2011年9月7日水曜日

リベラ登場



 いよいよフィリピンからジャイアンツにリベラがやって来ます。リベラの本名は「Adelano Rivera」のようなので近年「アデラーノ・リベラ」と表記されることが多くなっているようです。リベラの名前が初めて日本人の目に触れたのは昭和14年春、ジャイアンツのフィリピン遠征でスタルヒンがリベラに打ち込まれて2敗を喫したニュースが伝えられた時でしょう。この時の活躍でジャイアンツにスカウトされた訳です。

 昭和14年1月22日付け読売新聞は「巨人軍比島へ船出」の見出しと共にジャイアンツのフィリピン遠征を伝えています。因みに中島治康は肩の故障でこの遠征には参加しておらず、2回目のフィリピン遠征で歴史的大ホームランをかっ飛ばしています。

 1月28日の遠征第一戦はジャイアンツが3対0で勝ちますが、カストムス軍の四番リベラはスタルヒンから3打数2安打を記録しました。2月3日の遠征第三戦、カストムス軍との二度目の対戦でもスタルヒンと対戦して2打数1安打1打点を記録し、2対0でジャイアンツが敗れています。

 遠征第六戦、、カストムス軍との三度目の対戦は川上哲治が先発して5回まで投げ、6回からスタルヒンがリリーフに出ました。リベラはこの試合で4打数3安打1打点を記録し、カストムス軍が3対2で勝って対戦成績を2勝1敗としました。

 ジャイアンツはフィリピンで9試合を行い7勝2敗、2敗はいずれもカストムス軍に喫したもので、リベラに打ち込まれたことが強く印象に残ったようです。この時のテーブルスコアには「リヴェラ」と表記されています。

 昭和14年5月3日付け読売新聞は「“比島ベーブ”巨人入り」の見出しと共に「・・・巨人軍は今回新たにマニラ随一の野球選手アチラノ・リヴェラを加えた・・・」と伝えています。「アチラノ」が「あちらの=フィリピンの」を洒落て付けたニックネームであったのか、アデラノを聞き違えていただけなのか、今となっては分かりません。


 私が「アチラノ・リベラ」の名前を知ったのは40年近く前ですが、確かに「あちらの=フィリピンの」をもじってつけたのかなぁ程度には考えていました。イチローを鈴木一朗と呼ぶ者もいない訳で、野球選手にはニックネームは付きものです。ジョージ・ハーマン・ルース、タイラス・レイモンド・カッブ、セオドア・サミュエル・ウイリアムスと言っても誰のことか分からないでしょうが、ベーブ・ルース、タイ・カッブ、テッド・ウィリアムスの本名です。デントン・トゥルー・ヤングはサイクロンのような剛球を投げることからいつしか「サイ・ヤング」と呼ばれるようになりました。

 1979年、南海に入団したフランク・オーテンジオはシーズン途中から「王天上」に改名させられています。アメリカでは「ブラッド・レスリー」として投げていたピッチャーは阪急では「アニマル」を名乗りました。

 当ブログでも活躍したバッキー・ハリスのケースでは、昭和11年に名古屋に入団した頃は日本の新聞でも本名の「アンドルー・ハリス」と表記されています。ハリスの場合は自らワシントン・セネタースの名選手にして名監督「バッキー・ハリス」に因んで「バッキー・ハリス」と名乗ることを希望したことから昭和12年以降は「バッキー・ハリス」と表記されています。

 人権擁護論者の方々にとっては「アチラノ・リベラ」という表記は許容できないものかもしれませんが、人気商売の野球選手の場合、よくある話です。「大の大人を赤ん坊呼ばわりするのはけしからん」と、ベーブ・ルースの表記を認めず、「ジョージ・ハーマン・ルース」表記を求めるという話は聞いたことがありません。


 と言うことで、当ブログでは「アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)」という表記にさせていただきますのでご了承ください。

2 件のコメント:

