟二郎を援護したのが兄の野口明であった。この日は3打数2安打三塁打1本で3打点、チームの全打点をあげる獅子奮迅の活躍であった。



*野口二郎は5安打完封で23勝目をマーク。






*野口明が3打点をマークした名古屋打線。



 

2015年6月26日金曜日

17年 南海vs朝日 10回戦


8月5日 (火) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 3 0 0 1 4 南海 35勝30敗 0.538 神田武夫
1 0 0 0 0 1 0 0 0 2 朝日 29勝33敗2分 0.468 福士勇 林安夫

二塁打 (朝)岩田、鬼頭
三塁打 (朝)坪内

勝利打点 神田武夫 2


神田武夫、完投&決勝打

 南海vs朝日の9回戦と10回戦は二連戦となった。南海の先発は勝ち星で林安夫に並ばれた神田武夫。

 朝日は初回、先頭の坪内道則が神田の初球をいきなり左中間に三塁打、室脇正信の遊ゴロをショート猪子利男がエラーする間に坪内が還り1点を先制する。

 南海打線は毎回走者を出しながら3回まで無得点。4回、一死後国久松一の二ゴロをセカンド鬼頭政一がエラー、岡村俊昭の左前打で一死一二塁、中村金次の左前打で二走国久が三塁ベースを回って同点のホームを狙うが、レフト室脇からの好返球にタッチアウト、八木進が四球を選んで二死満塁とするが、神田は一ゴロに倒れてこの回も無得点。

 南海は6回、先頭の国久がショートに内野安打、岡村が四球を選んで無死一二塁、中村が送って一死二三塁、八木に代わる代打中野正雄の一ゴロをファースト広田修三がエラーする間に三走国久が還って1-1の同点、中野が二盗を決めて一死二三塁、神田の右前タイムリーで2-1と勝越し、トップに返り柳鶴震の遊ゴロ併殺崩れの間に三走中野が還って3-1とする。

 朝日は6回裏、先頭の鬼頭が左越えに二塁打、浅原直人の右前タイムリーで2-3と追い上げる。

 朝日は7回から先発の福士に代わって5連投の林安夫がマウンドに上がる。林は7月27日の大洋戦から昨日の南海戦まで、試合のある日は全て先発してオール完投で4連勝を続けている。

 南海は9回、一死後岩本義行が四球を選んで出塁、国久の遊ゴロをショート五味芳夫がエラーして一死一三塁、岡村の一ゴロをファースト山本秀雄が二塁に悪送球する間に三走岩本が還って4-2と突き放す。


 神田武夫は6安打3四球1死球3三振の完投で19勝目をあげてハーラー単独2位に返り咲く。6回に決勝打を放ち勝利打点も記録した。


 昨日は南海が4エラーで朝日は3エラー、この日は南海が3エラーで朝日は5エラー、エラー合戦となった二連戦であった。


 

2015年6月24日水曜日

17年 南海vs朝日 9回戦


8月4日 (月) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 2 0 0 1 0 0 0 4 南海 34勝30敗 0.531 徳島忠彦 石田光彦
2 1 0 2 0 0 1 0 X 6 朝日 29勝32敗2分 0.475 林安夫

勝利投手 林安夫   18勝14敗
敗戦投手 石田光彦 6勝8敗

二塁打 (南)岡村 
本塁打 (朝)浅原 1号

勝利打点 浅原直人 2


浅原直人、4打点

 朝日は林安夫を五番に起用、林のスタメン五番はデビュー戦となった3月30日の阪神戦以来2度目のこととなる。

 南海は初回、先頭の柳鶴震が左前打で出塁、レフト室脇正信からの返球の隙を突いて柳は二進、猪子利男の三ゴロをサード岩田次男が一塁に悪送球、二走柳がホームに還り1点を先制する。柳の好走塁が光った。

 朝日は1回裏、先頭の坪内道則がサード柳の悪送球で生き、室脇正信が四球を選んで無死一二塁、鬼頭政一の投前送りバントが野選を誘って無死満塁、浅原直人の遊ゴロをショート猪子利男もエラー、三走坪内に続いて二走室脇も還り2-1と逆転、浅原には1打点が記録された。南海ベンチは早くも先発の徳島忠彦から石田光彦にスイッチ、無死一三塁から林の三ゴロで三走鬼頭がホームを突くがサード柳からの送球にタッチアウト、キャッチャー八木進の二塁牽制が悪送球となり二者進塁して一死二三塁、岩田次男のショートライナーに三走浅原が飛び出してダブルプレー、いろいろあったが朝日が無安打で逆転した。

 朝日は2回、一死後広田修三がサード柳の2つ目のエラーで生き、五味芳夫は三振に倒れるがスリーストライク目に広田が二盗に成功、トップに返り坪内の左前タイムリーで3-1とする。

 南海は3回、先頭の石田がファーストに内野安打、トップに返り柳のバントはピッチャー林が二塁に送球して石田を二封、猪子の左前打で一死一二塁、北原昇は一邪飛に倒れて二死一二塁、岩本義行の左前打をレフト室脇が後逸、二走柳に続いて一走猪子も還って3-3の同点とする。岩本には1打点が記録された。

