2010年8月5日木曜日

12年春 金鯱vsイーグルス 7回戦

7月13日 (火) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 0 0 0 1 0 0 3 金鯱    25勝28敗1分 0.472 古谷倉之助
0 0 0 1 1 0 0 0 0 2 イーグルス  9勝43敗     0.173 畑福俊英


勝利投手 古谷倉之助 15勝12敗
敗戦投手 畑福俊英    5勝21敗


本塁打 (金)黒澤 1号


ちょっとそのボール見せてください


 ジャイアンツvsタイガースの激しい優勝争いに決着がついた昭和12年春季リーグ戦もいよいよ最終節に突入。開幕前の予定では春季リーグ戦終了予定日は7月11日であったが雨のため順延された試合を今節に組み入れた。本日の洲崎は金鯱vsイーグルスによる初のダブルヘッダー、第一試合は古谷倉之助、畑福俊英両エースの先発で14時10分、プレートアンパイヤ池田豊が高々とプレイボールをコール。

 金鯱は初回、先頭の濃人渉が四球で出塁、しかし島秀之助の遊ゴロは6-4-3と渡りゲッツー。ところが続く瀬井清の投ゴロを畑福がエラー、黒澤俊夫の当りは左中間への飛球、白球を追いかけるレフト寺内一隆とセンター中根之が衝突転倒、この間に黒澤はダイヤモンドを一周してインサイド・ザ・パーク・ホームランとなり2点を先制。しかも寺内と中根は負傷退場となりレフトには金井清が、センターにはライトの杉田屋守が回りライトに田村稔を入れる。

 思わぬ先取点をプレゼントされた古谷倉之助は3回までワンヒットピッチング。イーグルスは4回、この回先頭のバッキー・ハリスが四球で出塁、サム高橋吉雄の三ゴロはサード瀬井清が併殺を狙って二塁に送球するがこれをセカンド五味芳夫が落球して無死一二塁、杉田屋が送って一死二三塁と同点のチャンスを迎える。しかしここは古谷が踏ん張り太田健一は三振、バッターは野村実、ここで起こったプレイはスコアブックには「1’-5によりハリスがホームイン」と記載されている。普通に読めば「古谷の三塁牽制悪送球によりハリスがホームイン」となる。翌日の読売新聞はこのシーンを「古谷は何と思ったか塁手のいない三塁に牽制球を投げてハリスに与えなくともよい1点を献じた。」と伝えている。これこそかの有名な「『ちょっとそのボール見せてください』事件」ではなかろうか。ハリスはキャッチャーの時は「モーモタロサン、モモタロサン」とたどたどしい日本語で歌って打者の打ち気をそいだり、走者に出るとプレイの合間にピッチャーに対して「ちょっとそのボール見せてください。」と声をかけてピーッチャーがハリスにボールを投げると脱兎のごとく次のベースに向かって走り去ったと伝えられている。何で引っ掛かるのかと言われそうですがハリスがニコニコしながらたどたどしい日本語で声をかけると結構引っ掛かったと伝えられている。ということでイーグルスが1-2と追い上げる。

 イーグルスは5回、先頭の畑福俊英が四球で出塁、田村稔の送りバントが内野安打となり無死一二塁、金井清の投ゴロは古谷からサード瀬井に送球されるが瀬井の足が離れて(記録はサードエラー)無死満塁、ハリスは二飛に倒れるが高橋がスクイズを決めて2-2の同点に追い付く。イーグルスは6回にも太田、野村の連打でチャンスを作るが漆原進の送りバントをキャッチャー相原輝夫がダッシュよく飛び出して三封、後続も倒れて逆転はならず。

 金鯱は7回、二死後小林茂太が中前打で出塁、畑福はここで力尽きたか安永正四郎、相原と連続四球で二死満塁、ここでとっておきの代打小林利蔵が登場、既に畑福には余力は残されておらず小林利は押出し四球を得て金鯱が3-2と1点をリードし、このリードを古谷が守りきって逃げ切る。

 古谷倉之助は7安打5四球3三振の完投で15勝目をあげてハーラー単独三位を確定させる(ジャイアンツの残り試合は1試合でありスタルヒンが勝利投手となっても14勝止まり)。畑福俊英も4安打6四球5三振の力投を見せるが21敗目を喫す。



*写真はバッキー・ハリスが第二打席でトリックプレイによりホームインした場面


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