  1. マスコミの言葉狩りですな。

    私も最初は"あちらの人"からとった名前かなと思いました。リベラの所属していたカストムス軍はマニラ税関の野球チームで、フィリピン屈指のチームだったようですね。

    「40年・野球界二月号」に掲載された優勝座談会でのリベラと鈴木惣太郎のやり取りを書いておきます。

    鈴木(英語でリベラに)君は今夜約束があったのを・・・・待たせて気の毒だった・・・・簡単に話をまとめて行ってもらうことにしよう・・・・先ずマニラの野球と日本の野球を比較してどんな風に見るか?
    リベラ(英語で答え鈴木氏訳す・・・・)日本の野球はマニラのベースボールよりずっと進んでいる・・・・と言っても、単に打つこととか、守備とか、走塁とかを比較したのではマニラの野球は日本の野球に劣ってはいないのだが、これを纏めてチームとした時に日本の野球の方が進んでいるのです・・・・。
    鈴木 それでは『打撃はマニラ』の方が強いというのか?
    リベラ そうです・・・・マニラの選手は日本の選手よりもよく打ちます。
    鈴木 守備の比較は?
    リベラ マニラの方が遥かに素早いのです・・・・走るのもマニラの選手の方が速いです・・・・けれど打撃力とか、守備力とか、走塁の力を十分に生かすことにかけては、マニラの野球はずっと後れているのです。
    鈴木 では投手力はどうか?
    リベラ 現在ではマニラの野球は十数年以前に比較するとずっと下火になって熱がないのです。だから、十年も前にいた左利きのハロピリオなんか、タイガースの若林君よりチェーンジ・オブ・ペースが巧く、コントロールがよく、大したものでしたし・・・・もう一人の右利き投手ビルツフォなんか、スタルヒンよりずっと球が速く素晴らしいものでしたけれど、今はベースボールに熱がなくなったのでこうした良いピッチャーが出なくなりました。・・・・それでも今度巨人軍が行ったら、相当苦戦させるだけの投手は沢山居ります。
    鈴木 日本ではマニラの審判は拙いという評判だが、実際拙いのか、或は標準が違うのか?
    リベラ 拙いことはないし・・・・勿論公平です・・・・けれどもマニラではボールとストライクの採り方を規則書の通り解釈しているのでストライクの範囲が日本より狭いから、日本の選手が遠征して行くと勝手が悪いのでしょう・・・・。
    鈴木 ・・・・・・・・
    リベラ 実際マニラのベースボールは、そう馬鹿にしたものではありません・・・・素質に於いては日本に負けないのですが、ただベースボールを知っている人が少ないことと、よい指導者がないことです・・・・ミスター・スズキあなたなんかがマニラに来て永く留っていて、マニラのベースボールを実際指導してくれたら、必ずと強くなると思いますよ・・・・。
    鈴木 僕は未だマニラに行ったことはないが寒むがりやの僕には適当なところらしいネ・・・・けれど僕は矢張り日本がいいよ・・・・ところでリベラ・・・・君はピンチに強いが何か秘伝でもあるかネ。
    リベラ 何もない・・・・ただ打てるという自信だけは何時も持ってます・・・・。
    鈴木 君は大切な時によく打って・・・・例えば対金鯱軍の試合に、満塁にホームランを飛ばして勝っているが、あれなんか強い神経の持主でないと出来ない仕事だネ。
    リベラ いやいや単に『幸運だった』のですよ・・・・。
    鈴木 有り難うリベラ・・・・君は約束の時刻に大変後れているから先へ失礼させてもらいなさい(リベラ退席)

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  2. 貴重なコメントありがとうございます。

    システム上の問題なのかコメントが「スパム欄」に行ってしまい公開するまで時間がかかってしまい申し訳ございませんでした。

    野球史を尊重するならば「アチラノ・リベラ」表記にするべきではないかと考えておりますが、時代の流れにも配慮して「アデラーノ・リベラ」との併記とさせていただいております。

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