 朝日は4回、先頭の広田がストレートの四球で出塁、五味の投前バントはピッチャー石田が巧く捌いて広田を二封、トップに返り坪内のピッチャー強襲ヒットで一死一二塁、室脇に代わる代打早川平一の三ゴロの間に二者進塁、鬼頭が四球を選んで二死満塁、このチャンスに四番・浅原が左前にタイムリーを放って5-3と勝ち越す。

 南海は6回、二死後国久松一が右前打で出塁、岡村俊昭が中越えに二塁打を放って国久を迎え入れ4-5と追いすがる。

 朝日は7回、先頭の浅原がレフトスタンドにホームランを叩き込んで6-4とする。


 林安夫は7回以降の南海打線を三人ずつで片付け、7安打無四球3三振の完投で18勝目をあげる。


 朝日の四番に定着してきた浅原直人が3打数2安打4打点、1本塁打を記録した。


 

2015年6月23日火曜日

17年 黒鷲vs阪急 9回戦


8月4日 (月) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
0 3 0 0 1 0 0 0  0  4 黒鷲 15勝42敗4分 0.263 金子裕 畑福俊英
0 0 2 0 0 0 0 1 2X 5 阪急 32勝29敗2分 0.525 橋本正吾 天保義夫 森弘太郎

勝利投手 森弘太郎 16勝10敗
敗戦投手 畑福俊英   2勝7敗

二塁打 (急)山下好一、中村
三塁打 (黒)金子 (急)中島

勝利打点 中島喬 3

猛打賞 (黒)玉腰忠義 1


中島喬、逆転サヨナラ三塁打

 黒鷲は2回、富松信彦、小松原博喜が連続四球、杉江文二が送って一死二三塁、木村孝平は浅い右飛に倒れるが、金子裕が左中間に三塁打を流し打って2点を先制、トップに返り山田潔の左前タイムリーで3-0として試合の主導権を握る。阪急ベンチはここで先発の橋本正吾をあきらめて天保義夫を投入、天保が渡辺絢吾を二ゴロに打ち取りスリーアウトチェンジ。

 阪急は3回、先頭の天保がストレートの四球で出塁、トップに返りフランク山田伝が右翼線にヒットを放ち無死一二塁、上田藤夫の三ゴロで山田伝が二封され、上田が二盗を決めて一死二三塁、黒田健吾が四球を選んで一死満塁、黒鷲ベンチはここで先発の金子から畑福俊英にスイッチ、山下好一の遊ゴロは絶好の併殺チャンスとなったが、セカンド木村からの一塁転送が悪送球となる間に三走天保に続いて二走上田も還って2-3と追い上げる。

 黒鷲は5回、一死後玉腰忠義がレフト線に二塁打、玉腰が三盗を決め、キャッチャー池田久之の悪送球の間にホームに還って4-2と突き放す。

 黒鷲二番手の畑福は4回、先頭の池田に左前打を許し、中村栄に送られて一死二塁とするが後続を抑え、5回は三者凡退。6回、一死後井野川利春に四球、池田は右飛に打ち取るが中村に四球、天保にも四球を与えて二死満塁とするが、トップに返り山田伝を二ゴロに抑えて無失点。

 阪急二番手の天保は7回、8回を三者凡退に抑える。

 阪急は8回裏、先頭の中島が右前打を放って出塁、井野川は中飛、池田は三振に倒れて二死一塁、ここで畑福からの一塁牽制をファースト杉山東洋夫が後逸する間に一走中島は三塁に進み、中村の捕前内野安打で中島が還って3-4と1点差に詰め寄る。

 阪急は9回表に天保に代えて三番手として森弘太郎を投入、森は黒鷲打線を三者凡退に抑えて味方の反撃を待つ。

 阪急は9回裏、一死後上田が中前打で出塁、黒田が四球を選んで一死一二塁、山下好一は一邪飛に倒れて二死一二塁、ここで中島喬が右中間に起死回生の逆転サヨナラ三塁打を放って、阪急が昨日に続いて接戦をものにする。


 勝利投手は9回に1イニングを投げた森弘太郎に記録されたが、6回3分の1を2安打3四球1三振1失点、自責点0でつないだ二番手天保義夫の好投が阪急の逆転を呼び込んだ。


 サヨナラ三塁打を放った中島喬は第1打席が左飛、第2打席の四球を挟んで第3打席は遊ゴロと、引っ張って凡打を重ねていたが、8回に打撃を修正して右前打、これが最終回の右中間三塁打につながったのである。


 

2015年6月22日月曜日

17年 阪急vs名古屋 10回戦


8月3日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 1 0 0 0 0 1 2 6 阪急     31勝29敗2分 0.517 義川泰造 中田武夫 笠松実
2 0 0 0 0 0 3 0 0 5 名古屋 22勝40敗2分 0.355 西沢道夫 河村章

勝利投手 笠松実 10勝11敗
敗戦投手 河村章   5勝13敗

二塁打 (名)吉田
三塁打 (名)古川、吉田
本塁打 (急)森田 2号

勝利打点 なし

猛打賞 (名) 古川清蔵 1


下駄を履くまで

 名古屋は初回、二死後本田親喜が四球を選んで出塁、吉田猪佐喜が右中間に二塁打を放って本田が還り1点を先制、古川清蔵も右越えに三塁打を放って2-0、阪急ベンチは早くも先発の義川泰造をあきらめて中田武夫をリリーフに送り、飯塚誠は遊ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は2回、一死後森田定雄がストレートの四球で出塁、池田久之が三塁に内野安打、中村栄は三振に倒れるが、中田がストレートの四球を選んで二死満塁、トップに返りフランク山田伝が押出し四球を選んで1-2、上田藤夫が左前にタイムリーを放って2-2の同点、名古屋ベンチもここで先発の西沢道夫から河村章にスイッチ、黒田健吾は遊飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は3回、一死後中島喬が四球を選ぶと二盗に成功、更にワイルドピッチで三進、森田の遊ゴロをショート木村進一がエラーする間に中島が還って3-2と逆転する。

 名古屋二番手の河村は4回、先頭の中田に右前打を許してから俄然調子を上げ、8回二死まで14人連続凡打に打ち取るナイスピッチング。

 河村の好投に応えたい名古屋打線は7回、先頭の石丸藤吉が四球で出塁、続く岩本章のカウントがツーボールナッシングとなったところで、阪急ベンチはここまで何とか凌いできた二番手の中田から三番手笠松実にスイッチ、岩本は笠松からも2つボールを選んで四球で出塁、与四球は中田に記録される。本田は一塁線に送りバントを決めて一死二三塁、ここで吉田が右越えに逆転三塁打を放ち4-3、古川も左前にタイムリーを放って5-3とする。


 二番手河村が打てない阪急は8回も二死無走者、しかしここで森田がライトスタンドにホームランを叩き込んで4-5と1点差に追い上げる。当ブログが森田を「最も無名の最強打者」と呼んでいるのはご存知のとおり、ボールの飛ばない時代に流し打ちでスタンドインさせるパワーの持主です。

 1点差に追い上げた阪急は9回、先頭の中村に代わる代打日比野武が左前打を放つと代走に西村正夫を起用、笠松は送らずに打って出て中飛、トップに返り山田の打席で西村が勝負を賭けて二盗を試みるがキャッチャー古川からの送球にタッチアウト、誰しもが万事休すと見たが、山田が粘って四球を選び二死一塁、上田の当りは三ゴロ、今度こそ万事休すかと思われた瞬間、サード芳賀の一塁送球が低く逸れて白球はファウルグラウンドを転々とする。一走山田は快足を飛ばして二塁、三塁を回り同点のホームに突進、バックアップしたライトは強肩吉田猪佐喜、吉田からの本塁送球はタイミングはアウトで今度こそ本当に万事休すと思われた瞬間、キャッチャー古川がこれを後逸して山田が生還、5-5の同点、更に打者走者の上田も二塁、三塁を回ってホームに還り遂に6-5と大逆転。


 名古屋は9回裏、先頭の本田が三前にセーフティバントを決めるが、吉田は二飛、古川の遊ゴロで本田は二進、最後は飯塚が投飛に倒れて、二転三転のゲームは阪急が逆転勝ちした。


 勝負は一寸先は闇、下駄を履くまで分かりません。





*5人の投手の中で最も好投したのは敗戦投手となった河村章であった。











*壮絶な戦いを見せた両軍ナイン。








 

2015年6月21日日曜日

17年 南海vs黒鷲 10回戦


8月3日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 2 3 南海 34勝29敗 0.540 石田光彦 神田武夫
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 黒鷲 15勝41敗4分 0.268 石原繁三

勝利投手 石田光彦   6勝7敗
敗戦投手 石原繁三 10勝17敗
セーブ     神田武夫  4

二塁打 (南)北原
三塁打 (南)猪子 (黒)木村

勝利打点 岩本義行 5


神田武夫、4セーブ目

 南海は3回まで無安打。右打者8人のうち三ゴロが4個と遊ゴロが2個、国久松一が投ゴロで北原昇だけがセカンドライナーに倒れており、右投げ左打ちの岡村俊昭は二ゴロ失と、黒鷲先発石原繁三の投球を引っ張って凡ゴロを重ねている。

 二巡目に入った南海は4回、打法を修正して先頭の柳鶴震は中飛、続く猪子利男がライトに三塁打を放ち、北原はサードライナーに倒れるが、岩本義行が左前にタイムリーを放って1点を先制する。

 黒鷲は初回、先頭の山田潔がストレートの四球で出塁、しかし渡辺絢吾は送らずライトフライ、玉腰忠義は三振に倒れ、小松原博喜が四球を選んで二死一二塁とするが、鈴木秀雄は三振に倒れて無得点。

 黒鷲は2回、先頭の木下政文がストレートの四球で出塁すると二盗に成功、しかし杉江文二は投ゴロ、木村孝平は二飛、石原繁三は右飛に倒れ、木下を三塁に進めることもできずに無得点。

 黒鷲は3回、一死後渡辺が一塁に内野安打、玉腰の右前打で一死一三塁のチャンスを迎えるが、小松原は二飛、鈴木は二ゴロに倒れてこの回も無得点、黒鷲の敗因は序盤のチャンスを生かせなかったことにある。

 南海は1点リードの7回から先発の石田光彦に代えて神田武夫をマウンドに送り逃げ込みをはかる。石田はここまで黒鷲打線を2安打無失点に抑えているが5四球を出しており妥当な継投策でしょう。

 神田は7回、先頭の木村は二飛に打ち取るが石原に三前セーフティバントを決められ、トップに返り山田をストレートの四球で歩かせて一死一二塁、渡辺の三ゴロで一走山田が二封されて二死一三塁、ここで黒鷲ベンチは同点を狙ってダブルスチールを敢行するが「2-4-2」と送球されて三走石原は本塁憤死、セカンド北原の冷静なプレーが光った。

 南海は9回、先頭の北原がレフト線に二塁打、岩本は左飛に倒れて一死二塁、国久松一の三ゴロをサード玉腰が一塁に悪送球する間に二走北原が一気にホームに還り2-0、国久が二盗を決めて岡村の二ゴロで三進、中野正雄が左前にタイムリーを放って3-0とする。神田には貴重な援護点となった。

 神田は9回、先頭の木下を三振、杉江を投ゴロに打ち取るが、木村に左中間三塁打を許して二死三塁、しかし最後は石原を三振に打ち取り南海が逃げ切る。

 石田光彦は6イニングを2安打5四球2三振無失点で6勝目、神田武夫は3イニングを2安打1四球3三振無失点に抑えて4セーブ目をマークする。


 南海は胸の病に苦しむ神田をリリーフに使った。神田の病は知られていなかったと言われており、当時の新聞・雑誌には神田の不振について「投げ過ぎによる疲労」と書かれている。神田が投げると不思議と北原が活躍する。7回には重盗を防ぐ送球で黒鷲の同点機を阻み、9回には二塁打を放って貴重な追加点のきっかけとした。共に胸の病を抱える身とあって、相通じるものがあったようだ。


 

2015年6月20日土曜日

17年 巨人vs大洋 10回戦


8月2日 (土) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0  0 巨人 42勝18敗2分 0.700 広瀬習一
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0  0 大洋 34勝23敗5分 0.596 三富恒雄

勝利打点 なし


広瀬-三富の投げ合い

 広瀬習一と三富恒雄による投げ合いは、いつ果つるとも知らぬ死闘となった。

 巨人は初回、一死後復帰してきた水原茂がストレートの四球で出塁、中島治康の三ゴロは「5-4-3」と渡ってダブルプレー。2回、一死後楠安夫が右前打、伊藤健太郎は一邪飛に倒れるが呉波が四球を選んで二死一二塁、坂本茂は二ゴロに倒れて無得点。3回、先頭の広瀬が中前打で出塁するが後続なく無得点。4回、二死後伊藤が左前打で出塁すると二盗を試みるがキャッチャー野口明からの送球にタッチアウト。

 5回、6回と三者凡退の巨人は7回、一死後楠が四球で出塁すると二盗を試みるが、ここも野口明からの送球にタッチアウト、伊藤は左飛に倒れて無得点。

 大洋は初回、二死後野口二郎の遊ゴロをショート白石敏男が一塁に悪送球、野口明は右飛に倒れてスリーアウトチェンジ。2回、二死後三富がショートに内野安打、しかし山川喜作は三振に倒れて無得点。3回、一死後中村信一が四球で出塁するが後続が倒れて無得点。4回、一死後村松長太郎が中前に快打、浅岡三郎も中前にライナーのヒットを放って一死一二塁、しかし三富は二飛、山川は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 5回は三者凡退に終わった大洋は6回、一死後野口明の遊ゴロを又も白石が低投、野口は二塁に進むが村松の遊ゴロで野口が三塁に走り、「6-5」と送球されてタッチアウト、浅岡は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。7回、一死後山川喜作が中前打、織辺由三が四球を選んで一死一二塁、トップに返り中村の二ゴロは「4-6-3」と渡ってダブルプレー。

 8回を三者凡退で終えた巨人は9回、先頭の白石が三前にセーフティバントを決めて出塁、水原が一塁線に送りバント、一走白石は二塁に進んで犠打が記録されたが水原は守備妨害でアウト、中島治康は二飛に倒れて二死二塁、川上哲治は敬遠で二死一二塁、楠は右飛に倒れてこの回も無得点。

 大洋は8回、9回と三者凡退に終わり延長戦に突入する。

 巨人は10回表、一死後呉がストレートの四球で出塁、坂本も4球ファウルで粘り四球、広瀬は右飛に倒れて二死一二塁、トップに返り白石の打球は一二塁間に飛ぶが一走坂本に当たって守備妨害でスリーアウトチェンジ、白石には内野安打が記録された。

 大洋は10回裏、先頭の山川の遊ゴロを白石がこの日3つ目の低投、織辺由が送って一死二塁とサヨナラのチャンスを迎えるが、トップに返り中村は二ゴロ、濃人渉は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 11回は両軍三者凡退。巨人は12回表、先頭の楠が中前打、伊藤が送って一死二塁、しかし呉は左飛、坂本に代わる代打林清一は三振に倒れてこの回も無得点。

 大洋の11回裏は三者凡退、延長12回引き分く。


 三富恒雄は12回を投げて6安打6四球4三振無失点、広瀬習一も12回を投げて4安打2四球9三振無失点であった。



*広瀬と三富の投げ合いは延長12回0対0の引分けに終わった。




 

2015年6月19日金曜日

17年 阪急vs阪神 10回戦


8月2日 (土) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 1 0 1 0 0 0 0  0   0   0  2  阪急 30勝29敗2分 0.508 笠松実 森弘太郎
0 0 0 2 0 0 0 0 0  0   0  1X 3  阪神 34勝28敗2分 0.548   御園生崇男

勝利投手 御園生崇男 9勝7敗
敗戦投手 森弘太郎   15勝10敗

二塁打 (急)日比野

勝利打点 なし


サヨナラ捕逸

 阪神に山口政信が戻ってきた。昭和13年秋季以来、4年ぶりに戦場から還ってきたのである。山口は「和製ディマジオ」と呼ばれ、昭和12年10月には藤井勇との激しい争いを制して月間MVPに選出(当ブログによる選出で公式記録ではありません)されるなど、戦前を代表する選手の一人です。

 1回、2回と三者凡退の阪急は3回、一死後中村栄が四球で出塁、笠松実は右飛に倒れるが、トップに返りフランク山田伝が四球を選んで二死一二塁、上田藤夫の先制中前タイムリーで1-0とする。

 阪神は初回、一番に起用された山口がいきなり右前打で出塁、昭和13年12月2日のジャイアンツ戦4回表に放った右前打以来のヒットとなる。松本貞一の三ゴロをサード黒田健吾がエラーして無死一二塁、ここで二走山口が「2-6-5」でタッチアウト、盗塁失敗が記録された。まだ試合勘が戻っていないようだ。松本が二盗を決めて一死二塁とするが、カイザー田中義雄の中飛に松本が飛び出しダブルプレー。

 3回に二死一二塁のチャンスを潰した阪神は4回、先頭の土井垣武が左前打、藤井勇も左前に流し打って無死一二塁、御園生崇男が送って一死二三塁、松尾五郎は捕邪飛に倒れて二死二三塁、野口昇が右前に逆転の2点タイムリーを放ち2-1とリードする。更に上田正が右前打を放って二死一二塁、阪急ベンチは先発の笠松から森弘太郎にスイッチ、トップに返り山口は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪神は5回の守備からセンターの山口に代えて金田正泰を起用する。山口の復帰初戦は2打数1安打1四球1三振であった。

 阪急は5回、先頭の日比野武が左中間に二塁打、中村が送って一死三塁、森の中犠飛で2-2の同点に追い付く。阪急ではここまで日比野と中村の活躍が目立つ。

 試合はこの後、御園生と森の投げ合いが続いて延長戦に突入。阪神は8回の守備から金田に代えて3人目のセンターとして塚本博睦を起用する。

 阪神は10回表、先頭の森田定雄が左前打で出塁、日比野は右飛に倒れるが中村が中前打を放って一死一二塁、森田定雄の中前打で二走森田が三塁ベースを蹴ってホームに向かうが、センター塚本からのバックホームにタッチアウト、阪神ベンチの塚本起用がズバリ的中した。

 阪神は12回裏、先頭の上田正が死球を受けて出塁、トップに返り塚本の投ゴロで上田は二封、これは送りバント失敗か、松本が中前打を放って一死一二塁、田中の遊ゴロをショート中村がエラーして一死満塁、土井垣の打席でキャッチャー日比野が痛恨のパスボール、三走塚本がサヨナラのホームを踏んだ。阪急vs阪神の10回戦は延長12回の熱戦となったが、意外な結末が待っていた。

 御園生崇男は6安打7四球2三振で12回を完投、9勝目をあげる。


 阪神では3人目のセンターに起用された塚本博睦が守っては10回に失点を防ぐバックホーム、打っては12回にサヨナラのホームを踏むラッキイーボーイとなった。阪急では活躍が目立った中村栄と日比野武が最後はエラーと捕逸でサヨナラ負けの因となる。こちらはツイていなかった。


 

2015年6月18日木曜日

17年 朝日vs南海 8回戦


8月2日 (土) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 1 0 0 0 0 2 朝日 28勝32敗2分 0.467 林安夫
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 南海 33勝29敗 0.532 長沼要男 神田武夫

勝利投手 林安夫     17勝14敗
敗戦投手 神田武夫 18勝13敗

二塁打 (朝)伊勢川

勝利打点 なし


坪内の擬走で決勝点

 南海は長沼要男がプロ入り初登板初先発。

 朝日は初回、先頭の坪内道則はツーツーから中飛に倒れるが、室脇正信が死球を受けて出塁、岩田次男はストレートの四球、浅原直人の三前ボテボテの当りをサード柳鶴震が一塁に送球するがセーフ、内野安打となる間に三塁に達していた二走室脇はホームに突っ込むが、ファースト広田修三からキャッチャー伊勢川真澄に渡ってタッチアウト、鬼頭政一がストレートの四球を選んで二死満塁としたところで南海ベンチは先発の長沼を下げて神田武夫をマウンドに送り、六番・林安夫は三飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 朝日先発の林は1回2回を三者凡退と上々の立ち上がり。3回、二死後柳鶴震に二塁打を打たれ盗塁を許すが、国久松一四球後、猪子利男を三ゴロに打ち取る。

 朝日は4回、先頭の浅原が四球で出塁するとパスボールで二進、鬼頭が送って一死三塁、林の右前タイムリーで1点を先制する。

 南海は4回裏、先頭の北原昇がショートに内野安打、岩本義行は左飛に倒れるが、岡村俊昭が四球を選んで一死一二塁、中野正雄は中飛に倒れて二死一二塁、神田が左前に同点タイムリーを放って1-1と追い付く。両軍エース同士がタイムリーを放った。

 朝日は5回、先頭の坪内が四球を選んで出塁、室脇が三前に送りバントを決めて一死二塁、岩田は三飛に倒れて二死二塁、浅原直人のカウントツーツーの時、二走坪内が三盗、キャッチャー国久松一からの送球が悪送球となって坪内が生還し2-1と勝ち越す。国久の悪送球は「2’-6」と記録されているのでショート猪子に送球したもの、ここは坪内のディレードスチールだったようだ。坪内の三塁進塁には盗塁が記録され、ホームへの進塁がエラー(国久の悪送球)によるものであった。


 林安夫は5回以降の南海の反撃を2安打無失点に抑え、5安打2四球1三振の完投で17勝目をあげる。



 

2015年6月17日水曜日

17年 大洋vs阪急 9回戦


8月1日 (金) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 1 1 0 2 大洋 34勝23敗4分 0.596 野口二郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急 30勝28敗2分 0.517 森弘太郎

勝利投手 野口二郎 22勝10敗
敗戦投手 森弘太郎 15勝9敗

二塁打 (大)濃人

勝利打点 浅岡三郎 2


野口二郎、1安打完封

 大洋打線はこのところ調子をあげてきた阪急先発の森弘太郎にてこずり、6回まで無安打に抑えられる。

 大洋は7回、先頭の野口二郎が三塁に内野安打、野口明の記録は「1-4-3」で一塁だけアウト。「打走法」が掛かっていて投ゴロをピッチャー森が二塁に送球したがセーフ、セカンド上田藤夫から一塁に転送されてアウト、又は、野口明の当りがピッチャーを強襲したがセカンド上田がカバーして一塁アウトでしょう。一死二塁となって村松長太郎が左前打を放ち一死一三塁、村松が二盗を決めて一死二三塁、浅岡三郎の三塁内野安打で1点を先制する。浅岡が二盗を決めて再び一死二三塁とするが、山川喜作は捕邪飛、佐藤武夫は三振に倒れて追加点はならず。

 大洋は8回、先頭の織辺由三がストレートの四球で出塁、トップに返り中村信一は二飛に倒れるが、濃人渉が三塁線を破る二塁打を放ち一死二三塁、野口二郎が中前にタイムリーを放って2-0と突き放す。


 大洋先発の野口二郎は2回に中島喬に二遊間内野安打を打たれたが、許したヒットはこの1本のみで、1安打1四球3三振で今季10度目の完封、6度の三者凡退を記録して22勝目をあげる。1安打完封は今季3度目となる。









*野口二郎は内野安打1本の完封で22勝目をあげる。







 

2015年6月15日月曜日

17年 阪神vs巨人 8回戦


8月1日 (金) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪神 33勝28敗2分 0.541 若林忠志
0 1 0 0 0 0 0 0 X 1 巨人 42勝18敗1分 0.700 須田博

勝利投手 須田博     11勝5敗
敗戦投手 若林忠志 14勝8敗

二塁打 (巨)白石、坂本
本塁打 (巨)呉 1号

勝利打点 呉波 5


須田博4安打完封

 巨人は水原茂が7月20日以来の出場となった。

 巨人は初回、先頭の白石敏男がライト線に二塁打を放つがピッチャー若林忠志からの牽制にタッチアウト、水原は遊飛に倒れるが中島治康が左前打、しかし川上哲治は遊ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 巨人は2回、一死後呉波の当りは右中間を破り、快足を飛ばしてホームに還って1点を先制、「雑記」欄には「場内ホームラン」と書かれており、ランニングホームランであったことが分かる。これが決勝点となり、呉に勝利打点が記録された。

 巨人先発の須田博は2回と5回に先頭打者の出塁を許すが何れも併殺に打ち取り、4安打2四球2三振で今季2度目の完封、11勝目をあげる。

 好調阪神打線は松本貞一、御園生崇男、カイザー田中義雄、藤井勇の散発4安打、うち2本は内野安打と完璧に抑え込まれた。阪神の完封負けは6月21日の阪急戦で森弘太郎に延長12回を封じられた以来のこととなる。


 水原茂の自伝「華麗なる波乱」には「応召から終戦まで」の項があり、召集からシベリア抑留について触れられている。そこには「赤紙」が来たのは「昭和17年9月1日のことだった」と書かれている。この時33歳の水原に徴兵検査があったのかどうかは分からない。「華麗なる波乱」にも徴兵検査については書かれていない。時系列的に考えると、関西遠征となった7月20日の朝日戦の後、高松に帰って徴兵検査を受け、チームは一旦東京に戻って8月1日から再び関西遠征となり、この日の西宮の試合から復帰したと考えるのが妥当ではないでしょうか。



*「雑記」欄には「場内ホームラン」と書かれており、呉波の本塁打はランニングホームランであったことが分かる。






 

2015年6月14日日曜日

17年 7月 月間MVP



7月 月間MVP

投手部門

 朝日 林安夫 1

 投手部門は広瀬習一、須田博、野口二郎、林安夫の争いとなった。

 広瀬習一は5勝1敗3完封、56回3分の2を投げて20奪三振、防御率1.11、WHIP0.76であった。

 須田博は5勝2敗、67回を投げて20奪三振、防御率0.94、WHIP0.85であった。

 野口二郎は7勝3敗3完封、87回3分の1を投げて49奪三振、防御率0.82、WHIP0.73であった。

 林安夫は6勝4敗3完封、97回3分の1を投げて31奪三振、防御率0.83、WHIP0.96であった。


 数字的には野口二郎にも見えますが、当ブログは投球回数を重視しますので、林安夫が受賞しました。



打撃部門

 阪神 土井垣武 1

 打撃部門は呉波と土井垣武の一騎打ちとなった。

 呉波は57打数18安打9得点5打点12四球3盗塁、打率3割1分6厘、出塁率4割3分5厘、長打率3割6分8厘、OPS0.803。

 土井垣武は69打数22安打12得点11打点、9四球1盗塁、打率3割1分9厘、出塁率3割9分7厘、長打率4割0分6厘、、OPS0.803。

 OPSは土井垣武が0.80323、呉波が0.80320の僅差であった。

 巨人勢では白石敏男が3割5厘、中島治康が2割9分4厘、川上哲治が2割6分2厘であった。


 激戦を制して土井垣武が受賞しました。





 

2015年6月13日土曜日

17年 第14節 週間MVP



 今節は巨人が3勝1敗、朝日が3勝2敗、阪急が3勝2敗、大洋が3勝3敗、阪神が2勝2敗、黒鷲が2勝3敗、南海が2勝3敗、名古屋が2勝4敗であった。


週間MVP

投手部門

 朝日 林安夫 4

 今節3勝0敗2完封、自責点はゼロで防御率は0.00。

 阪急 森弘太郎 2

 今節2勝0敗1完封。


打撃部門

 巨人 白石敏男

 今節15打数7安打2得点2打点2四球、二塁打1本。

 黒鷲 杉江文二 1

 今節17打数7安打2得点1打点1四球2盗塁、二塁打1本。

 朝日 岩田次男 1

 今節16打数5安打2得点4打点、二塁打2本、本塁打1本。



殊勲賞

 黒鷲 石原繁三 2

 7月27日の巨人戦ではリリーフで8イニングを投げて3安打無失点。

 阪神 カイザー田中義雄 1

 今節15打数6安打。25日の大洋戦では4打数4安打を記録。

 名古屋 河村章 1

 26日の朝日戦で3安打完封。


敢闘賞

 黒鷲 木村孝平 1

 今節14打数6安打2得点1打点、1盗塁2犠打、二塁打2本。

 大洋 村松長太郎 1

 今節23打数6安打1得点1打点1盗塁、二塁打1本、三塁打1本。

 阪神 松尾五郎 1

 今節14打数5安打3得点3打点1四球、三塁打1本。


技能賞

 黒鷲 富松信彦 1

 26日の巨人戦でライトからの好返球を見せる。

 阪急 日比野武 1

 27日の南海戦で2つの補殺を決める。

 大洋 重松通雄 1

 30日の黒鷲戦で自責点ゼロの4安打完投勝利。

 朝日 五味芳夫 4

 30日の名古屋戦では1打数無安打ながら2得点、くせ者ぶりを発揮する。


 

初めて見る沢村栄治



 沢村栄治の画像が発見されました。昨日のクローズアップ現代で放映され、ユーチューブにもアップされていますのでご覧になった方も多いかと思います。


 オーソドックスなオーバーハンドでいかにも快速球投手という投げ方。昭和11年12月11日に洲崎球場行われた年度優勝決定試合での投球と考えられ、全盛期の沢村のピッチングを見ることができます。


 NHKらしい構成で、事実と異なる点もありますが、公開してくれたのだからまぁ大目に見ておきましょう(笑)。沢村の動画は初めて発見されたと強調していますが、某地方放送局に保存されているとも言われています。


 この放送では一瞬ですがもう一人サイドハンドピッチャーの画像が確認できます。この試合に登板したのは沢村以外では巨人の前川八郎、タイガースの景浦将、若林忠志でした。若林と景浦はサイドハンド、前川は定かではありませんがサイドの可能性もあります。画像の感じからすると剛球投手の投げ方なので景浦将の可能性が高いのではないかと考えています。ウォルター・ジョンソンの投げ方に似ていますね。



 

2015年6月12日金曜日

17年 名古屋vs朝日 10回戦


7月30日 (木) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 1 0 0 0 0 0 3  4  名古屋 22勝39敗2分 0.361 河村章 森井茂
1 3 2 0 0 3 0 2 X 11 朝日    27勝32敗2分 0.458 林安夫

勝利投手 林安夫 16勝14敗
敗戦投手 河村章   5勝12敗

二塁打 (朝)岩田、大島、早川
三塁打 (朝)室脇
本塁打 (朝)岩田 1号

勝利打点 なし

猛打賞 (朝)坪内道則 4、林安夫 1


坪内道則と林安夫が猛打賞

 朝日は初回、先頭の坪内道則が中前打で出塁、室脇正信の三前バントは内野安打、サード芳賀直一の一塁送球が高く逸れて白球がファウルグラウンドを転々とする間に一走坪内が快足を飛ばしてホームを駆け抜け1点を先制する。

 朝日は2回、先頭の林安夫が中前にゴロで抜けるヒット、岩田次男の送りバントは投飛となって失敗、広田修三も一飛に倒れるが五味芳夫が四球を選んで二死一二塁、トップに返り坪内が中前にタイムリーを放って2-0、この打球をセンター桝嘉一が後逸する間に一走五味もホームに還り3-0、打者走者の坪内は三塁に進み、室脇の遊ゴロをショート木村進一が失して4-0とする。

 名古屋は3回、先頭の石丸藤吉が左前打で出塁、桝も左前打を放って無死一二塁、パスボールで石丸藤吉は三進、本田親喜の右犠飛で1-4とする。

 朝日は3回裏、先頭の浅原直人が四球で出塁、伊勢川真澄は中飛、林の二ゴロの間に浅原が二進して二死二塁、ここで岩田がセンターにランニングホームランを放ち6-1と大きくリードする。この当りはセンターへのライナーで「雑記」欄に「場内ホームラン」と書かれている。センターの前でイレギュラーバウンドしてフェンスまで抜けていった可能性が高い。

 朝日は6回、先頭の林が中前打で出塁、岩田がレフト線に二塁打を放って無死二三塁、広田は三振に倒れて一死二三塁、名古屋ベンチは先発の河村章から森井茂にスイッチ、五味は四球を選んで一死満塁、トップに返り坪内は一邪飛に倒れて二死満塁、ここで室脇が右中間に走者一掃の三塁打を放って9-1として試合を決める。

 朝日は8回、先頭の坪内が三塁に内野安打、7回から室脇に代わってレフトに入っている大島渡が左中間に二塁打を放って無死二三塁、鬼頭政一は三振に倒れるが、早川平一が右中間に二塁打を放って11-1と突き放す。

 名古屋は9回、先頭の本田が四球を選んで出塁、吉田猪佐喜の二ゴロをセカンド鬼頭がエラーして無死一二塁、古川の三遊間安打で本田が還り2-11、飯塚誠の左前打で無死満塁、森井は一飛に倒れて一死満塁、芳賀に代わる代打酒沢政夫の遊ゴロで一走飯塚が二封される間に三走吉田が還って3-11、更に守備側の隙を突いて三塁に達していた二走古川も生還して4-11とする。この回の3失点ではピッチャー林の自責点はゼロ。本田はエラーによる進塁が含まれ、吉田はエラーによる出塁、古川は守備側の隙を突いたもので何れも自責点にはならない。


 林安夫は7安打3四球1三振の完投で16勝目をあげる。4失点ではあったが自責点はゼロだった。林は20日の巨人戦8回に自責点を記録したが9回は無失点。21日の南海戦は3イニングで無失点、25日の名古屋戦と27日の大洋戦は2試合連続完封でこの日も自責点はゼロ。現在31イニングス連続自責点ゼロを継続中となった。


 21日の南海戦以降、朝日で林以外の投手が登板したのは24日の大洋戦と26日の名古屋戦で完投した福士勇だけである。福士は24日の大洋戦は8回を完投して5失点、26日の名古屋戦は9回を完投して3失点で2試合とも敗戦投手となっているが、何れも自責点はゼロであった。すなわち、朝日投手陣は21日の南海戦7回からこの日まで47イニングス連続自責点ゼロを継続中である。